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機神惑星セフィロト ~機神人機の乙女は未来を捨てて人類を守る~  作者: 楠本恵士
第一章【アポカリプティック・サウンド】
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第二話『機神襲来』

 メタトロンが姿を潜めてから数年後──と、ある空軍隊の練習空域。

 練習機に初めて一人で搭乗した、航空女性隊員の『弁財天 アテナ』の所属する隊は未知の脅威と遭遇していた。

 教官の声がコックピットで操縦 操を握るアテナのヘルメット内に響く。

《編隊を維持しろ! バラバラになるな!》

 アテナたちが遭遇しているのは、鷲型をした未知の飛行機体だった。

 軍用機より巨大でありながら、機動力に優れ、大空を信じられないスピードで縦横無尽に飛び回ってアテナたちの練習機を翻弄していた……まるで、からかっているかのように。

(信じられない、あの大きさでどうやって、急旋回や急降下ができるの……まるで機械の鳥)


 謎の機体が、急接近してきてアテナ機の横を接触ギリギリの平行飛行をしてきた時───アテナは、機体にコックピットが見当たらないコトに気づく。

 そればかりか、空軍将校帽子を被った鷲型の飛行機体は、横目でアテナの方を見てクチバシの端を上昇させて嘲笑った。

(コックピットはどこ? 内部コックピットの最新鋭機なの?今、こっちを見て笑った……なんなのコレ?)

 鷲型の飛行機体は、練習機の編隊を掻き乱すように飛行する。それはまるで、猛禽類が小鳥の群を弄んでいるかのようだった。

 武器を搭載していない練習機は次々と、互いに衝突したり、バランスを失い失速落下していく。

 最後に残ったのはアテナの機体と、教官機だけだった。教官の声が聞こえてきた。


《アテナ、お前だけでも逃げろ! オレが囮になってヤツを引きつけている間に、この空域からできるだけ離れろ!》

「教官一人を置いては行けません! あたしも、あの怪物に……」

《これは教官命令だ! おまえは基地へ生還して、見たコトを伝えろ! 生きろ》

 平行飛行していた教官機のコックピットで、教官がアテナに向けて「行け」と指で指示を出すのが見えた。

 第一線を退いて若手の育成に力を注いできた、空の男にはわかっていた……あの鷲のような怪物がアテナの高度な操縦技能を認め、メッセンジャーとして弁財天アテナを選んだというコトに。

《化け物! オレについてこい!》

 大きく旋回した教官機の後を、 機神空軍師団長【テンペスト】が追う。

「教官!」

 黒雲の中へと消える、教官機体と孤高の荒鷲テンペスト。

 数分後に雲の中で、閃光が光り爆発音が聞こえた。

「そんな……教官」

 アテナは涙を拭くコトも無く、空軍基地へと生還して空で遭遇した飛行機神の存在を伝えた。


 ◆◆◆◆◆◆


 と、ある海域──海軍所属の外洋哨戒潜水艦が、受信したSOS信号の発信海溝上に到着した時……ソナーに映っていたのは、SOS信号を発信した巡洋攻撃型原子力潜水艦の艦影と、その後ろから近づいてくる巨大な魚影だった。

 哨戒潜水艦に乗っていた新人隊員の『クーフー・ランスロット』は 、原子力潜水艦から発信され続ける隊員の悲鳴に近い声を耳にしていた。


《緊急事態発生! 超巨大な謎の物体に追われている! 魚雷を数発命中させたが、無傷で追ってくる……うわぁぁぁ!》

 ソナーの映像が解析処理されたモニターには、原子力潜水艦の三倍以上あるクジラのようなモノが、ゆっくりと後方から近づいていく映像が映し出されていた。

 クーフー・ランスロットは首をかしげる。

(シロナガスクジラにしては、でかすぎる……いったい、なにが海溝に?)

 やがて、原子力潜水艦に追いついた謎の影が潜水艦の後部に接触した時……隊員の絶望的な悲鳴が聞こえてきた。

《食べられている? 原子力潜水艦が丸ごと飲み込まれている! 助けてくれ死にたくない! 誰か!》

 武器の類いは、ほとんど装備していない哨戒潜水艦には、どうするコトもできなかった。

 艦長のつぶやき声が聞こえた。

「我々の潜水艦の性能では、あの深い海溝までは潜れない……ここで見ているしかない」

 その時、ソナーを見ていた隊員が蒼白の顔で叫んだ。

「原子力潜水艦を飲み込んだ謎の物体、こちらに向かって浮上を開始しました!」

「緊急浮上! この海域から離脱しろ! 早く!」

 浮上する哨戒潜水艦、 漸深層から太陽光が届く中深層に浮上した潜水艦の耐圧シャッターが開き丸窓から海中が見えた。

 その時、ランスロットは見た。

 丸窓の外から潜水艦内を覗き込んでいる、巨大なイカ型機神『クラーケン』の目を。

「うわぁぁぁ!」


 直後に潜水艦が大きく揺れ、機神クラーケンに絡みつかれた潜水艦の軋む音と、亀裂からの浸水に警報音と緊急事態を知らせる赤色ランプが点滅する。

 艦内は瞬く間に海水に満たされ。潜水艦はフランスパンを真っ二つに折るように、クラーケンの触手で折られ残骸は海底へと沈んでいった。

 フランスパンから飛び出したピーナッツ粒のような、潜水艦の乗組員たちは救命胴衣を着用していたランスロットを含め、海中へと放り出される。

 全員が救命胴衣〔ライフジャケット〕の浮力で、日差しが眩しい穏やかな海面へと浮上する。

 海面に浮かんで一瞬安堵した、ランスロットはさらに恐怖の光景を見た。

 海面が盛り上がるように現れた、イカ型機神クラーケン……その背後に現れた原子力潜水艦を飲み込んだ、島のように巨大なクジラ型機神『レヴィアタン』が海水をしたたらせて浮上した姿を。


 さらにクラーケンの菱形触手の上に、横座りをして海軍将校の帽子を被り。

 上半身だけ軍服を着て微笑んでいる、下半身が銀色の機械魚体の美少女人魚の姿をランスロットは見た。

 クラーケンの菱形触手の上で、微笑み座っている機神海軍師団長【惑わしのセイレーン】が、無言で海面に浮かんでいる潜水艦乗組員たちを指差すと。

 海中から機械のサメの体に機械の触手アームが付いた海の機神が現れ、次々と乗組員を海中へと引きずり込みはじめた。


「うわぁ! ぎゃあぁ、ごぼぁ!」

「ひっ! た、助けて……ごぼっ」

 潜水艦の上官や艦長も、サメ型機神に海中に引っぱり込まれて消えた。

 ランスロットを除く仲間が全員、海に沈むとセイレーンが言った。

「あなたは、王子さまのような整った顔立ちなので助けてあげます……救援信号を発信したので、人間の船があなたを救助することでしょう───人間に海で見た機神の恐怖を伝えなさい、そして我ら海の機神を畏怖しなさい」

 そう言い残すと海の機神は海中に消えた、救命胴衣で海面に浮かぶランスロットは激しい屈辱を感じた。


 ◆◆◆◆◆◆


 と、ある密林──陸軍に所属する『円騎堂 タケル』の班はサバイバル訓練中のジャングルで孤立していた。

「誰か応答してくれ! いったい何があった! A班! B班! C班!」

 訓練開始、数十分後にジャングル全体をスキャンしているような緑色の光りの筋が、植物と生物を区別走査するように通過していった。

 緑色の光りの筋が通過した植物はシールドでもされているように枝を折るコトも、ナイフで傷つけるコトもできなくなった。

 足元の雑草さえも、踏みつけても強度がある柔軟な植物に変わり。隊員の一人が試しにライターの火を近かづけてみても、燃やすコトも焦がすコトもできなかった。

 タケルの通信機には分散してサバイバル訓練をしている別班からの連絡が、数分前から続いて届いていた。

《こちら A班、ジャングルの中に何かがいる! 樹と樹の枝の間を渡り跳ねている! いったい何だアレは? ひっ、獣の女が!? ケモノ耳のコスプレ女がなぜジャングルに? うわぁぁぁ!》

《こちらB班! 未知の生物と遭遇中! 実弾装備はしていないので攻撃できない! 前方に緑色をした宇宙人がこちらをじっと見ている! ぎゃあぁぁぁ!》

《C班! 顔が! でかい顔がこちらに近づいてくる! うわぁぁぁぁ!》

 通信機を通して聞こえてくる、断末魔の絶叫や骨が砕ける男、爆音も聞こえた。

 タケルは大柄な体躯で、ジャングルの隙間から覗く空を仰ぎ見た。

(いったい何が、このジャングルで起こっているんだ?)

 ケモノ耳のコスプレ女、緑色の宇宙人、でかい顔……でかい顔と遭遇したらしい班の通信には、戦車が近づいてくるような無限軌道の軋む音が含まれていた。

(あの戦車の無限軌道音はいったい? こんな道も無く密集したジャングルの中に戦車が入ってこれるはずは?)

 タケルがそう思った時──近づいてくる無限軌道の音が聞こえ、タケルの疑問のひとつが解決した。

 現れたのは陸軍将校の帽子を被った銀色の人面ロボットだった。顔にビスが打ち込まれた二メートルほどの人面ロボットが小型の戦車に乗っていた。


 その姿はまるで、顔の下に無限軌道が付いているようだった、タケルの班の前方、二十メートルくらいの位置に停まった顔面戦車から機械人面が降りる。

 顔に機械の手足が生えているような、機神陸軍師団長【ガンメンダー】は数歩進み、足元に咲いていた花に気付き、踏みつける前に浮かせた足を花の上からどけて言った。


「おっと、危うくお花を踏みつけちまうところだったぜ───危ねぇ危ねぇ、命は大事にしねぇとな」

 タケルは見た。ガンメンダーの後方に小火器〔アサルトライフル〕を持って整列した、機神兵士たちが幽霊が実体化するように現れたのを。

 軍隊ヘルメットを被り、光学迷彩服を着た機神兵士たちの顔はドクロ顔だった。


 タケルは不気味な機械の兵士と、多少滑稽な姿のガンメンダーを凝視する。

(なんだ、コイツら?)

 タケルがそう思って見ていると、今度は樹の枝を飛び渡り猫科のケモノ耳と尻尾を生やした十七歳前後のコスプレ少女が現れ、ガンメンダーの近くに着地して言った。

「あたしの方の人間は片づいたよ、残るは目の前にいる人間たちだけ」

 そう言って少女は、前腕に装着しているように生えた武具のような鋭い金属爪を舐めた──三枚の刃物爪と少女の口元は血に染まっている。

 この少女が人間では無いコトは、金属的な色の舌と片方の目が大小の歯車を組み合わせた歯車眼であるコトからわかった。

 ガンメンダーが、コスプレ少女に向かって愚痴をこぼしているような口調で言う。

「まったく、人間どもがこんな自然の中で訓練なんてしゃがるから手間がかかる……砂漠とかでの演習だったら、オレの陸軍師団だけで十分だったんだけれどな……人間どもの演習場に機神が奇襲ってのはダメなのか?」


 機神天國恐獣軍団【恐獣将軍・マンティコア】の従者でメタトロンのメッセンジャーでもあるヒューマノイド少女『マシン・バンテーラ』が言った。

「それをやったら、本格的な宣戦布告になっちゃうじゃない──今は機神の存在と畏怖を人間どもに知らしめるだけ、機神大神さまが定めた『審判の日』にはまだ早い……空軍師団長と海軍師団長は任務を成功させたよ」

「機神大神さまの、お考えはオレには良く理解できねぇな」

 ガンメンダーとバンテーラが会話をしていると、今度は地面の中から緑色の宇宙人が現れた……小学生くらいの背丈でアーモンドのような黒目、頭頂には赤い花が咲いている。

 (すぼ)んだ口の先にある小さな花をモグモグと動かしながら、機神宇宙人が言った。

「向こうノ人間どもは喰っテ片付いタ……血肉ト骨は、植物のいい肥料になル」

 ガンメンダーが、緑色の宇宙人機神に言った。

「手間をかけてすまねぇな、人間どもがジャングルで訓練なんてやりやがるから」

「植物ヲ守るノは、我ラ妖花軍団ノ役目……気にするナ」

 そう言いながら機神天國、妖花将軍【ガルラウネ】は頭花のオシベを揺らす。 


 でか顔、ケモノ耳少女、緑色の宇宙人……ガンメンダーが、訓練中の誤射を防ぐために実弾装備がされていない、空包アサルトライフルを持ったタケル班の兵士たちを観察しながらバンテーラに訊ねる。

「こいつらでジャングルに散らばっていた人間は最後だが、全滅させたらマズイんだよな……目撃者を残さないと、どいつを残す?」

「選び出しは師団長に任せる」

「そうかい、それじゃあ、あそこの眼鏡かけた弱っちそうなヤツと。ガタイがいいリーダーっぽい雰囲気のヤツだ」

 ガンメンダーから赤いポインター光りが飛び、タケルとタケルの隣にいた眼鏡隊員の額に照射される。

「残りの人間は全員───始末だ」

 機神兵士たちのアサルトライフルから、光りの針のようなモノが発射されて、無数の光る針に貫かれた人間の体がブスッブスッに崩れる。

 血が吹き飛び、肉がミンチに変わる。祈る間もなく即死した人間兵士たちの肉塊をガルラウネの体から伸びてきた先端が食肉植物のような二本の蔦が貪る。

「うまイ、うまイ、虫や動物は植物と共生していル……人間ハ植物と共生していなイ、だから喰って肥料にすル」

 骨を砕く音が、食肉植物のハエジゴクに酷似した機械口から聞こえる。

 タケルの隣で腰が抜けたように座り込んでいた眼鏡の人間兵士が、仲間の骨が砕かれる音に恐怖して。

 銃身の先端に バネット〔銃剣〕を装着すると、立ち上がり悲鳴に近い絶叫をしながら空包を発砲してガンメンダーに向かって突進する。


「ひぃぃぃぃ!!」

 ガンメンダーに向かって突き出した銃剣は、ガンメンダーの銀色の機械体に弾かれた──ガンメンダーが、片手で眼鏡兵士の横顔を殴る。

「ふんむっ!」

 機械の腕で顔を強打された兵士は、白眼を剥いて倒れ──ガンメンダーが倒れた兵士の頭に片足を乗せて地面に押さえつける。

 兵士の頭から頭蓋骨が軋む音が聞こえ。

割れた眼鏡をした兵士の体がガンメンダーの足の下でビクッビクッと痙攣する。

 ガンメンダーがバンテーラと会話をする。

「ところで、審判の第一御使いに選ばれた水クモ型の機神はどうしている?」

「気持ちが昂っているので、機神大神さまが審判の日の前に軽く エキシビション進撃させて、落ち着かせるって言っているよ」

「ふ~ん、この足の下に頭押さえた人間どうする? もうメッセンジャーとしての使い道無いだろ」

「潰しちゃえ」

 ガンメンダーが足に力を込めると、肥料にするために畑に放置されたカボチャかスイカのように割れた───機神天國の機神たちにとって人間の存在は不必要な存在で、排除するコトになんのためらいも無かった。


 ガンメンダーが、タケルに言った。

「ここで見たコトを生還して人間に伝えろ……オレたち機神に恐怖しろ、審判の日まで、せいぜい人生を楽しめ……アハハハッ」

 哄笑しながら機神たちはジャングルに消えると。

 一人、惨殺現場に残されたタケルは恐怖に体を小刻みに震わせた。

読み返してみると、文字詰まりすぎで全体的に黒っぽい……書き方下手、説明ではなく描写をすることを心がければ良かった……気持ち萎えるノイローゼになりそうです

作品の性質上仕方がないんですが、今どきこんな文字ぎっしり系は敬遠されるのは必至なのは理解している

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