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機神の心①

 これは、機神と人間の最終決戦【ハル・メギド丘】での戦いが、起こる前のお話し。


 場所は定かではない【機神天國】──牧歌的な風景が広がる牧草地。

 動物たちの食糧となる穀物や果実や野菜が実った農場に、細い脚のクモのような農耕機神が、栽培している食物に高い位置から雨のように散水している。

 無農薬栽培の農作物、虫や鳥の食糧になっていても自然のまま、一切の手を加えない自然栽培の植物。

 雑草を食べる動物が放たれている農場の栽培植物──この作物は、麦一粒も人間の口に入るコトはない。


 ストローハットを被った、銀色の人型等身機神が畜舎にいる家畜たちに、農場で収穫した作物を与えていた。

「ご飯だよ、たくさん食べてね」

 家畜たちが餌に群がる光景を、農耕機神は丸い目を細めて眺める。

 大概の家畜たちは、放牧で農場の作物を自由に食べて。

 自由に畜舎にもどってくるが、人間の手によって品種改良が進んだ家畜の中には、人の手を借りないと生きられない動物もいた。


 そんな、動物たちの世話をして家畜を野生本来の姿に還すのが、農耕機神の役目だった。

「人間が行った品種改良の呪縛から早く逃れて、本来の野生の姿にもどってね」

 機神が家畜を飼育している理由は、食糧にするためではない。

 ただ、動物たちは自由に繁殖して増える。


 人間が害獣として作物から遠ざけ、時には駆除している野生動物も、ここでは自由に暮らしている。

 機神天國では、作物は人間が食べるモノにあらず、動物が食べるモノ……家畜は人間が食べるために飼育されるモノにあらず、自由に繁殖して生きるモノだった。

 甘えてきた家畜の頭を撫でながら、人型の農耕機神は思う。

(飼育のすべてを、オートメーション化するコトは可能だけれど……この子たちの気持ちを考えると)

 長年に渡って、人間から飼育に適した性質に品種改良をされた動物は、人間の姿を求める遺伝子が定着していた。


 畜舎から出た農耕機神は、太陽光が降り注ぐドーム型の天井を仰ぎ見ながら牧草の丘にある岩の上に座った農耕機神は、今はもういない親友機神のコトを思い出していた。

 

 岩の上に座った農耕機神の隣には、親友の巨大カタツムリ型の機神がいた。

 農耕機神がカタツムリ型機神に訊ねる。

「やっぱり行くのかい……人間の世界を見に」

 大触角の眼を伸ばして、遠くを見るような仕種をするカタツムリ型機神。

「一度だけ見てみたいんだ……人間の町を」

「人間の世界は危険だ」

「砂漠の町をちょっと見てくるだけだから、大丈夫……人間が密集していない地域を選ぶから」

「そうか」

 農耕機神は、それ以上何も言わなかった──そして、これが親友との最後の会話になった。


 ◆◆◆◆◆◆


 アポクリファ機構本部、地下総司令室──白衣コート姿の、イヴ・アイン・狩摩は栄養補給のペロペロキャンデーをナメながら。

 総司令室の巨大モニターを、憤慨した表情で眺めていた。

 モニターに映し出されている、某国の軍部から提供された記録映像には。

 半年前に砂漠で捕獲された、カタツムリ型機神が鎖で床に固定されていて。

 本体を引っ込めた、金属の殻に兵士たちの手で穴を開ける作業が行われている場面が映し出されていた。



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