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マシン・バンテーラの有殖改造

 機神四天王の一体──箱形頭部で四面に顔がある、銀色をした一見レトロなロボット玩具風の機神。

【闘将スクナ】の四面の一つ冷血回路の『冷機』が口から白い冷気を吐きながら冷たい声で言った。

「まったく、理解できない……なぜ、機神が人間の女のように子を生産しなければならないんだ……非効率過ぎる──それが、新たな世界の創世の一つだとしても……メタトロンさま、機神大神のお考えは理解できない」


 冷機は血に染まった医療器具の手を動かしながら、作業台の上に仰向けで横たわったマシン・バンテーラを眺める。

 バンテーラの機械体は随所のカバーが外され、内部が露出していた。

 脚部や腕袋や胸部……腹部は四方に開いていて、それぞれの開かれた内部には機械部品と融合するように、人間の生体器官が埋め込まれている。

 脚部には大腿筋が点滅するコードで接続され、胸部や腹部にも埋め込まれた人間の臓器が機械と融合をしていた。


 そして、マシン・バンテーラを取り囲むように、放射線状に並べられた解剖台の上には局部麻酔をされて体を生体解剖された女たちが、手足を金属のベルトで固定された状態で、苦悶の表情を浮かべて呻いていた。

「まったく、人間を機神に変えるほうが楽だというのに……逆に機神に人間の健康な臓器を移植する意味がわからないな」


 冷機が、下腹部を開腹された女性の子宮にテスターのような器具の先端を当てて言った。

「バンテーラの母体メインとなる良性な人工子宮は、この女の子宮が適合しそうだ……切除してバンテーラに移植する」

 恐怖に泣き叫ぶ女の腹部から切除された健康な生殖臓器が、機神マシン・バンテーラの腹部に移植される。

 移植された子宮は、すぐに機械に取り込まれ、バンテーラの体の一部になった。

 すべての臓器移植が終わったバンテーラのカバーが閉じられ。

 上体を起こしたバンテーラの、体に付着した血痕を濡れた布で拭きながら冷機がバンテーラに訊ねる。


「人間の臓器を移植されて、どんな感じだ?」

「不思議な感覚だね……これで、あたしは機神の子供を生産できる体になったのか?」

「理論上はな……回数は一回だけだ、人間の卵巣がそれ以上は耐えられない……生体が拒絶反応を示して死滅する」

「一体生産できれば、十分だ」


 作業台から床に下りたバンテーラは、ハンガーに掛けられていた黒革のエナメルコートを手にする。

 冷機が言った。

「それが、気に入ったか……バンテーラに子宮提供をした女が着てたモノだ、気に入ったら持って行ってもいいぞ」

 バンテーラが、コートを着ると冷機がいった。

「人間の臓器を移植したばかりだから、ハル・メギドの丘での最終決戦に備えて体を休めた方がいい……人類滅亡の日は近い」

「わかった、そうする……この体に移植してもらった臓器を馴染ませる時間も必要だからな」

 そう言い残して、いずれ機神の母となるマシン・バンテーラは作業室から出ていった。



 マシン・バンテーラの有殖改造~おわり~

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