第二十七章:涙の底で
草むらに座り込んだまま、ファナは顔を伏せて肩を震わせていた。
先ほどまでの戦いの気配はすでに消え、周囲は静まり返っていた。
けれど、彼女の中では、恐怖と自責の嵐が吹き荒れていた。
カイルがそばに膝をつき、レリアがそっと手を握っていても、ファナの震えは止まらなかった。
「……ごめん……なさい……」
かすれた声が漏れる。
「また……また私のせいで……また……ごめんなさい……」
繰り返される言葉は、まるで呪いのように彼女自身を縛っていた。
「わたしのせいで……危険な目に遭わせて……」
「……私が出ていかなければ……私なんかが一緒にいなければ……」
その声はどんどん震えを増し、涙が頬を伝って落ちていく。
「もう……もう、家族……失うのは、やだ……!」
その瞬間、感情の堰が切れたように、ファナは顔を両手で覆い――
「うわああああああああん!!」
森の中に響く、痛切な叫び。
それは嗚咽というにはあまりにも悲痛で、叫びというにはあまりにも弱々しかった。
「やだ……やだ……みんな死んで……もう誰もいなくなって……やだよ……!」
カイルは顔を伏せたままのファナの肩にそっと手を置いた。
力強くもなく、押さえつけることもなく、ただそこにいるという意思を示すだけの手。
レリアはその背中を包むように抱きしめ、髪を撫でた。
「泣いていいのよ、ファナ……」
「一人で全部、抱えなくていいの。私たちがいるわ」
ファナは顔をくしゃくしゃにしながら、それでも必死に泣き続けた。
あの日、森を失ったときも、両親が目の前で消えていったときも、
弟を託し、一人きりになったときも――彼女は泣かなかった。
けれど今ようやく、涙を流すことができた。
それは、弱さではなかった。
それは、誰かに守られているという、初めての証だった。




