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銀髪の猫はなにを願う  作者: 熊猫
第二部

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第七章:小さな勇気の灯火

挿絵(By みてみん)

ギルドの依頼掲示板には、いくつかの簡易依頼が張り出されていた。

魔物退治ではなく、道具の運搬や、野菜の収穫補助、小動物の調査といった、仮登録者向けの内容だ。

ファナは掲示板の前に立ち止まり、視線を泳がせていた。

文字は読める。依頼の内容も理解している。それでも、胸の奥がずっとざわついていた。


「……明日、これをやるんだよね」

自分の声がひどく遠く感じた。心臓が少し早く打っている。

「ファナ、迷ってる?」


背後から声がした。振り返ると、セナが微笑んで立っていた。

肩にかかる淡い銀茶の髪が夕陽に照らされ、やわらかく光を帯びている。

「うん、ちょっとだけ。緊張してるのかな」

ファナがそう答えると、セナは少し目を細めて言った。

「それは悪いことじゃないよ。大事なことをちゃんと受け止めようとしてる証拠だ」

「……うん、ありがとう」

その言葉は不思議と、すっと胸に入ってきた。


夜。ギルド裏の訓練場には誰もいなかった。

星が瞬く空の下、ファナは木の杭を相手に短剣の型を繰り返していた。

動きは硬い。どこかぎこちない。


「……怖いな」


誰にも聞こえないように呟いた瞬間、背後から足音がした。

「こんなとこで一人で何してんだよ」


声の主はリクトだった。

ファナが振り返ると、リクトはどこかバツの悪そうな顔で近づいてきた。

「明日が初依頼だから、少しでも体を慣らしておきたくて……」

「ふーん……まあ、お前、マジメだしな」

リクトはぽりぽりと頭を掻いた後、ふっと目を逸らして言った。


「別に……怖くてもいいと思うぜ。誰だって最初はビビるし。俺だって、そうだったし」

「リクトくんが?」

「な、なんだよその意外そうな顔は!……とにかく、お前がちゃんと準備してるのは分かってる。だから、明日はお前らしくやればいいってこと」


不器用な言葉。でも、まっすぐな想いが伝わってくる。


「……ありがとう」

ファナは小さく微笑んだ。

そのとき、また別の足音が近づいてきた。

「ふふ、二人ともこんな時間に何をこそこそと?」

セナが現れ、からかうように笑う。

「ファナがちょっと不安がってるから、俺が見張ってやってんだよ」

「見張りって……それ、守ってるって言いたいの?」

「ち、ちげーし!」

ふたりのやりとりに、ファナはくすりと笑った。

ほんの少し前まで、誰にも心を開けなかったのに。今はこうして、そばにいてくれる人がいる。

言葉にされなくても、気持ちが伝わってくることがある。


――胸の奥が、あたたかい。


「明日、がんばるね」

そう言ったファナの言葉に、リクトとセナが同時にうなずいた。

夜風が三人の間をやさしく抜けていった。

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