第三話「独白」N
2話から突然飛び出しました。
ーー6月18日午前8時10分ーー
能登まさし。
それが俺の名前だ。
この俺という自己を表すうえでのごく平凡な記号である。
時々自分が何者かわからなくなる。自分という存在がどのように定義されているのかも。
本当の自分とは何者なのかも。
そう思わされたのは先日のカラスとの邂逅によるものだろう。兎にも角にも日常という常に同じ生活を強いられるこの社会の下で俺はホコリのように存在している。
ホコリのように俺の存在は醜くそしてクラス内ではホコリらしく、もわもわと浮いている。もう天井まで浮いてそのまま教室の一部になってしまうのではないだろうか。
俺は自分が教室の膿になることを危惧し教室を見渡す。
何を考えているのか全く知り得ない生徒たちと彼らに座られ使われているごく平凡な椅子と机。
ほんと俺はこの学校に入学できて嬉しいよ。
ほんと誇りに思う。
ホコリである俺はそう思った。
今日も変わらない日々。そんな日々は放課後の帰り道という「青春の寄り道」で完全に消え去った。
世界が一瞬にして変わるその時。
人間は恐ろしいほどに愚かで、そんな変わり果てた現実を見ようとしない人間の目にはつくづく吐き気がする。
ここで吐いてやろうか。
ビニール袋を持ってこなかった俺に俺は反吐を吐きそして、代わりにこの世界には雄叫びという雄叫びをあげた。
俺はつくづく無力だ。変化を認められずそれでも変化を求める。
そんな矛盾した俺自体をもそれを俺だと認めようとせず、常に自己の本物にたいして疑問を感じている。
つくづく馬鹿であり、つくづくアホだ。
一般人はそんな俺をこう蔑称するだろう。
「あいつの頭はよくわからない。」
と。とにかく俺は放課後の帰り道。
夕日の明かりが背中を貫くその時間帯に俺はここを、この世界のあり方を疑った。
この言葉だけは本物である。
それ以外が本物である試しは無いが。
さあ見せてくれ、この世界の本物を。