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Fantasy = Shit  作者: 青カビな俺
現代編
6/8

Gun Shop 


「この近くのショッピングモールで何人か立て籠もって、救援を待っている。アンタも早く行け」




 警官はイコを立たせ、自分の散弾銃の弾薬を渡した。

 


「ん?ナニコレ」


「アンタが漁ったパトカーのモスバーグはオレのなんだよ、好き勝手に使ってくれるなよ?」


「愛銃ね、分かったよ」


「オレは他の生存者に言って回ってるから、気をつけてな!」



 そう言って数発だけしかないがショットシェルを渡した警官は走り去っていく。

 

 

「ヘイ!アンタ、名前は?!」


「オレの名前は――ー」



 警官に散弾銃を返す為に名前を聞こうと、去ろうする間際に名前を聞こうとした。

 しかし、名前は聞けずその代わり、先程飛んでいた飛行物体に警官は攫われてしまう。

 名前の代わりに悲鳴と銃声、そしてその音すらも聞こえなくってしまった。



「……。」


 

 イコは迎撃、対応できず絶句したままだ。

 呆気無く警官が、この世から退場してしまった。

 一瞬の出来事で、どうすることも出来なかった

 

 荒くなった息を沈めたのにまた荒くなる。

 

 

「え、エセル……」



 思い出したように呟いて、彼女は走りだした。

 手早く貰ったショットシェルをモスバーグに差し入れて、指示を出した近くの大型ショッピングモールへと走る。

 

 

 

 大型ショッピングモールは二階建てで、駐車場は乱雑していた。

 アスファルトにはカートや食料品が落ちていたり、空薬莢が落ちていたりしていた。

 正面ゲートにはバリケードが組まれていたが、突破されたのか死体が見える。

 その周辺には先程イコが殺した怪物の骸が惨たらしく散乱していた。

 

 

「嘘だろオイ」



 死体とバリケードを越えて、ショッピングモールへと乗り込む。

 エセルに指示を出したサービスカウンターまで走り、辺りを早足でクリアリングしていく。 

 ショッピングモールの床には、所々に死体や千切れた四肢等が落ちているが、娘の死体はまだ見ていない。

 正面ゲートを突破されたらしく、人間の血痕と争った後が奥へと続いている。

 

 サービスカウンターに到着するも、エセルの姿はなく人外の骸しかない。

 人間の死体には一応脈を触り、人外の死体は蹴飛ばして生死を確認する。

 近くの店に入って探すも姿は見られず、彼女の不安は更に大きくなっていった。

 

 

(…嘘だろ、エセル何処だよ)



 大きくため息をついて、サービスカウンターの受付テーブルに座り込む。

 確かに自分は娘にショッピングモールのサービスカウンターまで行けと言った。それは覚えている。

 それから、もしかして先程の警官みたいに空の鳥獣連中に攫われてしまったのか。そう考えてしまう。

 そんな不吉な事を考えてしまうと、全身の毛穴という毛穴から悪寒と共に嫌な汗が吹き出してくるのが分かった。

 

 

「ヘイ!エセル!何処だよ!?ママだよ!」



 駄目元、辺りに響くように叫んでみる。

 

 

「ママ?!」


「っ?!エセル?!何処だよ!」



 エセルはイコの後ろから姿を現した。

 愛娘の姿を見た瞬間、母親は抱きしめられずにはいられなかった。

 強く強く抱きしめて、その存在を確認する。その行為に娘も応じた。

 

 

「…ったく、鳥の餌か生牡蠣啜りにあったかと思ったじゃん」


「ずっと、ここで隠れてたら物音が色々したけど、何にも起きなかったよ!」



 薄っすらと安堵の涙が出てきたので、それを拭いとりあえず落ち着かせる。

 

 エセルはやや興奮気味に母親が居なかった間のことを話す。

 ショッピングモールに入ると立て籠もっていた大人達がバリケードを築き上げ始めたが、その途中に怪物の集団がバリケードを強行突破。乱闘騒ぎになり、その中で言われたサービスカウンターの内側のテーブルの下に小さくなっていた。

 隠れている最中に様々な銃声や悲鳴、物音がしてとても怖く動けなかった。

 静けさが訪れたと思ったら、ママの声がした。

 これがエセルの今まで起こったことだ。

 

 これを整理すると、まだ中にはよく分からん連中に集団がいるかもしれない。

 そう考えたイコはサービスカウンターの中に置いてある大型の案内地図を見た。

 

 

「よし、じゃあちょっとここから逃げる前に、武器を調達しようかエセル」


「それよりもさぁ……」


「逃げるのも先決だけども、ママの持ってる武器だって心もとないんだよ。啜られたくないだろ?ちょっとの辛抱だよ」



 そう言ったイコは、娘を連れて地図を確認して進みだし、それに着いてく娘。

 イコは一度スポーツ用品コーナーに寄ってバンドがあるタイプと腰のベルトに引っ掛けるタイプのダイバーナイフを拝借する。

 ナイフ2本を拝借し、小走りで壁側を移動していく。

 

 本販売コーナーを通りすぎようとすると、先ほどのオークより小柄なゴブリンらしき生物の集団に見つかってしまった。

 

 

「エセル、此方!!」



 急いで本屋の中に駆け込む。その姿を追うようにゴブリンが親子を奇声を上げて追いかけて来た。

 業務員用の裏部屋へと逃げようとしても、鍵が掛かっていて開かない。ガタガタと押そうが、足で蹴破ろうとしても開かない。

 仕方ないので、モスバーグを構え、1発だけで奇跡的にドアノブをぶち破る。スリングを使ってモスバーグを担いだ。

 

 

 しかし、イコは部屋に入らずに直様移動した。

 それにエセルは困惑した。

 

 

「ママ!ママ!入らな-」


「……シィー。エセル、黙っとけ」



 娘の口に手を当てて、母親は黙らせてからナイフを抜いた。

 先程の銃声でゴブリンのような連中は音源の方向へと走る。

 

 銃声を囮にして、本棚を影に進む二人。

 足音からして、3人から4人と推測する。変な訓練も積んでいないと仮定して、離れて逃げるように移動し少しずつ少しずつ距離を取る。

 

 しかし、ゴブリンの一匹と正面から接触してしまう。

 簡単な甲冑を身に纏い、剣を持っていた。

 

 ゴブリンの剣を左手で弾いて、喉元へダイバーナイフを深々突き刺した。

 声を発する暇を与えず喉を力任せに抉っては引き抜き、胸に血塗れたナイフを突き刺した。

 刺された彼は血の泡を口から出して倒れる。

 

 仲間が殺された事に気がつかない連中は、イコが撃ち壊した扉へと突撃していく。そして、中から女性や男性の人間の悲鳴が聞こえた。

 その悲鳴にエセルは、扉の方向を見てしまうが母親が無理矢理腕を引っ張るから直ぐに視線を走る方向へと向けざるを得なかった。

 

 

 「行くよ、エセル」

 

 

 

 胸にはそこはかとない罪悪感が残るが、今は仕方ない。

 

 

 イコは、異色の血液の付着したナイフを自分の服で拭いてから鞘に戻す。

 娘が悲鳴に気を向けてしまうのを気にして、腕を引っ張った。この行いによって新しい死人が生まれてしまったことへの罪悪感は拭い切れないとは思うが、生き残こることに形振り気にしていられない。

 この後、娘に何を言われようが生きる事への執着は捨ててはいけないのだ。

 

 



 

 二人は小走りで移動し、銃器販売コーナーへと向かう。

 既に同じことを考えた人間が多数居たのか、連射の効くセミオートマチックの機構を持つ銃器を中心に持って行かれていた。

 それも大事だが、イコは先程の戦闘で連射性能よりもストッピングパワーを重視しなくてはいけないと考えた。

 すると必然的に、大口径ライフルか散弾銃のスラッグ弾辺りに行き着く。

 

 二人は目的の店に到着する。

 民間用の小銃や拳銃、弾薬を販売する鉄砲火薬店へ。

 既に幾つかの銃器が持ちだされており、棚やショウケースが破壊されて奪われていた。

 

 イコも、カウンターの中に飛び込み、掛けてある狩猟モデルのBrowning Maralを手に取る。

 ボルトを引いて、カウンター下から口径に合う弾薬を探した。

 手にしたMaralは.308 ウィンチェスターを使用するモデルであり、とりあえず弾頭重量等は気にしないで口径に合う弾薬の紙箱を手にして叩きつけるように開けた。ケースに収まった弾薬を取り出して、マガジンに4発入れた。

 

 

「エセル!此方側にきてママがいつも買ってる弾探してきて!」



 娘にも手伝ってもらい、弾薬を補給。自前の替えの衣類を引っ張りだしてバック内にスペースを造ってはそこにねじ込む。

 それから、エセル用にも何か拝借しようとした。しかし、娘はそれを頑なに拒んだ。

 

 

「ママ、私は鉄砲は持たない」


「嫌か?じゃあ、ママのケツにしっかり着いててな」



 娘の嫌悪感を目の当たりにして、小さくため息をついていると遠くから先程聞いた雄叫びが聞こえてきた。

 

 その声にエセルの顔が曇る。

 

 その声にイコの顔は諦めたような顔をするが、すこしばかりか口角が上がっていた。

 

 

 

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