表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/25

第二十二話「思考の海は枯れ果てた。」€

 ーー?年?月?日?時?分ーー


 世界の因果に捨てられて、孤独の海で、ただ一人、少年は再び、目覚めた。


 荒れ狂う海の上に漂う小舟の甲板の上。


 太陽は暗い七人の雲によって遮られ、少年の頬を照らすことはない。


 外界と拒絶され、海の上で、たった一人の少年は、呆然とただ、そこの見えない瞳で、そこの見えない深海を見つめていた。


 「僕は、一体何がしたかったのだろう。」


 「なんのために船を漕いでいたのだろう。」


 この思考の海を漕いでいた動機はすでに消え去っていた。


 「僕は、ただ、彼女を助けたかっただけなんだ。」


 「彼女って、、、。誰のことだっけ。」


 「あぁ。全部忘れちゃったよ。記憶はもうすでにないんだね。」


 「君は成功したのかな。今、あなたは喜んでいるの?」


 「けれど、それは、本当に嬉しいことなのかな。」


 「僕だったら、そんなことできない。そんな自分を失ってまで、愛するひとのために、何かをするなんて。」


 「でも、君が望むならいいよ。この世界の僕は、受け止めるしかできないんだから。」


 「でも、この世界じゃない、あの世界の僕なら、君のそんな姿は、認めないよ。」


 「君の涙でぐっしょりなその横顔を、無視なんてできない。」


 「あの世界の僕が止める。僕の共有された、『信条』にかけて。君だけは守る。」


 「あの世界の僕は、捻くれて捻くれて、人を愛せなくなった。」


 「だから、また君を愛せるようになる。たとえ、全てが紛い物でも、きっと僕は君を見つける。」


 「僕は、失敗したよ。あの時、君を助けられなかった。けれど、あの世界にいる僕は、違う。」


 「助けてくれるよ。きっと、今の君を、ね。」


 「だから、待っていてほしい。あの世界の僕は必ず、君という存在、全てを助けてくれるはずだから。」


 少年は、小舟に乗って、暗い雲に隠された、太陽の面影を必死に目を凝らして、見つめていた。


 この世界、この僕だけの世界は、もうすぐ終わる。だけど、それで終わりじゃない。


 終わりの後には、始まりがある。


 その始まりの世界にたとえ僕がいなくても、違う僕がいるだろうから。


 「僕の出番はこれで終わり。ただ、船を漕いでいただけだけど、楽しかったよ。」


 弱々しい木製の小舟は、音を立てずに、次第に瓦解して、海という思考の世界の一部となった。


 その少年の生き様は、その少年の概念に同期し、一つの僕として、溶け込んだ。


 まもなく、この海は、枯れ果てる。


 そんな、終末世界の成れの果て。それでも、その少年は、笑って消え去った。


 まるで、自分の願いを叶えられたような。


 まるで、愛する人を救えたような。


 そんな少年の最期の笑顔は、『次の僕に任せた』とでも言わんばかりであった。

 

 

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ