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Fantasy = Shit  作者: 青カビな俺
現代編
8/8

Thinner Fire


「(第五突撃部隊の進みが悪い。第二竜騎兵部隊を援軍に回して、残党を駆逐しろ)」


「(しかし、市街地での建築物内徒党は…)」


「(そこは第五突の連中に任せる。どうせ、消耗品の部隊だ。竜騎兵隊の戦果貢献に一役買ってくれれば、それで充分だ)」


「(…御意)」


「(進撃開始してもう一刻経つのに、まだ区画の半数も制圧出来ないのか?閣下の意向に添えなくては、我々も奴等同様に獣の餌となるぞ)」


「(重々承知しております故、今暫くお待ちを)」








「数区画の住民及び警官隊が壊滅状態の模様、住民が自衛して立て籠もってる地点もあるようです」


「州兵と現地海軍、海兵隊の展開はどうした?」


「生物型の未確認飛行部隊駆逐、制空権を奪還した後に空軍と共に展開予定。現地海軍は民間人受け入れと敵飛行部隊の迎撃で手一杯らしいです。ミサイル攻撃するには敵主力並び大規模部隊が見えない為に攻撃効果が薄いと判断し、実施しておりません。海兵隊司令部(HQMC)並び現在海兵隊総軍(MarForCom)は基地周辺にて防御・迎撃体勢維持したまま調整中。90分以内にアメリカ北方陸軍と共に展開予定です」


「攻撃機からの空対空ミサイルで、敵飛行部隊を迎撃出来ないものだろうか…」


「原因は不明ですが、シーカー(目標捜索装置)で捕捉出来る出来ないとの問題があるとのことです。同様の理由で海上打撃群もCIWSですら捕捉困難とのこと」


「…分かった、展開出来次第全力で潰せと言っておけ。容赦はいらない、畑の赤く生臭い肥やしにしてやれ…とな」


「了解しました」






 二人は食料品売場を離れて、建物から出ようとする。

 エセルは買ってもらっているスマホを確認すると、画面のアンテナマークが消えていることに気がついた。

 それを直ぐに母親に言うと、難しい顔をする。

 

 

「偶々通信会社のアンテナを破壊したのか、意図的に破壊したのか別にして、無駄に電池を食う時計となった訳だな。残念だ」


「壊れた訳じゃないもん!」


「確かに。けどさ、今はカップヌードルの蓋閉じの置物か、イエローなアジア圏が使う文鎮よりも使いみちがない何かだけどね」


「スマホが文鎮って…」


「あ、訂正するわ」



 そう言ってイコは娘のスマホを手にして、アプリでラジオを起動させた。

 エセルのイヤホンを挿して、アンテナ代わりとして伸ばして電波を受信する。

 

 

「ラジオならまだ生きてるかもね」


「電波とか同じじゃないんだ」


「確か違った気がするけどね。一部の米緊急事態管理庁連中とかはさ、災害時のスマホラジオを有効活用しろとか言ってるしさ」



 そうい言ってイヤホンでローカルの緊急放送を受信する。

 

 

「なるほど、軍隊もまだ出動できてない状況で海軍基地やら軍施設にて民間人受け入れ最中…ってところか」


「幹線道路は乗り捨てられた車で完全に交通網が麻痺ってことは、ママ…」


「エセルは自転車乗れたっけ?」


「た、多分」



 イコは諦めた様にため息をついて、少し考えた。

 

 

「じゃあ、楽しくバイクで向かうか」


「ママ、免許は?」


「ペーパーだよ」



 そんなだろうと思った、と顔で表現して少しだけ笑うエセル。

 その顔を見て、少しだけ口角を上げるイコ。

 


「けど、空のよく分からない美味しくなさそうな鳥をどうにかしたいよね」


「あの、MENYOU人攫い鳥のこと?」


「そう言うならさ、YOUKAI人攫いチキンと言った方がジャップ的には合ってるかな」


「私、あんな生き物、ヴァンヘルシングだったかの映画で見たことあるよ。きっとアレは吸血鬼の失敗作なんだよ」


「失敗作にしては、上半身曝け出しのおっぱいバイバインでさ、ちょっと羨ましい身体してたな」


「…ママ、何言ってるの」


「願望を口にしただけだ、女ならバイバインは永遠の夢だろ」


「だから前に豊胸手術のパンフレット見てたんだ…」


「アタシの胸がこうだから、エセルも将来バストサイズアップは期待するなよ」


「け、けどパパの家系は皆胸が大きかったよ!それに、娘は父親の遺伝をナントカカントカって言うしさ!!」


「…なにムキになってんだよ」



 イコは笑いながら、エセルの頭を撫でた。

 

 

「さて、とりあえずは海軍基地かそこらの施設に行って保護されようか。安心安全な場所でペプシが飲みたい」


「そうだね」



 イコは小さく疲れたようなため息を付きながら、銃器のマガジンを抜いて残弾を確認する。

 手慣れた手つきを見ていると一種の安心感があり、普段は嫌悪感を催すエセルもこの時だけは頼もしく思えた。

 

 

「さて、また空からのバイバインな鳥とよく分からない連中との追いかけっこするか、マラソンランナーとか囮になってくれないかなぁ…」



 建物を出て、上空を警戒しつつイコを先頭に進み始める。

 辺りに人影は見えず、煙と車の防犯ブザーだけが喧しいくらい鳴り響いていただけだった。

 それはそれで安心だが、ブザーで何かが寄ってこないかが心配であった。

 

 空を一頭の翼竜のような生物が飛んでくる。

 その風に髪を靡かせながら親子は車の影に隠れる。

 

 


「おーすげぇ、ロード・オブ・ザ・リングで見たことあるドラゴンだ」


「…そんなのも存在するのんだ、いやだぁ」


「多分、胃の中とかお腹の中は多分温かいじゃぁねぇのかな?」


「生きてないよね、その時は」


「ママの腹にいた時分を思い出すかもよ?死に際に」




 笑いながらイコは腕時計を確認して、翼竜が過ぎ去るのを待った。その間、エセルは母親の腕を掴んでいた。

 

 

 

「ドラゴンにゴブリンかオークみたいな生き物やバイバインな半裸飛行生物。楽しくなってきやがった訳だ」


「全然全力でもの凄い勢いで激しく全くというほど楽しくないよね?楽しくはないよね?!」


「楽しいってことにしておくんだよ、今は。イグアナみたいな90年代のゴジラ見てない?あの感動に似てるね」


「ママ、その時代、私はまだ存在すたしていない」


「これだから2000年生まれは…」




 イコは殆どフィルターだけになった煙草を投げ捨てて、進む方向を見た。

 その進行予定であった道を見ると、先程見たような記憶がある人外生物の群れをまた見てしまった。

 とりあえず、屈んで姿を隠し、迂回路を探す。

 

 


「ママ、また…神様ぁ」


「神様もどうやら意地悪らしいから、中指立ててやりな」




 近くにパトカーが止まっていて警官の、頭に矢が刺さった死体を発見。

 ESUであろう警官の死体から、AR15と予備弾倉を拝借する。

 予備弾倉をポケットに3本捩じ込み、新しいマガジンと装填されてるマガジンを交換する。

 チャージングハンドルを少し引いて薬室を確認した。

 

 


「アンタの銃、借りるよ。警官の死体漁りとか、最高にロックな気分」




 イコはBrowning Maralをエセルに担がせて近くの建物へと入り込む。

 群れをやり過ごそうという魂胆だった。

 しかし、エセルに担がせていたBrowning Maralの先端が群れに見えてしまったのか、人外生物達は騒ぎ出して追いかけてきた。

 

 

 

「ヒィ!!ママぁ!!」


「走る走る走る!!」




 塗装屋らしい建物に逃げ込み、玄関先の扉を閉めて鍵を掛ける。

 そして椅子や机を置いて直ぐには開かない様にした。

 

 その数十秒後に締めた玄関扉が何かで叩かれ、ガラスは割られた。




「エセル!上に行って、シンナー系の缶とゴーグル、塗料用マスク取って来い!!」




 エセルを上の階へと登らせて、使えそうな物を探させる。

 探してもらうのはシンナー系有機溶剤やそれを防ぐマスクやゴーグルだ。

 その間、イコは事務所らしい所から、ラッカー系シンナーを拝借した。

 

 

 

「ママ!有ったよ!マスクとゴーグル!あと缶2つ!!」


「サンキュ!ママの後ろに置いて、上に行ってな!」

 

 

 

散乱した部屋の幾つもある棚から塗料シンナーの缶を出して、玄関扉の内側へ撒き散らす。

一斗缶の中身を撒き散らし、特有の匂いが充満してくるのを鼻腔で感じながら、玄関から離れた。




「エセル!マスクとゴーグル付けた?!」




 イコは叫びながら、自身もマスクとゴーグルを付けた。

 そして事務用のデスクを倒して即席盾に背を預ける。

 娘から付けたとの声を聞いて、先程拝借したAR15を玄関へと向ける。

 

 安全装置を外し、aimpoint社製の光学照準器を覗き込み、躊躇いなく引き金を引いた。

 セレクターをセミオートにして連射する。

 

 扉の向こう側の連中へとM855(グリーンチップ)の弾丸は飛んでいき、簡単に木製の玄関扉を貫通。

 その向こう側の半裸の人外生物達の身体に食い込み、皮膚を突き破って人体内でタンブリングを起こした。

 変則的に向きを変えて人体の中を破壊しながら進む弾丸。

 

 そして、シンナー系の液体が弾丸の熱で気化した燃焼性ガスに引火

 一瞬にして玄関の内側は火の海と化した。

 

 イコはそんな燃え盛る玄関に1マガジン撃ちこんだ。

 ボルトが後退し弾切れを教えてくれるまで撃って、再装填。

 

 


「Yeah!!Get Some!!グリーンチップが規制されなくて良かったって思う瞬間!」




 出入り口はシンナー特有の匂いで包まれつつも、弾丸の熱で引火し燃え盛る。

 シンナーの引火点は-4℃。そんな液体を所狭しと撒いて空気中の酸素と混合されたのだ。

 

 外から人の声とは思えない悲鳴が聞こえてきたが、それはイコにとって効果測定の材料でしかない。

 有害ガスが散漫した屋内からエセルの手を引いて、後退。

 従業員用の裏口から外へと出る。

 

 

 

「…ふぅ、何とかなったかな」


「…もぅやだよぉ」


「ほらほら、泣かない泣かない」




 親子はマスクとゴーグルを外した。

 その際、イコはエセルの前で膝を着いて、力強く抱擁してやる。

 

 

 

「ただえさえ遺伝子で小汚い顔なのに、泣き顔にもなったら更に汚い顔になるだろ?」


「泣いてる時に言うセリフじゃぁないよソレぇ」


「よしよし、じゃあもっと憎気に泣いていろよ?」


「…もぅ泣かない」


「アタシも泣きたいよ、ほらアレ」




 イコはエセルの後ろの方向を指差してみる。

 その指先には、親子の想像を超えた者が居た。

 

 ミノタウロスの様に頭は牛であり、人間が刺さったままのドデカイ角。

 引き締まった身体の下は、白い馬のような動物の身体が繋がっており、綺麗な純白の白い毛並み。

 しかし、その毛並みは人間の朱の液体で変色もしていた。その朱がより一層不気味さを際立てる。

 筋肉質な2本の腕には、棍棒と四角い盾。その盾は、蹄の先から頭までもカバーできる長方形の盾である。

 

 鼻息荒く、親子を睨みつける。

 

 

 

「ママ、私学校で習ったよ、ケンタウロスは比較的に人格者で不死で野蛮じゃないって」


「そうか、あの血塗れのミノタウロスにケンタウロスを足して、融合実験失敗したような生き物がその伝説級の生き物で尚且アタシらの考えている人格者であるかどうかは分からないよ?一回あの棍棒でミンチにされてみる?」


「原型は留める?」


「車のエンジンが一撃でぺしゃんこスクラップになるそれ以上のパワーで人間が原型留められているのは、スーパーマンかワンダーウーマン辺だろ常識的に考えなくても」


「ど、ど、どうしよう」


「逃げるが勝ちだろ!!




 イコはエセルの手を引いて逃げる。

 ただえさえ先程の人外生物の腕力の恐ろしさを身に沁みたのに、その上位みたいな生き物と対峙なんかしていられない。

 

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