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第6話「そよ風が頬を切り裂く時」Nー

ーー6月18日?時?分ーー


 目の前に広がる真緑の空間はまるでティタノボアがとぐろを巻いたように大きく質量感を持って存在していた。


 視界を覆い尽くす数多の木々のその姿は止まることのないマグロの大群のように、常にざわめきその内に胎動する何かを醸し出していた。


 あたりに漂う気は恐ろしく重々しく、呼吸を遮るほどに存在感があった。まるでこの大きな緑の空間が一個体として生きているように、俺の視界に映った。


______________________________________

 

 俺は恐る恐るその真緑の空間に足を踏み入れた。


 裏山の土のように栄養を含んでいそうな土は俺の足をゆっくりと大地に包み込むように沈めた。

 背中に吹く清涼なそよ風は俺が先に行くことを急かすようだった。



 なぜ、俺はこの地に足を踏み入れているのだろう。



 答えはさほど難しくない。

 

 変わらない灰色の日々が少しでも変わるのではないかという一抹の希望を俺は携えており、この非日常をそのまま具現化したこの空間はまるで俺のそんな思いを満たすために用意された存在なのだと錯覚していたからである。



 しかし、実はこの空間は俺みたいな非日常を求める人間を呼び込みそして殺すための空間なのかもしれない。けれども俺はそんな考えとは全く違うベクトルでものを考えていた。




 孤立した人間である俺は人一倍自己保身にかけては優れているといえる。しかしながら俺は今得体のしれない空間にいる。



 なぜそんな事をしているのか。



 今を変えたい。

 という思いの外に、今の俺は幼い頃に

 久しく失った期待という衝動にかられていたからである。



 しかし俺自身そのことについて気づくことはなかった。


 ただ無意識という海の底でただ知られざるように期待という感情は眠っていたのだ。

 

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