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備忘録1 生きにくさの根っこ  作者: 小日向冬子
わたしを形作るもの
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変な子

 子どもの頃、排気ガスの匂いが好きだった。


 収穫した野菜を軽トラックに積み込んで、父が市場に向かう。

 それを見送った後に、庭に残された排気ガスを思い切り吸い込んでは、うっとりする。


 もちろん母に見つかるたびに怒られる。

「そんなもん吸ったら体に悪いだろ!」



 土を食べる癖もあった。

 長靴の底についた泥が固まって落ちた、その欠片をこっそり口に入れる。

 じゃり、という感触が、病みつきになる。


 もちろんこれも、見つかれば大目玉。



 体に悪いと言われても、子供のわたしにはピンとこなかった。

 それよりもとにかく嗅ぎたくて、食べたくて、親の目を盗んでは車の後ろを追いかけ、土の欠片を口に含んだ。



 大きくなってふと気になりネットで調べてみると、どうやら異食症というものがあるそうで。


 たとえば栄養状態が悪かったり、あとはストレスなんかでもなるらしい。


 考えてみれば、わが家の食事は実に貧しかった。農家だったからご飯のおかわりはいくらでもできたけど、おかずはほとんど野菜中心で一品だけ。小学校入学前に親戚の家で初めて唐揚げを食べた時、あまりのおいしさに卒倒しそうになったくらい、肉には縁がなかった。

 おまけに、これは大きくなってわかったことだが、わたしはどうやら血が薄い体質のようで、献血でも比重が足りずにいつもひっかかる。もしかしたらその頃から、その傾向はあったのかもしれない。

 

 なるほど。

 そう考えると、当時のわたしはただの変な子だったわけじゃなく、変な行為にはちゃんと原因があったってことか。



 それに気付いたときわたしは、ほんの少し、おかしな自分を許せる気持ちになれたのだった。

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