10.神魔との初戦
敵キャラの倒し方考えるのキツい。
(天草 時子視点)
あの話し合いのすぐ後……
「じゃ、行くぞォ!」
「分かりました!」
「分かったのだわ!」
「OKデ~ス!」
「……威勢だけは充分やな~」
私達は5人揃って転移扉の前に立っていました。
そして……
「ふぅ……【魔装変身】だァ!」
「【魔装変身】やで!」
「【魔装変身】です!」
「【魔装変身】なのだわ!」
「【魔装変身】デ~ス!」
私達は同時に魔法少女のコスチュームへと変身を果たし、戦闘準備を万全に整えたのです。
これでもう、準備でやり残した事はありません。
「よし……こっから先はいつもと違う、死と隣り合わせの修羅の世界だと思った方が良いからなァ?」
「「「はい!」」」
「ほな、出来る限りの抵抗見せたろか~」
「王魅ちゃん、レベッカちゃん、絶対に私から離れないでくださいね?」
「ふふっ♥️……私は絶対に離れマセ~ん♥️!」
「わ、私も任務中は離れないのだわ!」
そんな会話をしつつ、私達5人は転移扉をくぐりました。
で、気になるその扉の先には……
「モォォォォォォォォォ……」
ードシン!ガラ~ン!ドシン!ゴ~ン!
雲をも越える体高の巨大な白い牛が、遠目に見える位置から走って来ていました。
「あ、あれが神魔タウルス……背中なんて高過ぎて全然見えませんね……」
「おい何ボサッとしてんだァ!……あの巨体が走って来てんだから、この場所へだってすぐ到着しやがるぞォ!」
「「「は、はい!」」」
おっと、軍破さんの言う通りです。
ならば、ここは逃げ……
「だからァ……さっさと空を飛んで神魔タウルスの体表に向かえやァ!」
「「「はい!」」」
すぐに空を飛んで神魔タウルスの体表へと向かわなければいけません!
逃げるなんて言語道断です!
「ま、道はオレが開けてやるからよォ……」
「え、それはどういう事でしょうか?」
「見てりゃ分かるぜェ……【破壊・断界】を食らえやァ!」
ーチャキ……ダンッ!
「「「……へ?」」」
軍破さんは腰の軍刀へ手を添えると、その直後には轟音を立ててその場から神魔タウルスへ向かって飛び去っていました。
そして、急いで神魔タウルスの方を見ますと……
ーザシュ!
「モォォォォォォォォォ!?」
ーキキィィィィ!
神魔タウルスの顔に横一文字の切り傷が入り、激しく出血していたのです。
その痛みに負けたのか、神魔タウルスは急ブレーキをかける様に足を止めました。
「ほなら、ウチもそろそろ仕事を始めるわ」
「えっと……え?」
「【花火・蛍の光】発動や♪」
ーふわふわ……
自ら向かって行った軍破さんとは違い、蛍菜さんは何やら魔力で作られた火花を蛍の様に変形させて何匹も自身の周囲に飛ばしていました。
「そ、それ……少し前にテレビで見たのだわ……」
「あ、それはありがとさん。……って、ちょっと見てへん間に軍破はん、神魔タウルスの向かって左側面を壁走りの要領で走りながら軍刀で斬り裂いとるわ」
「「「え!?」」」
み、見えません……
ただでさえ距離があるのに、その側面を壁走りしてるって……
逆に蛍菜さんはよく見えますね!?
「せやけど、辺りを飛んどる上級神魔を鬱陶しく感じてる頃合いやろうし、雑兵処理もついでにやってあげよか~」
ーふわふわ~……ヒュンヒュンヒュン!
「「「っ!?」」」
蛍菜さんは無数の蛍型の火花を超光速で神魔タウルスへと飛ばし、それ等が神魔タウルスへと到着した段階で……
「【花火・四尺菊】や!」
ードンドンドォォォォォォォォォォォォォン!
蛍型の火花が、前世の夏の夜空でよく見たとても大きな打ち上げ花火へと変化し、神魔タウルスの周囲で咲き始めました。
「て、テレビで何度か見た事があったとはいえ壮観ですね……」
「綺麗デ~ス!」
「……これ、私達居るのだわ?」
そりゃまあ……
今の花火攻撃で、神魔タウルスの周囲を飛び回っていたミノタウロス型の上級天魔が大量に片付けられたでしょうし……
これが魔法少女組織においてNo.1とNo.2に就いている者の実力ですか……
……前々からテレビなんかで知っていたとはいえ、直に見ると段違いですねぇ……
「おらおらおらァァァァァァァァァァ!」
ーザシュザシュザシュザシュザシュ!
「ほれほれほれほれほれ~♪」
ードンドンドォォォォォォォォォォォォォン!
神魔タウルスの巨体に刻まれていく切り傷と、周囲で咲き続ける無数の特大花火……
これ、私達って必要でしたか?
「……私達、手持ち無沙汰ですね……」
「正直に言うと拍子抜けデ~ス!」
「呆気なかったのだわ……」
神魔というからには強いと思ってましたが、味方がもっと強いとは思いませんでした。
……が、その考えはすぐに否定されます。
「モォォォォォォォォォ!」
ードンガラガッシャァァァァァン!
「「「っ!?」」」
「ふぅ……神魔タウルスの落雷や!……となると、やっぱそう簡単には倒させて貰えんか……」
神魔タウルスは自身やその周辺へと、躊躇なく雷を落としました。
すると……
「うががががァァァァァ!?」
ーバチバチバチ!
「あ、軍破はんが雷に当たってしもた!」
「……そう言えば、私達に軍破さんの声が聞こえてるのって魔法少女の不思議パワーですか?」
「いや、単純に軍破はんの声がデカいだけや!」
え、あれ普通に軍破さんの声がデカかったから聞こえてたんですか!?
かなり距離ある筈ですが!?
……って、それより軍破さんが雷に当たったって普通にマズいのでは……
「ぐ、軍破さんは大丈夫でしょうか!?」
「そこは問題あらへん!……せやけど、この感じやとあの切り傷通りのダメージは与えられてへんっぽいわ!」
「え?」
「どういう事なのだわ!?」
「あの派手な切り傷じゃダメージになってないって事なんデスか!?」
このタイミングで知らされたのは、軍破さんや蛍菜さんの攻撃が見た目程のダメージを与えられていないという情報でした。
「せやな。……まだ神魔タウルスには余裕がありそうやけど、同時に走り続ける程の余裕やないって感じやな」
「つ、つまり?」
「人間で言うなら、走ってる途中に蚊の大群に群がられたって感覚が近いやろな……確かにちょっとした傷は負っとるし走るんもキツいけど、命に届く程の事態やないっちゅう……」
「そ、そんな……」
言われてみれば、軍破さんが付けた切り傷はそこまで深くない様な気も……
ですが、それならどうしろと……
「モォォォォォォォォォ……」
ードシン!ブンブンッ!ドシン!ガラ~ン!
……ああ、神魔タウルスは身を揺らして軍破さんを落とそうとしていますが、軍破さんは依然として切り傷を付け続けています。
「……あれ?」
「ん?……時子、どうしマシたか?」
「いやさぁ、ちょっと気になったんですが……何で神魔タウルスは未だに喋らないんでしょうか?」
「……あっ、確かにそうデ~ス!」
「気にもしていなかったのだわ!」
先程から、神魔タウルスは何一つ言葉を喋っていません。
……宣戦布告の際は言葉を使って意思を伝えて来たというのに、です。
「それに、タウルスの宣戦布告からは重い覚悟が伺えました。……とてもじゃないですが、軍破さんに攻撃されただけで止まる様な半端な覚悟じゃなかった筈なんです!」
「Oh……私も同意しマ~ス!」
「そう言われるとそうなのだわ……」
あの宣戦布告の際に感じ取った神魔タウルスの持つ覚悟は、この程度の抵抗で止まる様な半端なものではなかった筈ですし、何より……
「それに先程から神魔タウルスがしてる動き、あれはどう見ても牛そのものです!」
「ん?……いや、神魔タウルスはどう見ても牛型の神魔デ~スよ……って、そういう事デスか!」
「そう。……神魔タウルスは少なくとも人類の言葉を話し、人類側の事情もある程度察せる程の頭脳を持っている筈なのに……あの巨牛からは、そんな賢さは微塵も感じ取れません!」
「「「っ!?」」」
確かな違和感が積み重なります。
……特に、目の前の巨牛が牛並みの知能しか持ち合わせていない様にしか見えないのが……
あれは本当に、私達に宣戦布告して来たあの神魔タウルスなのですか?
そんな思いが湧き立ち、私は改めて頭脳を回転させ始めた、そんなタイミングでした。
『軍破!蛍菜!……緊急報告だラビ!』
突然、ラビィリン様から緊急報告の通信が入ったのです。
「ラビィリンはん、端的に頼むわ!」
『ふぅ……信じられないかもしれないラビが、これは事実だと思って聞いてほしいラビ!』
「だから何や!」
『ボクちゃんの遠隔索敵可能範囲に、君達が現在進行形で戦っている奴と同じサイズの敵性反応が20体以上も現れたラビ!』
「「「「……………は?」」」」
ラビィリン様から言われた報告に、私達の脳内は真っ白になりました。
……〈疲弊した賢牛〉の異名を冠するタウルスの本当の怖さを、私達は全く知れていなかったのだと実感したのは、この直後の事でした……
ご読了ありがとうございます。
ただデカいだけなんて言ってません。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




