あいつ
妖怪の山に向かう道中、妹紅の探してる人物の話を颯は聞くことにした。
「なぁ…まだ着かないのか?」
「まだだ」
こんなテンプレのやり取りももはや何回行ったか分からない。颯と妹紅はかれこれ3日間は歩き続けていた。もちろん休憩や睡眠をきちんととりながらだ。
道のりは長いな…と颯は心の中でため息をはく。
「けどそろそろ今日は休むか…疲れたし」
「賛成!」
まぁいつものことながら野宿だ。がいつもと違うことが1つあった…それは
「近くに川があるな」
そう川があるのだ。今まで水は道中の井戸で補給していた。
「そうなると色々と便利だな…なぁ」
「ん?どうした?」
「いやっ…その…/////」
妹紅が何かを言おうとしているがなかなか言わない…
「なんだよ…一応ここまで旅続けてる仲だろ?聞けるお願いなら聞いてやるよ」
「いや…最近風呂に入ってないから…」
「そんなことかよ…川で水浴びしたいってことか?」
「ああ…だから誰も来ないか見張っといてくれないか?」
「こんなところには誰も来ないと思うけど…分かった」
「お前もこっち見んなよ!!」
「はいはい…」
ったく…男勝りだと思ってたのに結構かわいいところあるんだな…なんてことを口にしようなら炎を纏った右ストレートでも飛んで来そうだから…いや来るだろうから口にはださずにおこう…そんな下らない事を考えながら近場の大きな岩にもたれかかる。ちょうどこ
の岩の後ろに妹紅がいるだろう。
「この位置なら文句ないだろ?」
「あぁ…すまないな」
スルスルと服を脱ぐ音が後ろから聞こえる。そしてその数秒後にはポチャ…という水の音が…
「ふ〜…♪」
川の水を火でお湯に変えたのだろう…気持ちよさそうな声が聞こえてくる。
「これって…生殺しだろ…」
後ろを見たくても見てはいけない…そ、そうだ久しぶりに新しい技の研究でも…
「ん〜♪」
は…鼻歌!?いや…気にするな気にするな…
結局技の研究なんて出来なかったのは言うまでもない…
「なんか…お前やつれてないか?」
「ハハッ…気のせい気のせい…」
お前のせいだよ!!と内心ではツッコミを入れておく。
「それよりも…妹紅が探してる人って一体誰なんだ?」
「ん?まだ説明してなかったか?」
「うん。」
なんだかんだで忙しかったために重要な事を聞き忘れていた。
「簡単に言えば…親の敵かな。」
「親を殺されたのか?」
少しだけ颯の声が震える。もしかしたら聞かない方が良かったかも…という後悔のせいだ。
「いや…社会的に殺されたと言うべきだな。」
「社会的…?」
「私のお父さんは結構有力な貴族だったんだが…ある女に恋をした。名前は言わないけどな。」
「…それで?」
「その女には5人の求婚者がいてな…その女はそいつらに1つずつ難題を叩きつけた。私と結婚したいならその難題をクリアしろ…と言ってからな。」
「…」
なんかどっかで同じような話を聞いたような…
「その結果…クリアした者はおらず私のお父さんも偽物を渡したもののバレて失敗…」
妹紅がグッと拳を強く握る。
「そっからは…恥を背負って生きていった…私はあいつを許せない!!」
「…」
やっぱり聞いたことある。もう確信していた。
「こんなとこだ…これでいいか?」
「あ、あぁ。」
「そうか…なら私は眠いし寝るぞ…おやすみ…」
というとすぐに横からスー…という寝息が聞こえてくる。
「多分…いや…絶対輝夜だな…」
この2人を合わせたら大変な事になりそうだな…ん?でも待てよ…輝夜は俺とは反対の道に行ったはず…それに輝夜も相当な実力者だし…永琳だってついている。まさに鬼に金棒と言ってもいいだろう。そんな輝夜が捕まるのか?いや、限りなく可能性は0に近いだろう。
…なんか…嫌な予感がするな
妹紅と輝夜…驚くべき共通点に気づいた颯。だからこそ気づけた予感は的中するのであった…
次回!!支配された村