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第二十ニ話『セフィロト・イムラア』

 重機動陸母車両【ベヘモス】の巨砲が幻竜機神軍団の首長竜機神を、遠距離からの援護砲撃で大地に沈めたのと同時に。

 胸に獅子、肩に雄牛と熊、片腕にオウムの頭、背中に鷲の翼を持つ恐獣将軍【マンティコア】の抜いた剣が【ベヘモス】を串刺しにしてベヘモスは沈黙した。

 機能を停止した、ベヘモスから剣先を引き抜きながら、マンティコアがベヘモスに対して呟く。

「人間に酷使される、哀れな機械同志よ……人間から解放された魂で安らかに眠れ」

 ベヘモスに群がる、下腹部が膨らんだ餓鬼型の等身機神たちは、貪るように重機動陸母車両ベヘモスの装甲を剥がして食べはじめた。


 悪霊将軍【エディンム】と並び立つ、恐獣将軍は、まだ蒼い海原が広がる、アムリタ海境界外の海を眺めて呟いた。

「そろそろ深海より──第五の深海師団長【蒼きノア】が浮上してくる」

 マンティコアの片腕についている騒がしいオウムの頭が。

「災いだ! 災いだ! 大いなる災いが近づいている!」

 と、騒ぎ立てる。 


  ◇◇◇◇◇◇


 セフィロト・イムラアの由良は、連続する海洋機神軍との戦いに疲れてきていた。

 次々と海の中から現れる機神の群れ。

 紺碧の追撃・ミッドガルト隊のクーフー・ランスロット准佐が乗艦する、追撃潜水艦【シーサペイント】からの援護攻撃はあるが、翼のある機神と羽がある機神が合流した連合機神軍に手こずっていた。

「数が多すぎる」

 水鏡でイムラアの分身を作り、水手裏剣の乱れ投げで撃退しても次から次へと機神は現れた。


 押し寄せてくる機神の軍団に、なす統べなく……と、思われた時。

 なぜか海の機神たちは、横一列に並びピタッと攻撃をやめた──まるで何を待っているかのように。

 それでも、並んだ機神たちの中から由良たちの方に進み出て来たのは。

 機神海軍肢団長【惑わしのセイレーン】と、巨大イカ型の機神『クラーケン』

 それと魔魚将軍【カピラ】だった。

 由良は瞬時に察っした、セイレーンとカピラの考えているコトを。

「あたしと紺碧の追撃・ミッドガルト隊のランスロット准佐と、海洋機神のリーダーたちは、一対一の決着をつけるつもりだな……受けて立つ」

 由良は、胸の辺りまでの高さがある岬の断崖に、跳躍して移動するとセフィロト胸部のカバーを開けて、ブースター犬のワタツミを外に出して言った。


「行って……今まで心の支えになってくれて、ありがとう……ワタツミ、生きて」

 ワタツミは、数回振り返ると駆けて崖から姿を消した。

 由良はわかっていた、ここから先の戦いが、本当の意味での死闘になるコトを。

 由良は苦しそうに空っぽになった、セフィロトの胸を押さえる。

「まだだ……もう少しだけ感情の暴走は待って欲しい」

 由良は悲しそうな目でランスロットが乗艦している、追撃潜水艦【シーサペイント】を見た。

 潜水艦のハッチを開けて顔を覗かせている、クーフー・ランスロットに由良が言った。

「あとは、頼んだ」


 由良の目から感情が暴走した涙が溢れる。刀身が水流の忍者刀を引き抜いた由良は、水のサーフィンボードに乗って魔魚将軍【カピラ】に向かって、波しぶきを上げて突進する──セフィロト・イムラア。


 海中から次々と飛び出してきて、由良に襲いかかるメタリック色をした、等身のカッパ型機神群。

 由良は次々と寸断する。

 その中の一体の首に、レプリカの軍隊認識票〔ドッグタグ〕がついていたコトに由良は気がついていなかった。


 由良の体から発射された水の弾丸が、カピラに命中して穴が開く。

 カピラのクリアー頭部パーツに亡くなった当時の年齢の母親の顔が浮かび上がり、優しい笑みを浮かべる母親が由良に向かって言った。

《おまえは……嫌いだ。機神の偽物、人間の生体機神……おまえは、我らの敵》


 今まで由良が抑えていた、機神に対する憎しみの感情が一気に噴き出す。

「うわあぁぁぁ!! お母さん! お父さん!」

 クリアーパーツに浮かび出る母親の顔と、交代に浮かぶ父親の優しい笑顔に向かって激しく、忍者刀を繰り返して振り下ろす由良。

「この! この! この! 機神死ね! くたばれぇ機神!」

 由良の顔は笑顔と涙が入り交じった、複雑な表情をしていた。

「お父さんを返せ! お母さんを返せ!」

 カピラのクリアーパーツ内部が、赤く染まり魔魚将軍は機能を停止した。

 同時にカピラの尾と合体していた、鋭い円錐形の槍巻き貝の殻を持つ、古代貝型の機神がカピラの体から離れ飛び出して、由良の体を貫く。

「がはっ!?」

 由良の体は機神に貫かれたまま、大きく仰け反ると、海中へと沈んでいった。


 海の底へと沈んでいく由良を、クーフー・ランスロットは助けるコトができなかった……なぜなら、追撃潜水艦【シーサペイント】の乗員全員がセイレーンの眠りの歌声で眠らされ、反撃できない状態に陥っていた。

 眠りの棺と化した、 シーサペイントに巨大な触腕を絡めてギシギシと締めつけていく機神クラーケンと、シーサペイントを後方から狙い大口を開ける巨鯨型の機神【レヴィアタン】


 片足にナイフを突き刺して、なんとかセイレーンの眠りの歌声に耐えて、意識を保っているランスロットが少しだけ微笑んでセイレーンに向かって言った。

「さらばだ……人魚の機神姫さま、海の泡になって消えろ……効力は三十分で環境に無害な液体に変わるが、それだけあれば機神を溶かすには十分だろう」

【シーサペイント】が、触手腕の締めつけで真っ二つに裂ける。同時にシーサーペイント内に積まれていたタンクから、海中に出た赤い液体が広がる。

 その対機神用の赤い液体に。触れた機神の体が溶けはじめた。

 セイレーンの体も機神に改造された部分が溶けていく。

「あぁぁ……王子さま」

 半分溶けた機神と、裂けたシーサペイントは海底に沈んでいった。

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