表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜侍  作者: 栗山明
第一章 2
15/30

第二章 11

前方の粉塵が晴れると、青竜刀を持った男はいなくなっていた。どうやらもう一人の仲間と思われる老人が助けにきたらしい。

 デピュルは視線を落とし、自身の胴体半ばまで切り裂かれた脇腹を注目する。中々の腕前のようだ。脂を分泌して治癒力を高めつつ、脇腹を包帯状の力場で押さえ込み、止血する。それを行ないながらも、自分自身を浮かす念力を展開することも忘れてはいけない。

もし忘れたら、自重で平屋の屋根の底が抜けてしまう。

「愛しの娘を追わねば」

 デピュルは、馬が走り去った方向に顔を向ける。

薄闇に溶けこむ小高いミノウ山が目に入った。

そちらのほうに歩き出そうとすると、笛の音が聞こえた。

眼下を見ると、緑の半袖同心羽織と竜鉄式小具足を着て、火縄銃や刀や槍をもった同心兵たちがわらわらと集まってくる。

そして合計で、三十八人の同心兵に取り囲まれた。

 相手をするのは問題ないが、いかんせん、今は胴体が半分千切れかかっている。無理をすれば追跡に支障をきたすかもしれない。栄養を補給するひまもなさそうだ。

 適当にあしらってから、追跡を再開するのがよさそうだ。

「まったく、下等種が。まったく、愚かしい。まったく、まったく、忌々しい」

 そうつぶやく女に向かって、集まった同心兵たちが隊列を整えて、火縄銃を構えた。

「撃てっ!」

 同心兵長の声が銃声でかき消された。

多数の鉛弾がデピュルに殺到し――その肌を貫く寸前で静止した。

デピュルの周囲を、多重展開された水泡のような念の壁が包み込んでいた。

そして次の瞬間、銃弾が丸ごと弾き返され、竜鉄の雨となって地上に降り注いだ。

運悪く頭部を抉られた同心兵はもんどりうって倒れ、竜鉄製帷子で防いだ同心兵は衝撃でよろめき、転んで回避した同心兵は第二陣に備えて刀を抜き放った。

今の反撃で減らせたのは、わずかに三十八人中、四人だけだった。

さすがは同心兵。税金で鍛えられているだけのことはある。

「やりあうのは、得策ぢゃないのう」

 そういいながらも、デピュルは獲物を前にした肉食獣のように、舌なめずりをした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ