表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀髪の猫はなにを願う  作者: 熊猫
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/97

エピローグ:──語り部の歩む道

挿絵(By みてみん)

語りの聖域が封印の呪縛から解き放たれてから、ひと月が過ぎた。


かつてあの地を覆っていた沈黙は、今では鳥の声と子どもたちの笑い声に満ちている。

破壊された石碑の一部は修復され、村人や旅人が自分の物語を記していく“語りの広場”として生まれ変わっていた。

ファナはその広場の隅に、小さな机と椅子を置いていた。

日が昇ると、子どもたちが自然と集まり、彼女の話を聞きにくる。時には絵本を読み、時には自身の旅で出会った出来事を語る。

 

力はもうない。

だが、語るたびに誰かが笑い、考え、涙を浮かべてくれる。

それが何より嬉しかった。

 

「おねーさん、なんで語り部になったの?」

ある日、ひとりの少年が尋ねた。

ファナはしばらく考えてから、ゆっくりと答えた。

「……昔ね、わたし、何も語れなくなったことがあったの。でも、そのとき誰かが、わたしの代わりに語ってくれたの。わたしの物語を。……それが、すごく、あたたかかった」

「だから、次はわたしが語りたいって思ったの。今、こうしてるのは……その“おかえし”なのかも」

少年は何となくわかったような顔でうなずいて、じゃあ僕も誰かに話してみる、と言って駆けていった。

ファナは彼の背中を見送りながら、ふっと微笑んだ。

 

夕暮れ。

村の外れで、カイルとファナは並んで立っていた。

「……少しは上達したか?」

「えへへ、たぶん。投げるのはまだ苦手だけど、構えはもう安定してきたってレリアおねーさんが」

ファナは短剣を両手で握り、小さく構えを見せてみせた。

カイルはふっと笑い、いつものように手を出す。

「もう一度。構え直せ。足、半歩前」

「はいっ」

カイルにとって、それは戦いを教えることではなく、ファナと共に今を生きるための時間だった。

 

レオンは遠くの丘の上から、三人の姿を見つめていた。

「語りは、きっと誰にも消せない。……それがわかっただけでも、俺はここにいた意味があった」

彼は静かに、風に吹かれて姿を消した。

また、どこかで物語に出会うために。

 

その夜、ファナは日記帳に短く書いた。

『今日も語れた。

 誰かが聞いてくれた。

 だから明日も、わたしは語ろうと思う。』

 

星明りの下、その言葉は光を宿したまま、そっとページに刻まれた。

物語は、これからも続いていく。

語る者と、聞く者がいる限り。

第一部、ここまでお読みいただきありがとうございました。

エピローグとあわせて、ひとつの区切りになります。


なお、活動報告にてイメージイラストを一枚だけ掲載しています。

ご興味のある方は、そちらもどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ