トライアングルレッスンD 〜待ち合わせ〜
『小説家になろうラジオ』の看板企画、『トライアングルレッスンD』で朗読していただいた作品です。
「まだあと20分ある…。早く着きすぎたかな?」
今日はヒロシと私が付き合って初めてのデート。幼馴染で家が近所だからヒロシは「迎えに行こうか?」って言ってくれたけど、「初めてだから、デートらしく外で待ち合わせしたい!」とワガママ言って、駅前の時計台の下で待ち合わせをすることになった。
緊張と嬉しさで何度も時計を見たり、ショップのウィンドウに映る自分の姿を何度も確認する。
9月になり風が少し心地よくなったとはいえ、記録的な暑さはまだ続いている。
汗で前髪うねったりしてないかな?
マスカラやリップが取れてないかな?
服…変じゃないかな?
昨日の夜まで全然服装が決まらず、タクミに泣きついて太鼓判もらったコーディネートだけど…やはりヒロシに褒めてもらうまではどこか自信が持てない。
するとウィンドウ越しに見覚えのある姿がこちらに向かって歩いてくる。ヒロシとすぐ気づいたけれど、緊張して振り向くことができない。
ヒロシも私に気付きニコッと微笑み真後ろに立ち
「お待たせ。待った?」
と囁いた。
その声は今まで聞いたことのないくらい甘く、私の心臓は口から飛び出そうなほど跳ね上がった。
「うっ、ううん。今来たとこ!」
ヒロシの方を向き、改めてヒロシをちゃんと見た。幼馴染だから何度も私服など見慣れてるはずなのに、『彼氏』になったヒロシは一段とカッコよく見えた。その姿に見惚れているとヒロシが小さい声で「…やっべぇ」と呟いた。
「んっ?」と答えるとヒロシは
「ユイコの私服なんか見慣れてるはずなのに…。
今日は一段とその…いいなと思って…」
顔を真っ赤にしながら言ったヒロシにつられて私も赤くなる。
「…じゃあ、行こっか。手…繋いでもいい?」
そう言って差し出されたヒロシの手をキュッと握る。
少し汗ばんだヒロシの手が、記録的な暑さのせいだけではないと感じていた。