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Fantasy = Shit  作者: 青カビな俺
現代編
7/8

Humorous peace




 Browning Maralの装填したマガジンを叩き入れて、ボルトを引いて手を離す。離すとボルトは自動的に戻り、薬室へ弾丸を送る。それから、もう一度マガジンを取り外して弾丸を1発込める。

 聞き慣れた銃器特有の金属音を聞いて、イコは小さくうなずいた。

 

 銃器と弾薬を拝借していると、遠くから悲鳴と雄叫びが聞こえてくる。そして、その音源は親子に確実に近づいてきていた。

 そのことにイコは眉間にシワを寄せて一瞬だけ動かす手を止めたが直ぐにまた動かす。

 

 

「ママ、今の聞こえた?」


「聞こえたけど、ママにもエセルにも関係ない、だろ?手を動かしな、まだ野郎のマスカキの方が動いてる」


「……う、うん」


 

 母親の平然とした態度に、娘は少しだけなんとも言えない違和感を覚えたが今は言われた通りに作業を進める。

 ガラスのショーケースを叩き割って、中から光学照準器を取り出す。

 Maralに20mmレールマウントを付けて、素早くサイティング出来るようにドクタータイプの小型ドットサイトを取り付ける。

 

 イコは素早くポケットにライフル弾をバラで入れて、Maralにスリングを取り付けてから担いだ。

 

 

 先程の音源らしい生き物というか人間とこの世の者ではない者が親子の視界に入る。

 1人は高校生くらいの男女の二人組、そしてそれを追う人外生物の団体。

 

 先程イコが殺害したゴブリンような容姿をした人外生物の団体も武器を幾つか所持しており、手斧を追い掛ける男女へと投げた。

 手斧は男性の足に当たり、転ける男性。女性は倒れた男性の腕を引くが男性はそれを突き飛ばすように離し女性を先に行くように叫んだ。

 

 

「ママ、助けないと…」


「……エセルは作業を進めてて」



 イコは壁に展示してあったMaralと同じ口径を使うM700を手にしてから素早く弾丸を込める。構え、アイアンサイトを覗いて照準を定める。

 まだゼロインをしていないので1発目は思った場所には飛ばないだろうが、Maralの光学機器よりはマシだろうと踏んだ。

 安全装置を解除して、人外生物へと構えてから息を吐き切り引き金を引いた。

 

 弾丸は燃焼ガスと共に銃口から吐出され、空気を切りながら進み人外生物の肩を貫いた。

 人間でいう三角筋を引き裂いた。筋肉組織を無理矢理力ずくで破いて、血管も傷つけて出血を強いる。

 それは決定打にはならず、第二射が脚部に命中。行動を著しく強制的に制限させ、大腿筋からも流血が見られた。

 

 

「調整済みコレ?調整済みって張り紙あったのに!」



 ボルトを引いて、排莢、次発装填し再度アイアンサイトを覗いて射撃を続ける。

 数匹の人外生物の身体か足に命中させ、無力化を図るが時間が足りなかった。

 

 女性は怪我した男性の腕を必死に引っ張る。

 もう少しで隠れられる場所にまでいけるところまできた。建造物の構真柱まであと1mまできたが、生き残りの人外生物の手斧が女性を襲う。

 投げられた手斧は回転しながら、女性の頭に命中し悲鳴を上げることなく絶命。

 

 引っ張られていた男性は、その一瞬に出来事に思考を停止させられた。

 

 

「Fuck!」



 イコは悪態をついてから、生き残りの奴にとどめを射す。

 上半身に命中し、脅威は居なくなったが、人間がまた1人この世を去った。



「今行くから、自分の手で傷口押さえてろ!!」



 バックパックを担いぎ急いで生きている男の所まで走り、自前のシャツやタオルで圧迫止血を試みる。

 

 

「あぁあああ、なんで、なんで彼女が!彼女が!!」


「………。」



 自分を必死に引っ張った女性の死体を見て嘆く男にイコは聞く耳を持たない。持っていたら行動に阻害を与えるからだ。

 スポーツ用の長細いタオルを、傷口よりも上の部分で血管を締めるように止血のため縛る。

 縛ると男性は激痛に叫ぶ。

 

 傷が深いのか出血が止まらない。

 

 

「おい!アンタ、自分でちょっと押さえてろ!何か別の物持ってくるから!!」



 自分の所有物では対応出来きれないと判断し、止血を彼に任せようとした。

 近くに洋服屋か日常生活用品販売コーナーがあったはずと考えて、立とうとした。

 だが、ヒップホルスターから愛銃のタウルスが抜かれた気がして、彼女は男性の方を向いた。

 男性は譫言を呟きながら、タウルスの銃口を口に咥える。

 銃口を咥えて呟くのでカチカチと音が鳴り、その行動にイコは呆れたような顔する。

 

 

「彼女が、マリーが居ない世界なんか嫌だ」


「ヘイ、イケメン。落ち着け、落ち着いてその銃を床に置け、分かるか?」


「マリーが居ない、居ないなら追いかけなきゃ。彼女の居る世界に」


「彼女は死んだ、死体を見ろ。輪廻転生なんてことは宗教上イスラミックだけだろ?落ち着け、今は―」


「待っててマリー。今行くよ」



 男性は息を吐き切ってから咥える銃の引き金を引いた。

 

 弾丸は男性の海馬や脳幹、頭蓋骨の一部等をズタズタに引き裂き、反対側へ放出させた。

 ホラー映画の血飛沫のように頭の中身が飛び散り、周りに歪な赤い斑点模様を作り出してしまう。

 糸が切れたように、男性は動かなくなり倒れる。赤く綺麗な血溜まりが広がっていき、また1人人間がこの世を去った。

 

 男性の手に握られていたタウルスを取って、またヒップホルスターへと戻す。

 目を見開いて絶命した死体を見て、大きくため息をついた。

 

 

「死ぬのも自由の国特有の【自由】だけどさ……助けようとしたガールフレンドとアタシの身にもなれよ」



 血溜まりの面積が増えていく男性の死体を一瞥してから、大きくため息をついた。髪を掻き上げながら、愛娘の元へと戻っていく。

 エセルは、一連の光景を見ていたのか呆然としていた。近くに寄って、軽く頬を叩いて正気に戻す。

 何かを言おうと、死体を指差す彼女にイコは手を振った。

 

 

「見るな気にすんな、稀によくある[事故]だ」


「け、けど、あ、あの人」


「事故…だ。あの手の事故は、防ぐにも時間の問題で最終的には遅かれ早かれあぁなるんだよ。イラクでもそうだった」



 そう言って、母親は少し暗い顔をして荷物をまとめる。

 その言葉に娘は、無理矢理自分を納得させて弾薬をバックパックに押し込み、詰め込んだ。

 

 

 

 弾薬を詰めれるだけ詰め込んだバックパックや銃器を担いで移動を開始する親子。

 

 

「…ママ、次は何処に行くの?」


「何処行きたい?ママはマリナーズかレッドソックスの試合を観に行きたい。ディズニーランドは無しだからな」


「今行っても楽しめる自信ないよ、ソレ」


「とりあえず、移動してノーフォーク海軍造船まで行こう。海軍に保護してもらえれば、後はどうにでもなれ」


「海軍で、大丈夫なの?きっと海兵隊さんや州兵さんが助けに来るまでここで待ってるとかさ」



 もう怖い想いをしたくないという気持ちは伝わるが、悠長なことをしていたら生きて旦那に会える自信はない。

 それに、不明勢力の掃討にどれだけの時間を要するか分からないので、イコとしては軍に保護された方が気持ち的に楽なのである。

 途中で肩掛けバッグを拝借し、その中に適当な飲料水やお菓子等を頂く。

 同じことを考える輩が沢山いたのか、食品売場の陳列棚は散乱していて床にも商品が落ちていた。未だに商品を盗んでいる人間が少なからず居たて、襲われてはいないようだった。

 

 

「よーし、今ならどれだけパクっても無料タダだからな。好きなだけハーシーズ入れてもいいよ」



 母親は笑いながら、煙草の箱を3つ程手にしてポケットにねじ込んだ。

 娘は何だか納得しないような表情を浮かべるが、渋々ハーシーズを1つだけバックに入れた。

 

 

「Japaneseは割れ窓理論のような現象が起きれば何でもするけど、サムおじさんの忠実な下僕以外のアメリカ人はそれでいいんだよエセル。胸は張れないけど、強く生きる為に気は張ろうよ」



 そう言いながら、煙草を口に咥えてレジカウンター近くに置いてある安いライターで火を灯す。

 大きく肺で煙を吸って、煙を吐いた。その煙は気流で直ぐに薄くなり天井に行き着く頃には消えてしまう。

 その光景を、口をへの字で見る娘に母親は笑いながら頭を撫でる。

 

 

「…んだよ、こういった時くらいにしか出来ない事をこういう時の今、今してるだけだよエセル」


「けど、万引きみたいなことするとお巡りさんに捕まるよ……」



 その言葉にケラケラ笑い、ほら見ろと言わんばかりに指を指す。

 その指先には、太っている警官がおりその警官もバーコードタグのついたリュックサックに食料品を詰め込んでいた。

 

 

「これが、アメリカ人の秩序って奴、見てて滑稽だろ?恋人の為に進んで命を絶つし、非常時で生命に関わりそうな時には犯罪も厭わない。それも自由の国ならでは…でもないけど、そんなモンさ」




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