表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀髪の猫はなにを願う  作者: 熊猫
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/94

第二十章:初依頼、そして交錯する思惑

挿絵(By みてみん)

仮登録期間を終え、Fランクとしての正式な冒険者になったファナたちは、初めての“正式な依頼”に臨むことになった。

 

ギルドで掲示板に並ぶ依頼票を見つめながら、ファナは小さく息をのんだ。

「……これが、最初の一歩なんだね」

リクトが腕を組みながらうなずいた。

「とはいえ、模擬依頼みたいなもんだろ? 本格的な戦闘じゃないって話だし」

「依頼内容は、街道沿いに設けた簡易野営地での夜間警備だね。依頼主は……商人?」

セナが確認すると、ちょうどその依頼主──太った腹を揺らした中年の男が近づいてきた。

 

「おお、君たちが今回の護衛かね? うんうん、若いってのはいいなぁ。特に──」

 

その視線はファナに向かう。

「君、可愛いねぇ。獣人ってのもまた珍しい……今回の警備、前後に立つのは男連中でいいからさ。君は、私の隣で休憩しててくれると助かるよ。癒やされるし?」

 

「……え?」

ファナはきょとんとした表情で固まる。意味がよく分かっていない様子だ。

 

セナが無言で一歩前に出ると、リクトが低く怒鳴った。

「ふざけんな。俺たちは護衛に来たんだ。そんなことのために来たんじゃねぇ」

「ま、まあまあ、冗談さ、冗談。若いのは怖いねえ」

依頼主は手をひらひらさせて場を収めようとしたが、セナの目は冷たいままだった。

 

夕刻、野営地。

三人は持ち場に分かれて配置された。

ファナは後方の見張り、セナが前方警戒、そしてリクトがその間を巡回する。

 

静かな夜。焚き火のぱちぱちという音だけが辺りに響いていた。

ファナは木の陰にしゃがみながら、リクトにこっそり尋ねた。

「ねえ、さっきの依頼主さん……なんで、あんなこと言ってたの?」

「……お前、本気で分かってなかったのか?」

「……うん」

リクトは顔を赤くしつつ、むっと口を引き結んだ。

 

「……ああいうのは“ナンパ”って言うんだ。女の子に言い寄る、って意味だ。からかったり、自分のモノにしようとしたりな」

「へぇ……」

ファナはきょとんとしたまま、小首を傾げる。

 

「わ、わかんねぇならいいんだよ! 無理して覚えなくていいっ!」

そんなリクトの焦った様子に、セナが笑いながら割って入る。

「リクトくん、顔真っ赤。かわいいね」

「うるせぇ!」

 

三人のやり取りに、遠くから依頼主がちらちらと視線を送っていたが、セナの冷たい一瞥にすぐ目をそらした。

 

やがて任務は無事に終わり、ファナたちは初の依頼を完遂することとなった。

帰り道、三人は夜明け前の街道を歩きながら笑い合う。

「……大変だったけど、これが“冒険者”なんだね」

「そうだな。でも、ちゃんとやり遂げたじゃねぇか」

「初めてにしては上出来だったよ。次は、もっと本格的な依頼に挑戦できそうだね」

 

「次はもっとまともな依頼がいいな」

「同感。できれば依頼主もね」

「えっ?」

 

──それぞれの想いを胸に、三人はまた一歩、“本物の冒険者”へと近づいていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ