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銀髪の猫はなにを願う  作者: 熊猫
第二部

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第一章:仮登録者たちのはじまり

挿絵(By みてみん)

小さな冒険者ギルドの門をくぐると、少し埃っぽい空気と、がやがやとした声がファナを包み込んだ。

掲示板に並ぶ依頼書。受付に立つギルド職員。練習用の木剣を手に、向かい合う冒険者たち。


見慣れない場所に、耳と尻尾がそわそわと揺れる。

「……ここが、冒険者ギルド……」

その隣には、無骨な鎧の肩を揺らして歩くカイル。

そして、落ち着いた旅装をまとったレリアが微笑んでいた。

「緊張してるの? ファナちゃん」

「す、少しだけ……でも、ちゃんと話すって決めたから……!」

ファナはぎゅっと拳を握り、受付へと向かう。


優しそうな女性が笑顔で迎えてくれた。

「いらっしゃい。今日はどうされました?」

「わ、わたし……冒険者になりたくて、その……仮登録を、お願いしますっ!」

一瞬だけ、受付の女性が驚いたように目を丸くする。

けれど、すぐににこやかに頷いた。

「はい、大丈夫ですよ。まずは仮登録ですね」


手元の帳簿を開きながら、女性は丁寧に説明を始めた。

「仮登録というのは、正式な冒険者になる前の“見習い”段階です。

保護者や後見人の推薦がある未成年の方、または戦争や災害で保護を失った孤児の方などを対象としています」

「……わたしは……レリアおねーさんが、推薦してくれます……!」

ファナがそう言うと、レリアが優しく頷いた。

「ええ、私が保護者代理として署名します」

「確認しました。では、次に仮登録者への規定を説明しますね」


女性は指を一本立てて、ファナの目を見つめる。

「まず、単独での依頼行動は禁止です。あくまで見習いですから、訓練や簡易依頼の参加には指導役や仲間との同行が必要です」

ファナはしっかりと頷く。

「次に、危険度の低い依頼への参加が許可されます。たとえば物資の運搬や薬草採取の補助、街の人の手伝いなどです」

「はいっ……!」

「そして、仮登録者は数ヶ月の訓練と活動実績を経た後、正式な冒険者試験を受けられるようになります」

カイルが腕を組んだまま小さくうなずくのが、ファナの視界の端に入った。

「それまでの期間、ギルドはあなたの意志と成長を見守ります。……覚悟は、できていますか?」

ファナは胸に手を当て、小さく、でもはっきりと答えた。

「はい。がんばります!」


登録が終わり、仮登録証を手にしたファナがロビーを見渡していると、横から声が飛んできた。


「……なんだよ、大人みたいな顔して仮登録かよ。あれって子供の制度だろ?」

声の主は、茶髪を跳ねさせた少年だった。年齢はファナとそう変わらないように見えるが、どこか突っかかるような態度で腕を組んでいる。

「え……あの……」

ファナが戸惑うと、少年はさらに言葉を重ねた。

「ていうか見た目、十八か十九くらいに見えるし。まさか“仮”でチマチマ訓練する気じゃないよな?」

「……うん。仮登録だよ」

ファナはにこりと笑った。

「わたし、知らなかったの。語ることも、戦うことも。だから、一歩ずつ、ちゃんと学びたいなって。

子供の制度って思うかもしれないけど……わたしには、今の自分に合ってると思うんだ」

その言葉に、少年は少し目を泳がせた。

「ふ、ふーん……ま、別にいいけど。おれだって……仮登録は、初期ステップとしては悪くないって思ってるだけで……っ」

どこかバツが悪そうにそっぽを向いたその背中に、ファナはそっと声をかけた。

「ありがとう。わたし、ファナっていいます」

「……リクト。覚えとけよ」

ふいに名前を返されたその声は、さっきより少しだけ柔らかかった。


リクトがそっぽを向いたまま、ファナの方をちらりと見た。

「……でもほんとに見た目、大人っぽいよな。どう見ても年上に見えるし……それで“仮登録”って、なんか変な感じするっていうか」

ファナは少しだけ笑った。耳がぴくりと動く。

「……あのね。獣人って、成長が人間より早いの。見た目は十八とか十九くらいに見えるかもしれないけど……人間の年にしたら、たぶん十五くらい。リクトくんと、そんなに変わらないと思う」


「なっ……」

リクトが一歩引いた。耳が赤くなっているのが分かる。

「そ、そんなの……知らなかったし……!」

「ふふっ。よく言われるから、気にしてないよ」

ファナはそう言って、しっぽをふわりと揺らした。

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