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銀髪の猫はなにを願う  作者: 熊猫
第二部

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第九章:すれ違う心、寄り添う手

挿絵(By みてみん)

訓練の翌日、ギルドの中庭ではファナがリクトを探して辺りを見回していた。

 

「あ、いた……リクトくん」

荷物の整理をしていたリクトの背に、そっと声をかける。

「昨日、怪我しなかった? 魔物の攻撃、すごかったから……」

ファナの声音は真剣だった。心配の色が隠せない。

 

だが、リクトはファナを一瞥すると、荷物をまとめる手を止めずに言った。

「別に。あれくらい、たいしたことねぇよ」

「でも……もし、何かあったら……」

「しつこいな。大丈夫って言ってんだろ」

ぴしゃりと返された言葉に、ファナは言葉を失った。瞳が揺れ、口を結ぶ。

「……ごめんね。気にしすぎたかも」

リクトは背を向けたまま、何も答えなかった。

 

少し離れたところから様子を見ていたセナは、静かにため息をついて近づいた。

「……あいつ、ああ見えて照れ屋だからさ。気にすることないよ」

「でも……私、何か悪いこと言ったかなって……」

ファナの耳がしゅんと垂れ下がっている。しょげた様子に、セナは少し微笑んだ。

 

「むしろ、気にしてたのはリクトのほうじゃないかな」

「え?」

「昨日の戦い、ファナが一番冷静だったでしょ。自分が役に立ったか気にしてるの、きっと」

「……そんなこと……ないと思うけど……」

「あるって。……それに、僕だってちょっと妬けたくらいだし」

セナは冗談めかして肩をすくめた。

 

「ファナは優しいからさ、ちゃんと伝わってるよ。たとえ言葉にならなくても」

「……ありがとう、セナくん」

ファナの頬がわずかに赤く染まり、セナはそれを見てやんわりと笑った。

 

「次は僕が先に声かけようかな。ファナに“心配される”の、ちょっと羨ましいから」

「もう……からかわないでよ」

でもその声には、少しだけ笑みが戻っていた。

 

夕暮れの光が差し込む中庭で、ふたりの影が静かに揺れていた。

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