Birthday
久々に飲む酒は五臓六腑に染み渡る
パーテーションを開いて酔いどれの目に飛び込んできたのは
一面の銀世界
ああ今年も雪が降るんだなぁ
三十五回目のバースデイ
布団から出たくないがとりあえず顔を洗う
誰も祝ってくれる人はいないけど
朝一本のタバコを燻らせながら
人生の半分だなと思う
僕はガキの頃から生意気で
気に入らない奴は全員苛めてきた
その結果として今の孤独があるのだが
もうすでに寂しいとか思わない
いつも考えていた
時に勇敢なヒーローに成りきって
時に臆病な引きこもりに成りきって
でもどうやら答えは無いみたい
それでもどうにか生きている事
生きてある事の不思議さに目をパチクリさせ
転んで立ち上がってまた転んで
見上げる青空に声を大にして願い事をする
春が来る前にどうにかこの一つしかない命に
決着をつけたいと思っても神様が許してくれる訳でもなく
背負わされてきた現実という重しに圧し潰されそうになりながら
進む
ああ、北国の冬は残酷なほど綺麗で
君の悲しみのように 穢れなき罪
いつかまた生まれ変わるとしても僕は僕自身でありたい
鏡のような雪面に意地悪されても
人生の退屈さの前にひれ伏したりするのでは無く
春花咲く繰り返しの中に溶けて
夏のビアガーデンのように
楽しげに
秋彩られた絵画の前で涙し
冬に死ぬ いつの日かわからないけど
それだけは決めているから冷たい水で顔を洗って
覚醒のもとに静かに運命の日を待つ
火のもとに惜しまれる日を待つ