表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀髪の猫はなにを願う  作者: 熊猫
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/95

第十八章:焚き火のそばで

挿絵(By みてみん)

夜の静寂が辺りを包む中、三人の影が揺れていた。

野営地の片隅、小さな焚き火が木々の間でゆらりと燃え、その炎が彼らの顔を暖かく照らしている。

 

その日、彼らは比較的簡易とされる野営監視の依頼を受け、街から少し離れた林道の途中に小さな野営地を設けていた。

 

「……魔物の気配、確かにあったね」

セナが静かに口を開いた。焚き火越しに、湯気を立てるスープの鍋を見つめながら。

「うん。でも……前ほど怖くなかった」

ファナがぽつりと言った。短剣を鞘に納め、両手で膝を抱えるようにして座っている。その銀灰色の髪が夜風に揺れた。

 

先ほど、不意に現れた小型の魔物。

突発的な接触ではあったが、ファナは叫ばず、逃げず、冷静にリクトとセナの動きを見ながら立ち回った。数ヶ月前とはまるで違う。

 

だが、それでも。

「……身体はちゃんと動いたの。でも……胸の奥がぎゅって締めつけられて、足が冷たくなった。……終わってから、震えが止まらなかったの」

ファナは苦笑のような表情を浮かべて、焚き火の炎を見つめる。

「まだ、怖いの。私、きっと……ちゃんとは乗り越えられてない」

 

その言葉に、リクトがぼそっと呟いた。

「怖くて当たり前だろ」

ファナが顔を上げると、リクトは少し顔を赤くしながら言葉を続けた。

「お前は……いや、ファナは、誰よりも真面目に頑張ってる。俺たちの中で、一番真剣だって思ってる。……怖いって言えるくらい強くなったって、俺は思う」

「……リクトくん……」

「だから……泣きたきゃ、泣けよ。泣いたって、お前が弱いなんて思わねぇし」

リクトのその不器用な言葉に、ファナの瞳が潤む。

「……ありがとう、リクトくん」

隣ではセナが、柔らかく笑っていた。

「ねえ、ファナ。『まだ怖い』って言えた君は、きっともう、大丈夫だよ」

「……でも、私……」

「うん。怖さは消えないかもしれない。でも、その怖さごと誰かを守りたい、前に進みたいって思える君は、僕にとってすごく、強い」

「セナさん……」

ファナは焚き火を見つめながら、ぽつりと呟いた。

「……少しだけ、泣いてもいい?」

「もちろん」

セナがそっと肩を貸し、ファナはそのまま体を預ける。リクトは少し照れくさそうに顔をそむけつつも、そばに座り直した。

 

焚き火のはぜる音だけが、静かに響いていた。

──少女は、まだ恐れを抱えながらも、確かに前へと歩んでいる。

隣に仲間がいる限り、その歩みはきっと止まらない。

 

夜空に瞬く星々の下、三人の影が静かに寄り添っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ