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八咫 千穂の周辺ストーリー②ラスト

 その夜──ルイは病室のベットの上で一人、満月を眺めていた。

 鎮痛薬の効力で、痛みはだいぶ引いたが。ルイの心の中は八咫千穂への恨みで満ちていた。

(八咫 千穂……あいつだけ脚光を浴びて、ルイは……ルイは……絶対、潰すっス)

 完全な逆怨みだった。

 スポーツ雑誌に載っている八咫 千穂の顔は、カッターの刃で切り裂かれていた。

 サッカーボールのストラップが付いた、スマホ画面で聖龍高校の優勝記事を憎悪の目で眺めていたルイのスマホに。

 いきなり、デジタル画像の走査線が走り、黒いステージ衣装を着たアイドルのような女の子が現れた。

「???」

 スマホ画面に現れた、機神天國四天王の一人。

 実体を持たないデジタル機神【式神 美兎】が、鬼子母 ルイにスマホの中から話しかけてきた。


「はぁ~い、みんなのアイドル美兔ちゃんだよ。いいねぇ、その怨念に満ちた顔、美兔ちゃんは好きだよ……美兔ちゃんが力を貸してあげようか」

 デジタル機神に魅入られたルイは、スマホの電源を切るコトもできずに、式神 美兔を凝視する。

 悪魔の機神が言った。

「一言『憎い』と言えば美兔ちゃんが力を貸してあげるよ……すぐに歩けるようになるよ」

 ルイの口から言葉がもれる。

「憎いっス……」

 スマホ画面が光りを放ち、ルイの全身が走査線化してスマホに吸い込まれた──そして、数分後。


 病院近くのビル街を進む、巨大機神の姿があった。

 突如現れた、巨大なスマホに機械の手足が付いたような全長五十メートルの機神が、公園の遊具を踏み潰して進む。

《八咫 千穂、出てくるっス! ルイと勝負するっス!》

 戦車のような二脚、鋭い爪指の巨大な一つ目のスマホ機神は、ルイの声で辺りを見回しながら。

 夜の街で八咫 千穂の姿を探す。

 足元から逃げる人々の悲鳴と声が聞こえてきた。

「きゃあぁぁ!」 

「バケモノだぁ!」


《バケモノ?》

 立ち止まったルイは、ビルの窓壁に映る自分の姿を見る。

 そこには、一つ目の醜悪なスマホ型機神が映っていた。

《なんすか……このバケモノは!? これが、今のルイの……》

 自分の姿に愕然とする鬼子母 ルイ。

 その時──満月を背に、翼を羽ばたかせて空に浮かぶ天使の姿をルイは見た。

 ライフル銃型の銃火器を構えて、ルイに銃口を向けている天使の顔をルイは知っていた。

《八咫 千穂!? 天空の隼?》

 なぜ、八咫 千穂が天使の姿で?

 ルイが、その疑問を解決するコトは無かった。

 銃口から放たれた一条の光りが、ルイが変貌した巨大スマホ機神を貫く。


 意識が薄れ、倒れながら鬼子母 ルイは思い出した。

(思い出したっス……子供の時に、サッカーをはじめたきっかけは、ただ単に楽しかったからだったス……走り回ってボールを追いかけ回すのが楽しかったからっス……どこでどう……間違って……しまった……スか)

 轟音をあげて倒れたスマホ機神は、光りの粒子となって消滅して。

 千穂のセフィロト・ファムは飛び去った。


 救急車やパトカーのサイレンが鳴り響く中、ルイが消滅した地点に落ちていた。

 画面が割れたスマホを拾い上げた、式神 美兔が呟く。

「あ~ぁ、簡単にやられちゃった……まあいいか、人間のデータはゲットできたんだし……このデータを使って新たな機神を生み出せば」

 口が耳まで裂けた悪魔の笑みを浮かべた、デジタル機神の姿は、走査線になって消えた。


   ~おわり~

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