虹色に輝く花の様に
銀の庭で花を摘んでいる少女がいた
僕は花が可哀想だから摘んでしまってはいけないよと言った
少女は言った「大丈夫 ここは夢の中だから命はまた開くわ」と
随分と大人びた娘だ 僕は胸が締め付けられてしまう
花を盗みたい欲望に負けそうになった
少女は笑った あら貴方性欲があるの?夢の中なのに?
あんな汚らわしい物この世界には無い筈なのに
それは違うと言いたかった
だがその瞳に映る僕は
現実の世界とは違う貴公子の様な出で立ちで
少女は可憐なお姫様の様だった
恋 うんとね 君は恋を知っているかい?僕は尋ねた
少女は うん 私は花に恋しているの 月桂冠が見えないかしら?
僕には視えなかった
信じられない事に少女は急に変身したように大人になった
嘘だろ そう思った そんな心を見透かすように少女は
夢の中では「なんでもありよ」プクッと膨れた色っぽい唇が
動くのを見て僕は滾るのを抑えられなかった
ほらね 花を摘んではいけないと言う貴方が
私に欲情している ほらあれを見て 花があんなにも輝いている
私より美しい筈よ
はっとして後ろを振り向くと
春の花が吹雪の様に舞い上がり揺れていた
少女は言う「愛より恋の方が美しいわ さあ踊りましょう 死へと誘ってあげる」
夢の中で死ねば現実の世界でも僕は死ぬのだろうか
それは願ったり叶ったりだったけれど夢の最後に
僕は輝く花の月桂冠が欲しくなった
それを僕にくれないか そう少女にお願いすると
少女は「夢から覚めるわ お別れね しっかり生きてよ いつでも会えるから」
そう言って僕の頭に冠を乗せて笑った
目覚めた時その冠は無かったけれど確信じみた再会の予感だけがあった
夢の中でまた会えます様に 恋 それが 夢の中でなんて素敵だなって思った
いつか輝く月桂冠を二人で
そして また恋をする 夢の中で 虹色に輝く花の様に 夢の中で