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竜侍  作者: 栗山明
第一章 2
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第四章

第四章


 最初に動いたのはデピュルだった。

 彼女が土を蹴り上げ、トヨヒサのほうへと疾走。トヨヒサはそれを迎え撃つ。

突き出された竜の拳に、迎撃の斬竜刀が激突。

響く甲高い音に、爆裂する衝撃が重なり、踏みしめる地面が爆ぜた。

互いの武器越しに、トヨヒサとデピュルの目が合う。

「クソガキっ!」

 トヨヒサは背後で立ち尽くすマヒルに叫んだ。それだけで彼女は雷に打たれたようにハッとしてから、森のほうに走り出した。ここにいては邪魔になると理解したのだろう。

 デピュルが念力を放出。掌から衝撃が放たれ、トヨヒサは斬竜刀ごと後退。デピュルが距離をつめ、右の拳が繰り出される。とっさにトヨヒサは念の壁を展開。

拳が壁にぶつかり、空間に波紋が広がり、破砕。

あっさりと壊されたが、目的は防御ではなく遅滞させること。

壁に阻まれたせいでわずかに速度を落とした拳を、トヨヒサは頭を振って回避。同時に飛び退き、横手から伸びてきた左拳をかわす。

そのままこちらに追いすがろうとした彼女だったが、弾かれたように横転。先ほどまで彼女が立っていた場所に、肉厚な青竜刀が降ってきた。

デピュルを斬り損ねたユルヨは、うれしそうに笑う。

「私を忘れるな。さみしいだろ」

「さかし、人間」

 デピュルの毒づきに、ユルヨが斬撃で応える。

銀の流線が雨を断ち切る。デピュルは後退。胸元を切っ先がよぎり、返す刃が彼女のみぞおちに突きこまれる。

デピュルが右手を打ち下ろして青竜刀を叩き落すと、ユルヨが前のめりになり、そのまま片手をついて逆立ち旋回。風車のように振られたつま先がデピュルのほほにめり込み、たたらを踏む。ユルヨは念力を用いて跳躍し、空中で回し蹴りを繰り出す。

デピュルの豊満な谷間に足裏が激突、衝撃で彼女はよろめく。

 着地と同時に地を蹴り、ぬかるんだ土の上でユルヨの斬撃が炸裂。空気摩擦で発火するような速度で銀光が奔り、デピュルを両断する寸前、地面が大爆発。

泥の柱が立ち上る。

デピュルが足の裏を通じて、地面に念力をぶつけたのだ。

爆発の余波を受け、ユルヨは目を薄めて後退。

その眼前の泥の柱の中から、デピュルが飛び出してきた。

 突き出される手刀。それが青竜刀の腹で受けられる。

 ガキンッ!

 耳に痛い音が響き、両者が腕力に念力を加えて押し合いをする。力は互角。竜が数百人分の力を持っているように、その力を受け継ぐ竜人もまた同等の力をもっているのだ。

 拮抗する竜と竜人。すると一人と一匹は、みちびかれたように横手を向く。

 ユルヨとデピュルがやりあっている間に肉薄したトヨヒサが、そこにいた。

 斬竜刀を一閃。

 しかし長い刀身が裂いたのは、豪雨の帳だけだった。

ユルヨとデピュルは一瞬速く、その場を飛び退いていた。

するとデピュルが言った。

「めんどうぢゃ。ここは捨てられし地。そしてこの雨。人目はあらずゆえ」

 身につける振袖が彼女の皮膚に溶けこみ、一体化。その皮膚が灰色の竜鱗に変化。四つんばいになると、腰骨あたりから尾が生え、背中から背ビレが伸びる。美しき顔が頑強なる顎をもつトカゲになり、そのひたいから予想通り四本の鹿の角が生えた。

 そして身体が巨大化し、全長が十メトルもある化け物となった。

 地上最強の生物が、そこにいた。

 竜の赤い双眸を見据えて、ユルヨが楽しげにつぶやく。

「ようやくおでましか」

 すると竜は跳躍。空中に念力の足場を次々に形成し、それらに飛び移って、上昇していく。そして曇り空を背に、竜は空中の力場に四足を乗せて、せり出した顎を開いた。

「平伏せ」

 先ほどと変わらぬ声を発し、その口腔から石の息吹を吐いた。

雨が息吹によって石化し、灰色の風と一緒に地上に降り注ぐ。

トヨヒサとユルヨが、その場から退避。

隕石群のように、石の雨がぬかるんだ地面に大穴を開け、息吹を受けてその大穴ごと石の大地に変化した。

退避したトヨヒサは、するや否やバク転。そばに天からの念弾が突き刺さり、石の大地にひびを刻む。バク転して避けつづけるトヨヒサを執拗に追い立てる、無数の念力の弾丸。

何十発目かのそれをかわしたところで、トヨヒサは前方跳躍。着地地点に柱を形成し、その上に乗る。同時に柱が急速上昇、発射台さながらに射出された。

 念の雨を斬竜刀で切り払い、浮かぶ竜の眼前まで到達。

「チェストオオオオオッ!」

 竜叫し、斬竜刀を振り下ろした。

 眉間めがけて振るった刀が、不可視の壁に激突し、空間に波紋が広がった。即座にトヨヒサは斬竜刀を自らの念力で包み、威力を上げて、竜のそれを強引に切り裂いた。

 その間に竜は頭を引いており、トヨヒサの攻撃は空を斬るにおわった。

――トヨヒサの攻撃は。

 トヨヒサと竜よりも高みに、ユルヨがいた。彼は竜と同じように作り出した念力の足場を駆け上がっていたのだ。足場の上からユルヨが飛び出し、急速落下。

 背ビレの一部を薙ぎ払い、竜の背中に青竜刀を突き立てた。

 竜が咆える。鼓膜が破れそうになり、トヨヒサは思わず念力の耳栓で耳の穴をふさぐ。竜が激しく身をよじる。いくつもの丸太を束ねたような胴体の上で、ユルヨは青竜刀の柄をにぎって耐える。しかし青竜刀のほうが耐え切れずに胴体から抜け、振り落とされた。

 落下するトヨヒサとユルヨ。その身体を押しつぶすように、頭上から巨大な平面的な力場が落ちてきた。二人の身体を衝撃が貫き、石の大地に叩きつけられた。

『グハッ』

 似たような苦痛の声をもらし、二人は逆方向に横転。

石の雨が地上を穿った。

 全身の苦痛に耐えながら、トヨヒサは跳ね起きて、空の竜を見据える。

地上にいれば念力と石化の恐怖が降り注ぎ、接近すれば堅牢なる念の壁や圧倒的質量に邪魔をされる。

四百年の歳月は並みではなかった。

 加速の息吹を使うしかない、と思った。

 しかしこの息吹には欠点があった。

息吹というのは、原則として息を吐いている間しか効果がない。

たとえば火を吐いた場合、口から吐く火は消えるが、壁に燃え移った火は変わらず延焼しつづける。石化の息も同じで、口から吐く石の息は消えるが、石化させたものは変わらず石のままだ。だが加速は特殊で、質量ある物体は摩擦の影響で、運動するための動力を常に奪われている。だから息が切れれば、摩擦によって物体の加速が失われるのだ。

これがこの加速の息吹の欠点であった。しかも加速したあとに高速で動き、酸素を消費するから、その効果時間は五秒から十秒と言ったところだった。

 よって使う場面が限られてくる、というわけだ。

 そのときだ。

「まったく、それじゃいい殺し合いができないではないか。引きずりおろしてやるよ」

 雨の音に混じって、ユルヨの声が届いた。

 彼の胸郭がふくらみ、次の瞬間、口から大量の砂が吐き出された。まるで虫の大群のような砂の塊を念力で包み込む。透明な力にみちびかれて、砂が二本の巨大な腕の形に整えられた。竜の胴体並みに大きなそれを、ユルヨは両手から伸びる糸で操作。

「堕ちろ。竜」

 砂の両腕一緒に、平面な力場に飛び移ってユルヨは飛翔する。

竜も足場を形成しながら空を駆け、迎撃の念力を放つ。砂の右手の掌に大穴が開く。だが、すぐさま砂が元に戻り、再度追尾。まるで効いていない。竜はまた走り出す。

まるで曲芸のように、空中で竜と砂の両腕による軽やかな追いかけっこが行なわれる。

すると竜が身をひるがえし、石の息吹を吐いた。

 真正面から息吹を受けた右腕が、灰色に染まり、石化した。

そこに大量の念力が撃ち込まれ、石の右腕が大破。木っ端微塵にされた。

 その飛礫の背後から、隠れていた砂の左手が飛び出した。

竜がとっさに壁を形成したが、波紋を五指が貫き、その先にある胴体をつかむ。ユルヨが左手を引っ張ると、それは竜と一緒にそのまま地上へと急降下。

 竜の胴体が大地に亀裂を生み、せり出した口から悲鳴が発せられた。

 砂の左手で竜を拘束したまま、ユルヨは足場から空中に身を躍らせ、その足裏に力場を形成。まるで玉突きのように、力場がユルヨの身体を押し出した。

勢いをつけて、ユルヨは弾丸のように真っ逆さまに降下。水を弾く青竜刀を構え、地上で砂の左手に拘束される竜に切っ先を向ける。目標は喉下の逆鱗だ。

銀光が雨粒を引き裂き、一直線に奔った。

貫いた。

デピュルの掌を。

 天地逆転の状態で、ユルヨの目が見開かれる。

 なんとデピュルは、本来の姿から再び人間の姿に擬態し、その身体を縮めることで砂の手から脱出したのだ。そして彼女の口から灰色の息吹が吐かれた。

ユルヨは青竜刀を捨て、自分自身に念力をぶつけて飛び退く。が、生身の右腕が逃げおくれた。息吹によって、二の腕から先の重みが増し、灰色に染まり、石化した。

着地した彼は自らの使い物にならなくなった腕を見やり、ふん、と楽しげに笑った。

念力がなくなり形の崩れた砂を、自らの念力で吹き飛ばしてから、デピュルは立ち上がった。

瞬間。

デピュルの背後でつむじ風が吹き――斬竜刀を振りかぶるトヨヒサが現われた。

加速の息吹による超高速移動だ。

息を吐きながら、トヨヒサは高速の斬撃を落とす。

刀身を通じて伝わる手応えは、軽かった。

血の尾を引いて、青竜刀の突き刺さる右腕が宙を舞う。その持ち主であるデピュルは砂混じりの泥の上を横転していた。超反応により、間一髪のところで避けられたのだ。

だがこちらはまだ加速状態。トヨヒサは追撃しようひざをたわめ、振り向き様に斬竜刀を跳ね上げる。背後から直進してきた青竜刀を、長い刀身で切り払う。

甲高い音が鳴り、青竜刀の鍔迫り合いになる。そして押し比べている間に、息がつづかなくなり、加速状態が解けてしまった。

「シマヅうう!」

 青竜刀越しに、ユルヨが凄惨な笑みを浮かべていた。彼は両手で柄をにぎっていた。左は生身の手、右は二の腕から先が砂になった手だ。

彼は石化した腕を破壊し、自らの砂の息吹でそれを補ったのだ。彼が石化してから、まだ十秒も経っていない。その間に腕を壊し、青竜刀をにぎって攻撃してきたのだ。

 歯を食いしばって、トヨヒサは戦慄の目でユルヨをにらむ。

「そこまでして戦いに狂いたいんか、手前はっ!」

「すばらしき死に場所をっ! それが武人としての本懐だろうがっ!」

「何が武人じゃっ! 手前の死は、ただの自殺じゃろうがっ!」

 叫んだ瞬間、青竜刀の圧力が増し、押し飛ばされる。トヨヒサは体勢を崩す。そこに奔る青竜刀の乱撃。斬竜刀を操り、その刀身でなんとか受けつづける。だがユルヨの鬼気迫る斬撃の嵐は、しだいにトヨヒサの身体に細かい傷をつける。そして下方からの斬撃を防いだとき、その威力に斬竜刀ごと腕を跳ね上げられた。その隙に、ユルヨの足技によってトヨヒサは地面の上に転ばされる。斬竜刀が落ち、腹の上をユルヨにまたがられた。

青竜刀の切っ先が、顔面に振り下ろされた。

ガキィン!

 耳に痛い音が響き、ユルヨの目が動揺で見開かれた。

 トヨヒサが歯で切っ先をかみ、受け止めたのだ。そしてトヨヒサは左手を伸ばし、ユルヨの右腕にふれる。念力を放出。砂の腕が砕け散った。さらに頭を振り、青竜刀をつかむユルヨごと地面に引き倒す。泥に顔から突っ込み、転がるユルヨ。

それでも離さずにいた青竜刀を手に彼が立ち上がったとき、トヨヒサは息吹を吐いた。

 加速。

残像を残す速度でトヨヒサは疾走。

 ユルヨは片腕で青竜刀を構えなおす。

 間合いが消滅。

 二条の銀線が奔る。

 交差し、二人は背中合わせで停止。

 ごふ、と吐血して、ユルヨが自分の左胸をさわる。

彼の左胸は切り裂かれ、その下にあった心臓が両断されていた。

「よい……最後、だ」

自らの傷を確認したユルヨは、満足そうに笑った。

そしてその碧眼から、生気が消え、大地に崩れ落ちた。

 トヨヒサは血にぬれた脇差しを一振りしてから、腰の鞘に戻す。

首筋をさわると、皮膚が一文字に裂かれていた。

紙一重の差、だったのだ。

 ユルヨの死体に視線をやる。

しかしまだ、感傷に浸る余裕はない。

トヨヒサは死体から視線を切り、最後の敵を見据えた。

視線の先に、デピュルが立っていた。息を荒げる彼女の右肘から先は消失していたが、血は止まっていた。ひも状の力場で腕を圧迫して止血しているのだ。

トヨヒサは斬竜刀をひろう。そして構えようとして、えづき、口から血を吐く。さらに腕や足の筋肉が、引きつりを起こしていた。度重なる連戦に加えて、加速の息吹による強化。満身創痍の身体に鞭を打ったせいで、内臓や筋肉に負担をかけたようだ。

もうろうとする意識の中で、しかしなんとか斬竜刀だけは落とさないようにする。

するとデピュルが言った。

「人間にしては、骨があるようぢゃな」

「あたぼうよ」

 トヨヒサはぬかるんだ大地に根を張るように踏みしめ、斬竜刀を肩に担ぐ。

シマヅ流竜剣術《竜斬りの構え》である。

 対するデピュルは、残った左手で拳を握りしめる。

 どうやら人間の姿のままやるようだ。

「その姿で、やる気か? 遠慮せずに、変身してええぞ」

 トヨヒサが挑発すると、デピュルが嫌悪するように鼻っ面にしわを寄せた。

「そちの魂胆、丸見えぢゃ。わちが元に戻る、その瞬間の隙を狙うつもりぢゃろ。あさましくいやしき人間の考えなど、見え透いておるわ」

「腕を切られて、油断を捨てたか。厄介じゃのう」

 つぶやき、トヨヒサは息を吸った。おそらくこれが最後。これで決める。

そう決意して――加速の息吹を吐き出した。

疾走。

激痛。

無視。

前方にデピュル。

踏み込み、斬竜刀を無心で振り下ろす。

「チェストオオオオオオオオッ!」

 高速の斬撃。

肉体が悲鳴を上げ、右腕に痺れ。

斬撃が失速し、切っ先がデピュルの肉に食い込む。

それはデピュルの右腕の断面だった。切り裂くことができず、念力によって斬竜刀が腕に食い込んだまま停止。失策。斬竜刀の動きが封じられてしまった。

おまけに――息がつづかなくなり、加速が切れた。

世界が急速におそくなる。

正面のデピュルの左手が跳ね上がった。手刀の形をとった左手がトヨヒサの左胸まで一直線に奔る。彼女の手が皮膚を突き破り、体内にもぐりこんだ。

視界が朱にそまる激痛に、トヨヒサは絶叫。だがしかし、まだ生きている。突かれる寸前で身をよじったおかげで、手刀は心臓をそれて胸の中心――竜管を貫いていた。

もはや生きているのが不思議なくらいの痛みを、竜狩りの民仕込みの気力だけでこらえて、腰に佩いた脇差しを抜刀。左手をこちらに刺し込み、動きを止めたデピュルの心臓めがけて突きを放った。切っ先が左胸を貫く――ことはなく、手前の空間に波紋を広げた。

念力の壁。

こちらの動きを、読まれていたのだ。

「哀れなり」

デピュルが左手を胸から抜き、振り下ろして脇差しの刀身を砕いた。

雨に竜鉄の欠片が混じり、彼女の顔に会心の笑みが浮かんだ。

やはり、彼女は竜だった。

おかげで――。

(その顔を、油断を――待っていた!)

 歯をむき出しにするトヨヒサの左手から、念力の弾丸が放たれた。しかしそれも読まれていたようで、デピュルは念力の壁を張ってそれを打ち消した。

 だが、トヨヒサの真の狙いは野袴の衣嚢にひそませた右手にあった。

 トヨヒサは右手を抜き放ち、念力をまとわせたある物を投げた。

迫る物体に対して、デピュルは再び念力の壁を形成。

 物体が激突して空間に波紋が広がり――念力の壁が砕けた。

 目を見開くデピュル。

 その喉下に物体が――竜の牙が突き刺さった。

 念力をまとって威力を増したそれが、喉下の逆鱗を傷つけた。

 悲鳴。

 竜の力を操る逆鱗に傷がついたことで、デピュルの力の制御が乱れる。

 好機。

 トヨヒサは手を伸ばし、断面に食い込んだままの斬竜刀をつかみ、押し込む。刀身がデピュルの残った右腕を縦に裂き、右肩から抜けた。

間断おかずに横薙ぎに振るう。右脇から侵入した刃が、そのまま心臓を横断し、左脇から抜けた。デピュルの白い顔からますます血の気が引き、口から血がこぼれる。

 そしてトヨヒサは斬竜刀を肩に担ぐ《竜斬りの構え》をとり、

「チェストオオオオオオオオオオオッ!」

気合一閃。

デピュルの首が、真っ赤な花びらを咲かせて、舞い散った。

ばしゃ、と物が落ちて泥水が跳ねる音がした。

豪雨の中、デピュルの身体が崩れ落ちた。人だった身体が、元の図体の大きな竜の身体に戻っていく。それに巻き込まれて押しつぶされないように、トヨヒサは飛び退く。

 そして飛び退いた先で、うまく着地できずに、大地に背中から倒れこんだ。

 もう、力が入らない。

 このまま、ぬかるみの中で、死んでいくのだろうか。

 声が、聞こえる。

 誰かが、呼んでいる。

「マヒ……ル」

 そうつぶやき、トヨヒサの意識は途絶した。


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