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Grave of poetry(詩の墓)  作者: 敬愛
声と幸せの欠片
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晩年

私も長く生き過ぎた

自殺する事無く人生を全う出来そうだ

それに関して何の郷愁も感懐もない

精神の摩耗 本心の苦悩


ただ息をするだけで苦しかったように思う

ただ歩を進めるだけで疲れていたように思う


元々元気な花では無かった

病が次々襲ってきてしんどかった


苦しい事ばかりではあったけれど

苦しい言葉去り今は楽だ


めっきり白髪が増え薄くなっていく

若かりし頃の面影も無い 

田んぼのあぜ道

バランスゲームをして落ちたのが

人生で一番愉快だった事


失敗ばかりだったな

でもその度に強くなれた様な気がする


同じ様な日々だったな

でも後悔し改める事で前に進めた気がする


ガタピシの身体で今更何も出来ないけれど

この病院の匂いだけはどうしても好きになれないから

自宅で死にたい


そんなささやかな願いさえも長男は拒否する

私自身を拒否する 何故だ?

育て上げる事が出来たのは

私が働いていたからではないのか


そんな事押し付けないでよ

そう言われて私は知った

結局家族の為に何もしてやれてなかった事

誕生日さえも忘れるくらい多忙な毎日に


溺れていた

疲れた

死にたい


全部放り投げて旅にでも出ようか

もう長くは無い人生で結局自分勝手だね

と言われるのならば

私を癒すのは生まれた土地の川のせせらぎや

美しい星々 そびえ立つ山脈

そう 昔 住んでいたあの街


今からでも遅くは無いさ

家でも買ってあの街へ帰ろう

それがいいよと言うかのように

午後4時を伝える鐘の音が響いた


死んだ妻も喜ぶだろう

これからは君の為に毎日祈りを捧げるよ

ありがとうな 私と一緒になってくれて

こんな甲斐性無しでもやれるんだって教えてくれた人

もしかしたらまだまだこれからなのかもしれない

三人寄れば文殊の知恵 

旧友と新しい世界の構築でも夢見よう

生き易い世界 死を安心して迎えられる世界


この世界は考え方によってはユートピアだ

だって生きているのだから

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