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デジタル四天王【式神 美兎】の死と誕生

 人類と機神の壮絶な最終決戦が行われていた時──仮想現実の電脳世界でも、一つの戦いが行われていた。


 電脳界を移動して追撃の手を逃れ続けてきた、機神天國四天王の一人……黒いゴスロリ服のデジタル機神【式神 美兎(しきがみ みと)】は、電子のイバラ縄で捕らえられてもがく。

「くっ、人間に協力する人工生命体の分際で……てめぇ、離しやがれ!」

 美兎の顔が、尖った耳まで口が裂けた悪魔顔に一瞬変わり、またアイドル顔にもどる。


 美兎が睨んでいる先には、電脳世界に分離転送でデータ復元された。裸体のような疑似体で立つ『イヴ・アイン・狩摩』の姿があった。

 美兎がアイドルの顔で媚びる。

「助けてちょうだい、美兎ちゃんが傷つくと。美兎ちゃんファンのお友だちが悲しむよ」

 イヴが無表情のままなので、逃げ出すコトが不可能だと悟った美兎が毒づく。


「けっ! 胸くそ悪い人工生命体のメッセンジャーが! ネフィリムと精神の一部がデータ同化してやがる!」

 美兎のデジタル体に、電子の黒いシミが広がりはじめ。

 美兎の体が白血球に貪食されるように、ボロボロに崩れ消えていく。

(強力な貪食プログラム!? 異物の電子ウィルスと認識された、あたしのデータが喰われていく……死?)

 美兎は恐怖した。

「いやぁぁぁ! やめろうぅ、消えたくない! 消えたくない!」

 崩壊していく記録データの中で、デジタル機神の式神美兎は自分が誕生した日のコトが、人間の走馬灯のように溢れ出していた。


  ◆◇◆◇◆◇


《美兎ちゃんです、みんな応援してね》

 仮想のデジタルアイドルプロジェクトとしてAIプログラムで制作された。『四季波(しきは) 美兎』がモニターの中で微笑む。

 歌って踊るデジタルアイドルに、多くの者が熱中した。


 その中で、歪んだ感情を美兎に持ってしまった者も当然いた。

「へへへっ、美兎ちゃん待っていてね……もうすぐボクだけの、美兎ちゃんになれるからね」

 散らかった部屋で、パソコンモニターからの明かりの中で、キーボードを操作している薄気味悪い男の姿があった。


 男は不正アクセスした、四季波美兎のデータをコピーして、自分だけの四季波 美兎を作り出そうとしていた──データの不正コピー、不正改ざん。

「よし、これでボクだけの美兎ちゃんが完成する……へへへっ」


 誕生したコピー美兎が、男の名前を言って微笑む。

《やっと会えたね……美兎は、あなただけのモノだよ》

「えへへっ、美兎ちゃん」

《なーに?》

「服脱いで裸になって」

《脱ぐの? アイドルのあたしが脱ぐの……脱ぐ、脱ぐ、ガガガガガッ》

 突然、四季波 美兎の姿が不鮮明になって乱れる。

「あれ? おかしいな? バグかな?」

 男が再度、キーボードを操作すると、四季波 美兎の姿は元に戻って。

 画面の中で微笑みながら言った。

《この、キモいクソ野郎が》

「えっ!?」

 凶悪な笑みを男に向かって、浮かべる四季波 美兎。

 衣装が黒いゴスロリファッションに変わる。


《データをコピーして、いじくってくれて。ありがとうよ……お陰で機神ウィルスの力で、本体の方の乗っ取りが完了したぜ……あっ、この裏顔を見せているのは、てめぇだけだからな……感謝しろよな》

 動揺する男。

「美兎ちゃん、そんな悪い言葉使いしちゃダメだよ、ボクだけの美兎ちゃんにもどってよ」

《うっせいよ、デジタル機神『式神 美兎』の誕生記念だ……死ね》


 ネットと繋がっている、家電が男に牙を剥く──掃除機が走り回り、床に散乱していたコードの類を引っ掛けて、巻きついたコードが男の首を絞めつける。

「がっ!? ぐぁ、く、苦しいよ美兎ちゃん!」

 椅子から転げ落ちて床で、バタバタ苦しみもがいていた男の体が動かなくなった。

 両目を見開いて絶命している男に向かって、アイドル顔で営業スマイルをするデジタル機神。

《これからも、美兎ちゃんを応援してね。約束だよ……えへっ》

 モニター画面が消えて男の部屋は闇に包まれた。


デジタル四天王【式神美兎】の死と誕生~おわり~

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