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銀髪の猫はなにを願う  作者: 熊猫
第二部

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第五章:夜の裏庭

挿絵(By みてみん)

その夜、ギルドの裏庭は静寂に包まれていた。

月明かりが敷石を白く照らし、木々の間から洩れる風が、葉をさらりと揺らす。


ファナはひとり、短剣を手に構えていた。姿勢を確認し、踏み込みの角度を確かめるように、何度も同じ動作を繰り返している。

「……まだ肩が上がってる。もっと、自然に……」

カイルに教わったとおりの構え。けれど、動きに力が入りすぎている。まだ、身体がぎこちない。

「集中してるな」

その声に、ファナは驚いて振り返った。


「セナくん……?」

木の影から現れたのは、穏やかな表情を浮かべたセナだった。肩にはいつもの杖がかかっている。

「ごめん、驚かせた。訓練してるって聞いて、少し見に来たんだ」

「ううん、ぜんぜん。見られて恥ずかしいけど……」

「恥ずかしがることないよ。君の努力は、本当にまっすぐだ」

ファナは頬を染めて目をそらした。


「……もうちょっと練習したら、帰るね」

「じゃあ、俺は少し離れて見てる。……無理はするなよ」

そう言ってセナは木の陰に腰を下ろした。その表情はやわらかく、どこか微笑んでいた。


やがてファナが訓練を終えて建物へ戻ると、入れ替わるようにリクトが裏庭へ現れた。

「はぁ……やっと終わったか。あいつ、今日も頑張りすぎなんだよな」

「そう思うなら、もう少し素直に声かけてやればいいのに」

木陰から声がして、リクトはぎょっとして振り返った。


「お、お前、いたのか! まさかずっと見てたのか!?」

「まあね。……リクトって、ほんと分かりやすいな」

「な、なにがだよ!」

「見てて微笑ましいよ。あんなに心配してるのに、肝心の本人にはぶっきらぼう。……もしかして、照れてる?」

「ち、ちがっ……そ、そういうんじゃ……!」

セナは静かに立ち上がり、夜空を見上げる。


「でも……わかるよ。僕も、ファナには特別な気持ちがある。彼女が笑ってると、嬉しくなる」

リクトは一瞬、言葉を失った。だが、すぐに肩をそびやかせる。

「……譲るつもりはねえぞ」

「僕もだよ」

静かな夜に、少年たちの決意が交差した。


──それぞれの胸に秘めた想いが、まだ幼い心に火を灯していた。

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