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第十八話「戦争の火蓋」F

 ーー6月22日7時5分ーー


 6月22日俺は行動に出た。部屋の壁に貼られたカレンダーを流しみてふと考える。今日が6月22日ならタイムリミットは後1ヶ月か、と。

 俺は昨日、全てを理解した。元の記憶は持っておらず今はただ予測でしかないが、それでもその予測は正確であると思っている。


 俺が気づいた真実。その今は推測でしかない世界の正体について語ろうと思う。


___________________________________________________

 単刀直入にいう、この世界はおかしい。


 または俺の記憶がおかしい。


 俺の記憶領域に誰かが介入している。


 そんなふうに俺は今、予測している。


 俺は捻くれている。だが捻くれているという状態は日が経つごとに薄れていく感触がある。まるで塩素を浸した花弁の色素が抜けていくような。


 そして俺の記憶には確実に矛盾が生じる。

 昨日気づいたことでは、俺のこの捻くれている性格や物の捉え方などから発現する本来あるべき姿と、今の現状はまるっきり違うということ。

 部活や勉強は大嫌い、青春なんか黄春だと思うようなやつが、部活でも生徒会でも結果を残し、クラスに慕われ青春を謳歌する人生を歩むはずがない。

 必ず誰かが何かを介入しているのだと以上のことから考えた。


 その介入の対象が、俺やクラス全員の記憶領域かもしれない。

 

 俺は少し前に『記憶とは、過去に起きた出来事のうち、それぞれ個人が主観的にその出来事を捉えた物であり、人によって記憶の中身は差異がある』と述べたことがある。

 俺はその考えが今、大いに役に立つと考えた。


 おそらく何者かが大勢の記憶領域を改変しているのである。


_________________________________________________

 

 ここからは全て仮説であり、俺の脳内の妄想だと思って聞いてほしい。


 まず一つ。何者かが強大な力で大勢の記憶領域に介入している。


 次に二つ。彼らの目的は定かではないが、俺にプラスの方向で介入していること。

 

 そして三つ。俺はそいつらに心の中で宣戦布告したこと。


 以上だ。


 彼らが俺の記憶に介入しているのならば俺の心の中での決意も知っているはずである。そして彼らは俺の捻くれた思考を更生しようとしていルはずだ。クラスでの孤立していた俺を、クラスの人気者に仕立て上げることによって。


 これが俺の推測の全貌だ。しかしこれが事実であったなら、介入者は現代技術を遥かに超えた神ではないか。


 本当にあり得るのか。しかし捻くれている俺は常識という空想に騙されやしない。介入しているなんて不可能なことだ。ありえない。だからそんなものは存在しない。それはみんなが口々にいう常識という物であろう。

 

 そういった常識を俺たちの脳に作り出し、介入者が本当の事実から俺たちを背けさせようと仕向けているのだとしたら、より一層この仮説は信憑性を得る。


 これはあいつらの仕業だと。


 今まで多くの推測を投げかけてきた。しかし、いやだからこそか、これだけ推測したせいで最大の疑問点が新たに生まれてしまった。いわゆる矛盾点だ。オカルトで言うオーパーツ。


 それは『なぜ推測が許されている?』だ。


 俺の脳に介入できるなら逆らう真似を禁じるために、捻くれた思考も、違和感を感じるその思いも確実に消す。 そうすれば俺は完全に逆らうことをせず簡単に俺を更生できるはずだ。


 だから俺は二つのことを考える。


 まず、『介入者は全能ではなく、記憶領域にしか干渉できない』ということ。つまり俺の思考はイジることができないという意味だ。



 もう一つは『あえて泳がすことで、ひねくれの更生以外の何かの結果を得たい』と言う考えだろう。後者なら俺は全て泳がされていることになる。


 果たしてどちらが正解か。はたまた新たな三つ目が正解なのか。


 わからない。

 

 難しすぎる。

 

 なんせ証拠も前提も全く存在しない。ないものから全てを作り出している状態に過ぎないのだ。


 はあぁぁぁ。


 俺は思考の海が干上がるほどに考え込みその熱気は脳の思考世界を飛び出して現実世界に干渉した。そう、頭から湯気が出ると言う意味だ。


 玄関に置かれたくすんで原色が見えない運動シューズを履いた。朝から脳をフルに動かして気だるげな表情をした俺は外の世界に飛び出した。


___________________________________________________


 俺は今日6月22日。多くの推測をあまり頭のよろしくないこの脳みそで導き出した。

 これが真である保証はどこにもない。だが正解に近づいていることを望みながら自転車に乗って疑念を唱えた。


 「介入者は何がしたいんだ。」



 

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