第二十一章:穏やかなひととき
日差しが木々の間からこぼれ、森の中を優しく照らしていた。
風は心地よく、葉っぱを揺らし、草むらには小さな生き物たちが音を立てて動き回っている。
ファナ、カイル、レリアの三人は、森の中で過ごしていた。
昨日までの緊張が嘘のように、今日の空気は穏やかで、静かに流れている。
「ここには、こんな木の実があるんだ」
カイルが木の枝を振り、実を地面に落としてファナに見せた。
その実は、見た目こそ地味だが、焼くと甘みが引き立つ。
「いい香りがしてきたわね」
レリアが微笑んで言いながら、その実を丁寧に火の中に置く。
「うん。香ばしい匂いがしてきた」
ファナも木の実を手に取って、やっと自分の食べ物が手に入ったことに、少し安心したような表情を浮かべる。
焼けた実を口に含み、あまりにも美味しいその味に、少しだけ目を細めた。
「美味しい……」
ファナは小さく呟くと、自然と口元が緩んだ。
その笑顔に、レリアは目を輝かせて言った。
「ファナ、今の顔、すごくいいわ!」
カイルも手を休めて、珍しく表情を崩す。
「そうだな。よかったな、ファナ」
ファナは少し照れくさそうに、けれど嬉しそうに微笑んだ。
それは、ほんの一瞬だったけれど、確かに彼女の心の中で何かが少しずつ変わり始めた瞬間だった。
「次は、木の皮と草の茎で縄を作ろうか」
レリアが言うと、ファナも頷いて続けた。
「うん、縄があれば、いろんなことに使えるし……」
三人は木の茎を編み、時折お互いに見せ合いながら作業を続けた。
その作業の中で、カイルがファナに編み方を教えたり、レリアができた縄を手に取って微笑んだりする。
ファナも少しずつその手を動かし、気づけば彼女の目に、あの冷たく、硬く、閉ざされたものが薄れてきているのを感じた。
一瞬、彼女の表情に微笑みがこぼれた。
それは、今まで見せたことのない、自然な笑顔だった。
「楽しいな」
ファナはつぶやくように言った。
それに、レリアとカイルは互いに視線を交わし、無言で頷いた。
夜が近づくにつれて、焚き火の周りには温かさが戻ってきた。
三人で過ごす時間は、いつの間にか貴重なひとときになり、彼女の心を少しずつ癒していった。
やがて、焼き果実と自分たちで作った縄を持ち寄り、笑いながらそれを食べる。
その穏やかな時間が、どこか夢のように感じられる一日だった。




