第十一章:問いかけ
夜の山道。かすかな星明かりと、焚き火の揺らめきだけが三人の影を照らしていた。
冷たい風が吹き抜け、燃え尽きかけた薪がパチリと音を立てる。
「……で?」
カイルが低く問いかけた。無造作に木に背を預け、片膝を立てたまま、静かに二人を見ている。
声に責める調子はないが、その目は鋭い。
「お前たちは……この先、どうするつもりなんだ?」
ファナは少し肩をすくめた。焚き火に照らされたその顔は、日に焼け、疲労の色が濃い。彼女の視線は揺れる炎の中に釘付けになっていた。
「……」
答えられない。何を答えればいいのか、自分でもわからない。
逃げてきただけ。必死に、がむしゃらに、生きるために。
「闇雲に逃げてるだけなら、いずれ捕まるぞ」
カイルの声に棘はない。むしろ現実を見据えた、傭兵としての冷静な忠告だった。
レリアが横で小さく息をつく。「……ファナにはまだ、目的を探す時間が必要よ」
ファナは、そっとレリアの方を見た。真っ直ぐな瞳だった。否定も、慰めもなく、ただ、彼女を受け止めようとする眼差し。
「……でも」
ようやく、ファナが口を開く。
「……あたしは……あの森が、全部……」
言葉が詰まり、指が膝を強く握った。
「……あたしのせいじゃないって……わかってても……ずっと、そう思ってた……」
レリアがそっと寄り添う。肩に手を置き、何も言わずにその言葉を受け止めた。
ファナは続ける。
「どこに行けばいいのかも、何のために生きてるのかも……全部、失った。でも……」
ファナは焚き火に目を向けた。
「……でも、あたし……」
その瞳に、かすかな光が宿った。
「……生きたい」
沈黙が落ちる。
カイルは目を細めた。そして、ふっと鼻で笑った。
「……なら、目的はそれでいい」
そう言って、寝袋に身を沈める。
「生き延びる。それが第一目標だ。目的なんて、あとからついてくるもんさ」
焚き火が揺れ、ファナの銀灰色の髪が光に染まった。
誰も言葉を返さなかった。
だがその夜、ファナは初めて、自分の意思で目を閉じ、眠りについた。




