表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜侍  作者: 栗山明
第一章 2
4/30

第一章 3

ユルヨたちが村の外れにある、捨てられた士道場で待機している頃。

ヒラス村のほうでは、人々が薪を割ったり、畑や森で採れた野菜や果物をかごに入れて歩いていたり、子供たちが騒ぎながら遊んでいたりと、平和的な光景が広がっていた。

 その村を、一人の女が歩いていた。

 美しい女だ。黒髪を束ね上げ、白いうなじをあらわとしている。大胆にも胸元の開いた豪奢な黒の振袖を着込み、帯の下に入った切れ目から、なまめかしい白い足がのぞけた。

 こんな田舎村にはそぐわない、月夜の似合う黒尽くめの女だった。

村人のだれもが彼女を目にすると、足を止めて見入っていた。

女は、すんすん、と鼻を鳴らす。

「こちらか。匂う。匂うのぢゃ。ようやっと。十年の歳月を経て、ようやっと」

 そうつぶやいたとき、彼女の口の端から真っ赤な血が垂れた。

女は血をぬぐってから、手の甲に付着するものに気づく。

黄色の皮膚の欠片だった。

「おぉ、これはいかぬ。はしたない」

 そういって、女はその皮膚を舌でなめ取った。

 そして彼女の唇が、弧を描いた。

「まっておれ、わちの愛しき娘よ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ