2.叱責と懸念事項
うん、読まれてませんね。
(天草 時子視点)
「で、つまり何だァ?……下級天魔相手に3人がかりで時間かけて倒したとォ?……おいおい、そりゃふざけてんのかァ!?」
「「「ひっ!」」」
私達は今、魔法少女組織本部の司令官室で正座をさせられた上に怒鳴られていました。
……いやまあ、確かにあの程度の相手に3人がかりで時間かけたのはマズかったですが……
「オレだったら1秒で片付く相手に、何をちんたらゆっくり対応してんだァ!あァ?」
「そりゃ、この組織で最強の貴女なら1秒で出来るかもしれないのだわ!……でも、私達はそこまで強くないのだわ!」
「関係ねぇなァ!……ってか、オレだって何も1秒で片付けろだなんて言ってねぇんだァ。……もっと早く倒せた筈だってだけで……」
「「「ひっ!」」」
……私達を叱責しているのは、この組織の実質的なトップにして司令官を務める最強の魔法少女……アラサーを少女と呼んで良いのでしょうか?
とにかく、そんな彼女の名は武巌原 軍破さん。
魔法少女としての服装は白い軍服で、その腰には軍刀らしき武器を携えていました。
後、銀の長髪やら三白眼やら軍破さんの魅力点は多いんですが……それ以上に怒らせたら怖い方なんですよね……
と、そこに……
「も~、軍破はんは怒り過ぎやで?……3人ともまだ新人なんやから、取り敢えず無事に生き残った事を喜ばんと……」
そう口を挟む方が1人。
「本っ当に蛍菜は甘いなァ!」
「何事もバランスやよ。……軍破はんが厳しくするなら、ウチが甘くせんと成り立たんで?」
……口を挟んだエセ関西弁の女性は菊火花 蛍菜さん。
この組織における実質的なNo.2の役職、参謀長を務めるアラサー魔法少女です。
そんな彼女の魔法少女としての服装は花火が描かれた黒い振り袖。
魅力点としては艶めく黒い長髪や怪しい糸目なんかもぶっ刺さる見た目をしていて……
「……話、聞いてんのかァ?」
「ひ、ひゃい!」
「聞いてへんかったみたいやな……」
あ、軍破さんと蛍菜さんが頭を抱えてる……
……うん、私は自分を客観視出来てる。
「本っ当にごめんなさい!」
ードンッ!
私はすぐさま土下座をして、おでこを床に思いっきりぶつけました。
痛かったけど、ここでヘマするくらいなら……ね?
「おいおい、そこまでやるかァ……ま、その土下座に免じて今回だけは許してやるが、任務の出来映えについては要改善だからなァ?」
「「「は、はい!」」」
私の土下座が功を奏して、何とか軍破さんに許して貰えました。
……やっぱり、何だかんだ優しい人なんですよ。
「……にしても、改めてベテラン3人が引退したんはデカいな~」
「お陰で魔法少女の資格はこいつ等に移るし、オレ達はトップに躍り出るしで散々だァ!」
「せやけど、あの方等も実力が目に見えて衰え始めとったからなぁ……魔法少女は40代になったら引退するんが普通やよ」
「それで後詰めがこれかァ……」
……うん、私達に文句を言いたくなる気持ちも何となく分かります。
組織で長く戦っていたベテランが3人も引退して、魔法少女の資格を手放した。
その後釜に選ばれたのが私達なのですから、失望はさぞ大きいでしょう。
「あ、もう3人は行ってええで?……後はこっちで勝手にやっとくさかい」
「「「はい!」」」
蛍菜さんから解放の言葉を告げられた私達は、正座の影響で足を痺れさせつつも立ち上がって司令官室を後にしました。
……あ~あ、こんな調子じゃ休みなんて申請出来ませんね……
仕方がないですし、戦闘訓練でもしましょうか。
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(武巌原 軍破視点)
「ハァ……本当にあいつ等で大丈夫かァ?」
3人が司令官室を出た瞬間、オレは思わずそう呟いちまったァ。
「大丈夫……には思えへんなぁ」
蛍菜も同じ考えかァ。
……こりゃマズいなァ。
「別にこれまで通り、下級から中級程度の天魔が来るだけなら何とかなったんだがなァ……ここ最近、神魔の活動が活発になってるじゃねぇかァ」
「直に見れた訳やないけど、魔力反応から察するに間違いないやろなぁ……」
基本的に、直接オレ達が神魔を見る方法は1つを除いて存在しねェ。
奴等の活動地域は基本的に神魔によって滅ぼされた地の奥深くだァ。
……が、数百年に1度のペースでそいつ等も人類の生存圏を襲いに来る。
その度に人類は生存圏を失って来たがァ……ま、それはこの際良い。
……オレ達の代で、それが起こる可能性があるって方が問題だなァ。
「動くのはどいつだろうなァ。……いや、どいつでも結果は同じだがなァ」
〈氾濫せし羊毛〉アリエス。
〈疲弊した賢牛〉タウルス。
〈歪な双子〉ゲミニ。
〈堅牢な鎧蟹〉カンケル。
〈孤高の王獅子〉レオ。
〈旗手の戦乙女〉ヴィルゴ。
〈不公平な天秤〉リブラ。
〈不浄なる毒蠍〉スコルピウス。
〈流星を放つ射手〉サギッタリウス。
〈魔喰いの白山羊〉カプリコルヌス。
〈汚染されし水瓶〉アクアリウス。
〈荒波に潜む怪魚〉ピスケス。
……正直、どの神魔に来られてもヤバいなァ。
「……軍破はん、あんま無理し過ぎもあかんで?」
「分かってらァ!……でもよォ、オレは司令官としてあいつ等を死なせる訳には……」
「ハァ……本当に軍破はんは真面目過ぎて融通が効かへんなぁ」
「勝手に言ってろォ!」
さ~て、こっからどうなるかァ……
あまりの緊張感で頭と胃が痛くなるなァ……
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(俯瞰視点)
神魔によって滅ぼされた地域では、各々の神魔が動き始めていた。
「メェェェェェ~」
ーモコモコモコ……
ある神魔は、自身の毛を増殖させ続けた。
「モォォォォォォ~」
ードスッ……ドスッ……
ある神魔は、ひたすら前方へと進み続けていた。
「「ヒヒヒヒヒヒヒ」」
ある神魔は、不気味な笑みを浮かべていた。
「ぶくぶくぶくぶく……」
ある神魔は、ひたすら泡を吐いていた。
「ガルルルルル……」
ある神魔は、不機嫌そうに唸っていた。
「あらあら……」
ーブンッ!ブンッ!
ある神魔は、笑みを浮かべて戦旗を振っていた。
ーギギギッ……
ある神魔は、自身の天秤を揺らしていた。
「カチカチカチ……ギシャァ!」
ある神魔は、自身の顎を打ち鳴らしていた。
「スゥ~……」
ーぐぐぐっ……
ある神魔は、精一杯の力で弓を引き絞っていた。
「メェメェメェ……」
ーくちゃくちゃ……
ある神魔は、廃墟にて何かを貪っていた。
ーゴボゴボゴボ……
ある神魔は、汚染した水を排出していた。
「クギャァァァァァァ!」
ーザッバァァァァァ~ン!
ある神魔は、嵐の海を泳いでいた。
どの神魔も普段通りの行動をする中で、確かに人類の生存圏へと向かう者が1体。
されど、今は誰もそれを知らない。
知る由すらない。
神魔を倒せる者はこれまでに居らず、その姿を見て生き延びる事すら貴重な体験として扱われる程なのだから。
こうして、神魔と人類による戦いの時は刻一刻と近付いていた。
……文字通り、歩み続ける者によって。
ご読了ありがとうございます。
ここまでがプロローグ的な部分です。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。
 




