表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fantasy = Shit  作者: 青カビな俺
現代編
5/8

Fighting Orc

「意味が分からないよ!ママ!」


「血だらけのファッキンファンタジー系モンスターが現れたんだよ!!」


「ジェイソン?!ねぇ!ジェイソン・ボーヒーズ?!!」


「それならこんなダッシュしなくても、歩いて逃げれるよ!!」



 イコはエセルの背中を押しながら急かす。

 急かすなとは言ってられない状態なのだから、仕方ない。

 あんな不可解なものと対峙するのは州軍か軍の仕事であって、今の彼女ではない。

 

 ゴブリンやオークは手持ちの武器手当り次第近くの人間を無差別に攻撃、殺害している。

 時折、銃声のような音も聞こえるが散発的なもので足止めされているようには思えない。

 二人は大きめの十字路を抜けようと走る。

 十字路の左方向から新手のオークの集団が人間を切り刻んで吶喊する。

 人の上半身より大きい斧は、近くに居た警官を膾切りにしては、臓腑を取り出して啜るように食べる。

 両手で女性の頭を叩き潰しては、上半身の乳房から貪り食べる者も居た。

 

 

「前だけ見て走れ走れ!!止まるな!!」

 

 

 まるで脚の遅い動物を狩り、食べているようにも見える風景にイコは背筋を震わせた。

 あんな化物がこの世の現れるなんて、世も末だ。

 エセルも見えたのか、絶叫して目に涙を浮かべた。


 

「ママ、ナニアレ!ナニアレ?!」


「だから言ったろ!走れ走れ!!」



 地上は地獄に侵食されていたが、今度は上空からやって来た。

 天空から、鳥よりも大きい何かがやって来たのだ。

 それは鳥よりも大きい割は早く飛んでいるように見えた。

 その鳥ではない何かは、イコ達親子の前を走る人間を捕まえて空中へと消えていく。

 

 鳥ではない何か。人間の上半身の鳥の羽根と下半身を付けたような何か。

 それらの何匹かが、人間を鋭い爪の足で捕まえて、空中へと攫い消えていく様を見て、エセルは更に叫ぶ。

 

 

「ママ!ママぁ!!今の何、今の何ぃ?!!」

 

「捕食されなかっただけ良かったと思え!」



 イコは腰のタウルスを抜いた。

 上空のその鳥ではない何かは、空中で旋回しまた捕食か捕まえる為の飛行コースを飛ぼうしている風に見える。

 それを確認したら、近くの車の下にエセルを伏せさた。



「車の下に隠れて!」


「ママは?!」



 娘の問いに答えず、立膝の体勢でタウルスM1911 9mmを構え此方に飛んで来る飛行生物に銃口を向けた。

 セフティを解除し、ダブルタップの要領で連射。一秒間に2発の9mmパラベラム弾が発射され、空気を裂く。

 弾丸はそのまま、一匹の飛行生物に命中。

 命中すると同時に、その生物の表皮、真皮を容易く引き裂いてしまい赤筋白筋を無理矢理穴を開けた。

 弾丸は止まらず破壊面積を広げつつ、内蔵器官に達して、回転して傷つけては止まった。

 その間一秒も掛かっていない。

 

 悲鳴を上げて地上へと落ちていく飛行生物。

 それを見た仲間は、低空飛行を止めて上昇して離脱していった。

 

 

「エセル進むよ!」

 

「……う、うん!」



 赤いような茶色いような血液と気泡をアスファルトに垂れ流す飛行生物を一瞥しつつもタクティカルリロードをして新しいマガジンを入れる。

 その生物がもがき苦しむ姿をエセルに見せないようにしつつ足を進めた。

 後ろのオークの集団は、他の人間を捕食していて進む速度が激減している。

 今が距離を作るチャンスである。

 イコは徒歩以外で早く逃げれる手段を探す。バイクも無ければ自転車も見当たらない。

 

 

「クソっ!こういう時に車以外の何かはないのかよ!!」



 しかし、パトカーは発見。扉を開けて備え付けのモスバーグM500(散弾銃)があり拝借する。

 予備のショットシェルもポケットに突っ込んで、ポンプを少し引いて薬室を確認した。

 

 

「ママ、そんなのいいから早く早く!」


「分かってるって、もう終わるからちょっと待った!」


「また上からデッカイ鳥が来るよ!」


「Fuck! C'mon fuck'n bitch!」



 娘にしゃがませ、モスバーグを構えると、先ほどと同じような鳥みたいな生物が急降下強襲のような飛行コースでイコに迫ってきた。

 彼女はそれを見て口角を少し上げて、セフティを解除。モスバーグを連射して迎撃、連射した。

 発射された散弾は襲ってくるそれらの顔や胸に当たり小さな銃創を無数に作り出していった。

 顔面の皮膚、眼球に小さな銃創を創りだしては、デリケートな眼球等は機能不全を起こさせる。

 羽根の一部を散らせながら、羽ばたくのを止めてそれらは落ちていった。

 それを見たイコは満足そうに散弾銃のポンプを前後させて、空のショットシェルを排出させる。

 

 

「YES!Get Some!!」

 

 

 撃った分だけ再装填して、また走りだす。

 先程の銃声で後ろのお食事の真っ最中だったオーク達が親子に気が付き、武器を振り上げて追いかけて来た。

 それを一瞬確認するイコは悪態をついて、エセルを急かして尻を叩く。

 


「ほらほら、天然牡蠣を生で食べるみたいに身体を啜られたくなければ進んで進んで!走れ走れぇ!!」


「ママ!表現が生々しいよ!!」


「うるせぇ!ズルズル吸われたくないだろうが!」



 そうは言っても、エセルの体力も限界に近づいてきている。

 肩で息をするようになってきているのは見て分かった。

 女の子だ、男子みたいに体力が有るわけでも陸上選手でもない。

 イコは、エセルを先に走らせた。

 

 

「エセル!この先のショッピングモールまで走って!1階のサービスカウンターまで走れ!」


「う、うん!」



 残った体力を駆使して、娘は走りだす。

 その後ろ姿を確認したら、散弾銃を構えて化物の集団に銃口を向けた。

 動く敵は4匹だ。各々剣や斧、棍棒等を携えていおり、棍棒を持つ輩に関しては規格外の大きさであった。

 特に躊躇いもなく引き金を引いた。散弾は先程の鳥獣のように絶大な攻撃力を発揮した訳ではなかった。

 距離はあったとはいえ、無力化できる程のストッピングパワーを与えられず、むしろ激情を煽ってしまう。

 散弾の攻撃を受けても尚此方に迫って来るオーク達。

 

 

「…嘘だろ」



 イコは急いで後退しながら、新しい散弾を再装填するも、斧が彼女に飛んできた。

 それを身を捩ってかわし、散弾銃を撃つ。

 斧は近くの車に突き刺さり、車を二度と使えないようにスクラップにしてしまう。

 それを見て、冷や汗を流してしまう。

 

 

「楽しいモンもって居やがるなオイ!ワイヤーカッターよりも切れそうじゃんねぇか!」



 斧を投げて手ぶらになった思ったオークは、予備に剣を持っていてそれを抜いてイコと対峙する。

 何か話すが、言語の壁と話しても分かり合える筈がない運命によって別段どうでも良くなる。向こうが逃げるか死ぬか、彼女が追い返すか内臓を啜られるかの何方かなのだから。

 何発か撃ったら、残り数発の散弾を再装填。散弾は、表皮に穴を開けて出血を促すが、それだけで動きを止めるまでには至らない。よってオークは怪我に構わず突進して武器を振り上げてはイコに襲いかかる。

 

 剣を振り上げては突進してくるオークには、顔面へとダブルタップ。目に命中したのか紫色の血を墳出させて動きを止めた。

 まずは一匹、動きを止めた。

 

 別の一匹が剣を突き刺すように突進してくる。

 それをモスバーグのストックで反らすように殴り、返す力で顔面を強打。しかし、それはあまり効果的ではなく、剣は彼女に襲いかかる。

 間一髪で避け、口の中に向けて1発撃つ。

 口腔内の攻撃も効いたのか、舌や歯は勿論、歯肉や口蓋垂、口蓋帆等に鉄球が組織を突き破るように破壊する。口から吐血したように血を出し、激痛から武器を離して意味がないとは分かっていても口元を抑えだすオーク。

 二匹、完全に無力化は出来ていないが少しだけ動きを止める。

 

 まだ殆ど被弾していないオークが仲間の武器を拾って二刀流になり、イコに襲いかかった。

 剣が時間差で彼女の肉を刻もうと振りかかる。

 斬られる訳にはいかないので近くの車のボンネットに乗っかり避け、剣は空を切ってはアスファルトに穴を開け、車のライト削る。

 

「Oh,Shit!」



 ボンネットに乗っかったまま二刀流オークの頭部にモスバーグを連射。全弾撃ちきり、ショットシェルの中身はオークの顔面をグシャグシャにしてしまう。ミートハンマーで何回も叩いて潰してしまったように原型を留めず、噴き出るように出血。そのまま倒れて動かなくなった。

 三匹めを撃ち殺した。

 しかし、プライマーウェポンの散弾銃は弾切れ。後はセカンダリーウェポンのTaurus1911 9mmだけとなった。

 嘘だろ!と言って、ポケットを漁るが残弾も予備の弾薬もない。ポンプを引いて戻し、開閉させて残弾を確認するもショットシェルは確認できない。

 

 残る一匹のドデカイ棍棒を持った奴も仲間を倒されてお冠状態。目から分かり易い殺気を放ち、イコに棍棒を振りかざす。

 

 

「おい!!」



 男性の声がする。

 イコはボンネットから転げ落ちるように降りて、棍棒の打撃を避けると男性の声がした方向を一瞬見る

 。

 棍棒は規格外の攻撃力を持っていて、ダイハツムーヴのボンネットとエンジンの高さを軽々と半分くらいに潰す。

 男性は警官らしく、黒い制服を着て手には拳銃とAR15を持っていた。

 彼はイコに向かって赤いショットシェルを投げてくる。

 それを弾薬と認識したら、運良くキャッチ。素早くポンプを引いて素早くコンバットリロードをした。

 

 顔面に向けて発砲。致命傷に銃創は顔面には出来なかったが、片目を潰してしまうことには成功する。

 イコは散弾銃をその場に落として、タウルスを抜いて顔面にダブルタップ。

 オークは更なる銃撃に棍棒を落として顔面を抑えて倒れ、奇怪な悲鳴を上げながらのた打ち回る。

 その姿にイコは容赦無く、頭部へ数発の銃撃を加えて黙らせた。

 

 

 一連の交戦で、力が抜けて近くの車に寄り掛かるように倒れてしまう。

 肩で息をしながら、まだ息をしているオークに向かって発砲し同じように黙らせた。

 

 

 

 彼方此方で騒々しい音がするし、イコの近くの車からも防犯の為の電子音が鳴り響いている。

 その音を聞き、震える手で電子煙草を取り出して口に咥える。

 

 大きく息を吸って、吐く。その動作を何回か繰り返し、流れる血を見た。

 吐き気を少し覚えたが、ビルの間から見える狭い空を見て落ち着かせた。

 

 

「おい大丈夫か?!」



 弾薬を投げた警官がAR15を構えながらイコに近寄る。それを見て少し安堵したのか、鼻で笑う。

 

 

「おたく、あの時最高にクールだったよポリ公」


「あんな戦い繰り広げるアンタの方がクールだぜ」


「ありがとよ畜生。腰が抜けちまった」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ