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クールを気取って距離を縮めてくる後輩女子の策略が、妹を通じて俺に筒抜けな件について  作者: 古野ジョン
第一章 クールな後輩との出会い

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第43話 親友と兄

「それって、ほんっとーに悠のためなの?」

「えっ?」


 俺と一緒にテレビに向かってコントローラーを操作していた柚希が、そんなことを言い出した。部活が終わって帰宅した後、ゲームをしながら今日の出来事を話していたのだけど、柚希には気になる点があるらしい。


「だってさ、多分俺と悠のために二人三脚を企画してくれたんだよ? 妹のためにってことじゃないの」

「それはおにいの人が良すぎるってば……あっ、キラー出た」


 柚希が十字キーを押して間もなく、俺の運転するカートがコース外に吹っ飛ばされた。復帰を待つ間、春先輩の言動を振り返る。


「いやでも、俺と悠が二人三脚で走ったところで春先輩が得をすることってないだろ?」

「ないから怪しいんじゃん! あの人が自分の得にならないことをすると思う?」

「うーん……あっ、サンダー」


 コース全体に雷を落としながら、考えを巡らせる。たしかに、春先輩が何の思惑もなく今回の二人三脚を打ち出したとも思えないか。だからって、じゃあ何のためなんだと聞かれたらそれも答えが出ない。


「とにかくっ、おにいはもっと気をつけてよ。春先輩とおにいがどうこうって噂、私のとこまで回ってきたんだからっ」

「気をつけてって言われてもなあ……おっ、抜かした」

「あー、負けたーっ!!」


 柚希が悔しそうにコントローラーを放り投げる。結局、僅差で俺が柚希をかわして一着に輝いた。たまにはゲームで遊ぶのもいいもんだな。


「いっつもおにいには……って、悠からなんか来てる」

「悠から?」


 ゴロゴロと寝転がってスマホを見ていた柚希が、ハッとして身体を起こした。何があったのかと眺めていると、どんどん柚希の顔が赤くなっていく。


「……柚希?」

「おおおっ、おっ、おにいっ!?」

「えっ、なに?」

「悠にちゅーしたの!?」

「!?」


 悠の奴、今日の壁ドンを柚希に報告したのか!? っていうかこの間の件もそうだけど、なんでアイツは柚希に「お前の兄貴からキスされたぞ」って報告できるわけ!?


「そっ、それがなんだよ!? ちゅーしろって言ったのは柚希だろ!?」

「そうだけどそうじゃないのっ! 自分の兄が付き合ってもない女にキスする色男だって認めたくないのっ!!」

「なんでだよ!?」

「だいたいっ! 壁ドンでキスなんて漫画の読みすぎじゃないの!?」

「悠と同じこと言ってる!?」

「まったくもうっ……!」


 柚希はぷんぷんと怒りをあらわにしながら、再びスマホに視線を落とした。キスしてもキスしなくても叱られるなんて、俺はいったいどうすればいいんだろう。


「……んー」

「今度はなに?」

「おにいのキス、効果あったみたいだよ」

「何の話?」


 なんだか不服そうにトーク画面を見つめる柚希。首をかしげていると、悠からのメッセージを読み上げてくれた。


「『今度は私からした方がいいのかな』……だって」

「!」


 思わずドキッとして、体が跳ねる。今度……なんて言われたら、つい意識してしまう。明日学校で悠と会ったとき、どんな顔をすればいいのか分からないな。


「なんて返事する?」

「し、知らないって」

「『あんまりすると調子に乗るよ』……と」

「おい」

「いいのっ! それより、疲れたから肩揉んでっ!」

「はいはい」


 柚希はスマホを持ったまま、いじけたような表情を浮かべている。俺は足を伸ばして座る妹の後ろに回り込んで、両肩に手を置いた。


「まったく、おにいなんて知らないっ」

「なんでそんなに怒ってんのさ」

「悠と仲良くなってるのは嬉しいんだけど、それはそれとしてなんか腹立つの!」

「理不尽だなあ」

「春先輩にも近寄られてるし! おにい、調子乗ってるでしょ!?」

「だから乗ってないって!」


 やいのやいのと言い合いつつも、俺は肩を揉んでやった。まだ高一だってのに、随分と凝ってるなあ。俺にあまり言わないだけで、部活の練習が厳しいんだろうか。


「……でも、やっぱりチャンスなのかも」

「何が?」


 何かを思い出したかのように、柚希が小さな声で呟いた。チャンス、とは何のことだろう。


「春先輩が何を考えてるのかは分かんないけどさ」

「ああ、二人三脚の話?」

「うん。もし……もしだよ、おにいが悠と一緒にすっごく頑張ったら」

「春先輩との噂もかき消せる、って?」

「そういうこと!」


 柚希は顔を上げ、大きな声でそう言い放った。たしかに、俺と悠の仲を全校生徒の前で示すことが出来れば。……俺と春先輩がどうこう、なんて考える奴もいなくなるはず。


「けど、そううまくいくかな」

「大丈夫だよ、悠と練習すればいいじゃん。私も付き合ってあげるからさっ」

「それはありがたいけど。部活、忙しいんじゃないの?」


 俺がそう言うと、柚希がこちらを向いて、ニコッと笑った。そして、さも当然かのように――一言。


「親友とおにいのためだもん。他に理由がいるのっ?」


 ……気づいた時には、柚希の頭を撫でていた。髪がくしゃくしゃになるくらい、それはもう強く。


「ちょっ、髪乱れるってば!」

「ありがとな、柚希」

「……おにい、やっぱり色男」


 恨めしそうに頬を膨らませる柚希は、なんだか愛らしかった。

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