まぁ、ユキヒコだしな…
「ご注文、お決まりでしょうか?」
「あ、あの…、私どうしたらいいでしょうか? ボタンが二回押されたから、一応来たんですけど…」
「あなたは、大丈夫よ。ここのバカ共の対応は私が引き受けるから」
「あ、ありがとうございます、青塚先輩!」
「え…? 青塚?」
「あ、ホントだ。眼鏡してないから、おれっち気付かなかったわ」
「騒がしいバカ共がいると思って、来てみればウチのクラスの連中だったとは……」
「「「お、お邪魔してまーす…」」」
「まぁ、それはいいとして、……注文、決まったの?」
「ほら、聞かれてるぞ。早く言えよマコト」
「えー、青塚さんの前で言うの?」
「ほらほら、マコト。青塚さん待ってるぞ」
「しゃーねぇな…。じゃ、じゃあ……」
「はい。ご注文をどうぞ」
「マルゲリータピザと、ペペロンチーノと、あと、ドリンクバー3つ、それと……は、半熟卵の…ミラノ風ドリア、……半熟卵、抜きで」
「かしこまり…え? 最後なんて?」
「だ、だから……半熟卵のミラノ風ドリア…半熟卵抜きで」
「………………なるほど」
「何が『なるほど』なの、青塚さん?」
「あ、いや何でもないわ。それじゃ……かしこまりました。少々お待ちください」
「青塚さんて、ここでバイトしてたんだな。知らなかったわ」
「マコトお疲れ、かなり面白かったぞ」
「……………もう二度と、あんな事しねぇからな」
「まぁまぁ、そう怒んなって。そこは、罰ゲームだからさ。そうだよなぁ、ユキヒコ?」
「あぁ。クイズに負けたマコトが悪い! それはそうと、青塚さんは何が『なるほど』だったんだ?」
「あれ、ユキヒコ、お前気付かなかったの?」
「え? 何に?」
「青塚さん、お前の顔見て、『なるほど』って言ったんだぞ?」
「え? そうだったの!?」
「だよな、リュウジ?」
「あぁ。おそらく、『ユキヒコ君がいるなら、変な注文が来てもしょうがないか』とでも思ったんだろ」
「えぇー……。おれっちってクラスの女子からそんな扱いだったの…?」
「まぁ、ユキヒコだしな…」
「あぁ、ユキヒコだしな…」
「やめろよ! <ユキヒコ>が悪口みたいになってんじゃねぇかよ!」
「え? 『みたい』じゃなくて、悪口だろ?」
「ひでぇ! ひでぇよお前ら!! お前らの方こそ<ユキヒコ>だよっ!」
「おい、ユキヒコ! 悪口にも、言っていい物と、そうじゃない物があるんだぞ!」
「<ユキヒコ>ってそんなにヒドい悪口だったの!?」
「まぁ、ユキヒコだしな…」
「あぁ、ユキヒコだしな…」
「もう、お前らなんか大嫌いだ! うわぁあああん」