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クールを気取って距離を縮めてくる後輩女子の策略が、妹を通じて俺に筒抜けな件について  作者: 古野ジョン
第一章 クールな後輩との出会い

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第15話 乱入者

「おにいっ、遊びに来たよーっ!!!」

「柚希ィ!?」

「部活! 雨だから早く終わったのー!」


 突然の乱入者に、素っ頓狂な声をあげてしまう。正面に座る最上は全く動じていなかったが、俺は心臓が止まりそうな心地だった。柚希は俺たちのもとに歩み寄ってきて、俺と最上の顔を交互に見比べている。


「あれーっ、二人で何してんのー!?」

「えっと、今は……」

「王様ゲームしてたの。私が王様でね」

「えーっ、二人で!? 変なのっ!」


 へ、変だと言いやがったな!? ……俺もそう思う! だって変だもん!


「で、悠はおにいに何を命令してたのっ?」

「えっと、それは……」

「今だけ俺が後輩、だってさ。だからさっきから俺が敬語使ってるの」

「ふーん……」


 最上の代わりに俺が説明してやると、柚希は首をかしげていた。人差し指を口元に当てて、何か考えている様子。そういえば、この三人が同時に顔を合わせるのは……最上が中学時代に我が家に遊びに来たとき以来かもしれないな。


「ねえねえ、悠?」

「なに?」


 柚希が最上に声を掛ける。俺に対して話すときより、いくらか最上の声色が柔らかい気がする。やっぱり中学時代からの付き合いってのは大きいんだな――


「おにいのこと、名前で呼べたっ?」

「へっ?」

「ゆっ、柚希!」

「んっ、んんっ!?」


 ガタッという大きい音が響く。気付いた時には、最上が椅子から立ち上がって羽交い締めするように柚希の口を押さえていた。俺はただただその様子を眺めることしかできず、呆然とする。


「どっ、どうしたんだよ!?」

「なんでもないです、先輩は気にしないでください。それより、ちょっと妹さんをお借りします」

「あっ、うん……」

「んーっ、んんっー!」


 口を塞がれたまま、柚希は部室の外に連行されていった……。


***


「戻りました」


 机に座って待つこと数分、二人が戻ってきた。最上はいつものクールな表情、柚希はいたずらがバレた子どものようなとぼけた表情をしている。何があったのか、ということは敢えて聞かないでおくとして。


「なあ最上、俺の名前がどうこうって……」

「いえ、気にしないでください。それ以上言うと柚希の命が危ないですよ」

「何それ!?」


 最上は椅子に座りながら淡々と答えた。でも、さっき柚希が「名前で呼べたっ?」と聞いていたのはたしかだ。やっぱり昼の件を気にしていそうな雰囲気がある。


 しかしなあ。俺が「詩音くん」と呼ばれていたから、最上も名前で呼びたくなった……なんてシナリオは出来過ぎだと思うけど。


「ねえっ、二人とも!」


 その時、柚希が口を開いた。どこから調達してきたのか、俺たちの机の横に椅子を置いて、腰かけている。


「せっかく三人なんだからっ、王様ゲームしようよっ!」

「あー、たしかにな」

「でも、くじが二本しか――」

「大丈夫っ!」


 柚希はスマホを取り出し、パパパッと何かのアプリをインストールしていた。画面をのぞき込んでみると、そこには「くじびきアプリ」と表示されている。


「今は高度情報化社会なんだから! ユビキタスな端末をアプリオリにエンジョイしないと!」

「意味が通らないしどっかのタレントみたいになってるぞ」

「雫石家の英語教育は完璧ですね」

「Yes, perfect.」

「おにいって英語喋る時だけ低音ボイスになるよねー」


 などと言いつつ、柚希は机上にスマホを出した。どうやら順番に画面上でくじを引いていくらしい。


「じゃっ、私からねっ!」


 俺の右側に座る柚希が、さっそく画面をタップした。しかし「当たり」も「外れ」も出てこない。どうやら全員が引き終わるまで結果が出ないようだ。そのまま時計回りで俺が引き、最後に最上が引く。


「じゃっ、みんな引いたね?」

「うん」

「そしたら、順番に結果確認だから。一人ずつね」


 柚希はスマホを手に取り、自分だけに画面が見えるようにしていた。なるほど、ああしてくじの結果が引いた当人にしか見えないようにしているのか。王様ゲームにはうってつけの仕様だな。


「次、おにいね」

「ん」


 スマホを受け取り、アプリを操作する。俺の結果は……どうやら「2」らしい。なーんだ、王様じゃないのか。少し残念に思いながら、自分の結果を非表示にして最上にスマホを渡した。


「……」


 最上は画面をじっと見て、残念そうに顔をしかめた。……もしかして、王様になりたかったけどなれなかったのかな。意外と分かりやすい奴だ。


「はい、柚希」

「ありがと!」


 最上からスマホを受け取った柚希が明らかにニヤニヤしている。もっと分かりやすい奴がいたわ。


「じゃあ、王様だ~れだ」

「私! 私が王様! えっへん!」

「知ってた」

「はい、分かってました」

「ふえっ?」


 俺と最上がうんうんと頷いていると、柚希は首をかしげていた。しかしすぐにさっきのニヤニヤ顔に戻り、ああでもないこうでもないと悩み始める。


「え~っ、何を命令しようかなあ?」

「柚希、俺たちが出来そうなことにしてくれよ」

「……」


 柚希が何を言い出すのか心配している俺とは対照的に、最上はすまし顔を見せていた。この妹だからな、たぶんまともな命令は来ない。運動部だし、それこそ雨中を全力ダッシュとかだったら……どうやって許しを乞おうかな。


「よぉーし! 決めたっ!」


 大きな声を出して、柚希が立ち上がった。ふっふっふと笑いつつ、俺たちの顔を見下ろしている。この妹、絶対ろくなことを考えてない!


「えーっとね、二番が……」


 最上は目を閉じて、いつも通りの表情で命令を聞いている。この後輩も何を考えているのか分からんな。何にせよ、まともな内容だといいけど――


「一番をお姫様抱っこ!!」


 ……雫石家の教育には改善の余地があるなあ、などと思った俺であった。

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