第六章:依頼の準備とすれ違い
ギルドの朝は活気に満ちていた。
受付の前には依頼票を手にする冒険者や、その様子を興味津々に見つめる仮登録者たちの姿。
ファナもその一人として、掲示板の前で足を止めていた。
「すごいなぁ……魔物退治、輸送、護衛……いろんな仕事があるんだね」
「でも、仮登録の俺たちはまだ本格的な依頼は無理だろ」
リクトが隣で腕を組みながら言った。けれどファナはふと、ある依頼票に目を留める。
「これ、訓練用って書いてある。仮登録者でも申し込み可……だって」
「どれどれ……あ、本当だ。村の調査依頼……って、ちょっと遠いじゃん」
「でも、準備すれば行けると思うよ」
そう言ったファナの声に、リクトは少し複雑な顔をした。
その後、三人は依頼について話し合うためにテーブルへ移動した。セナは紙に何かを書きながら言った。
「道中に必要な食糧と水、それに簡易な医療道具。持ち物の管理は僕がやるよ」
「おう、任せた。……俺は荷運び役ってことでいいな?」
「私は……何をすればいいかな?」
「ファナは戦闘と周囲の警戒、それから現地の観察記録なんてどう? 語る力を使わなくても、言葉で残すのは得意でしょ?」
セナの提案に、ファナは嬉しそうに頷いた。
だが、その後──
依頼の出発準備をめぐって、ファナは小さな不安に襲われていた。
「……私、足手まといにならないかな」
短剣を手にしたまま、訓練場の隅で独りつぶやく。先日の実地訓練では仲間に助けられた場面も多かった。
その頃、リクトとセナは別の場所で準備を進めていた。
「……ファナ、最近ちょっと落ち込み気味だな」
「自分に厳しい子だからね。ああいうときは、そっと見守る方がいい」
「だけど放っておくと、余計に自分を責めるぞ」
セナは少し笑った。
「……なら、声をかけてあげれば? リクトが」
「お、俺が!? いや、だからそういうのは……」
「素直になれば、もっと伝わるよ」
そう言いながら、セナは背中の荷物を整える。
やがて、三人の準備が整った。
ファナは意を決して、ふたりの前に立つ。
「……行こう。私、ちゃんと前を見て進みたい」
その言葉に、リクトは少し驚いた顔をしたが、すぐに笑って頷いた。
「おう、行くぞ、ファナ」
「無理はしないで。でも、君らしくいてくれればいい」
出発を前にした三人の間には、確かな絆が芽生え始めていた。
──それぞれが抱える不安と想いを胸に、初めての依頼へと一歩を踏み出すのだった。




