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それでも
ある出来事に秘められた、ほんとうの意味がわかった瞬間。
どうしても受け入れ難かった自分を、心から許せるようになったとき。
胸のずっと奥で、誰かと琴線が響き合うのを感じたとき。
わたしの心は、確かに震えたのだ。
深く潜るのは、つらい。
もっと手軽に楽になれるアイテムがあると、知ってしまったから。
何も考えずに時をやり過ごせるくらいには、大人になってしまったから。
いつまでもヒリヒリしたままでいられるほど、若くはないし、理屈抜きで失いたくないと思う「日常」もできてしまった。
それでも。
魂がしびれたあの瞬間を、忘れることができない。
結局は辿りつけないかもしれないのに、不器用な指で掘り続ける。
何かがわたしを誘い続ける。
深く、もっと深く、と、
結局のところわたしは、わたし自身の正体を暴きたいのかもしれない。