マカロン②
「おいしい。」
さくっとしてふわっとして。私の問題も、こんなふうにさくっとふわっと解決すればいいのに。
「あんまりお薬飲むの好きじゃないんだ。」
診察代も結構かかるし。
「私さ、脳の磁気治療もしてるんだよね。これが結構高くてさ、ボーナス1回分ぐらいするわけ。社会に出てからずっと定期的に心療内科に通ってて、これじゃ凄くお金かかるなって思って、根本的に直したくて始めたんだけど。でも、夫や子どもたちが静かにしてくれたら、治療なんてしなくて済んだのになって思うの。このお金も時間もなんで私が払わなきゃいけないんだろうって。」
なんで私のせいじゃないのに、私が代償を支払わなければならないのだろう。
「それは、悔しいな。」
「みんな私のことなんてどうでもいいと思ってるのよ。」
魔王様は私を優しく抱きとめ、頭を撫でてくれた。
「実に理不尽だ。お前のせいではない。」
「うん。」
私は泣きながら、魔王様の背中に手を回した。不思議な感触がした。
「だがどうだろう、未来への投資と考えてみては?」
「未来への、投資?」
「そうだ。その治療が終われば、今よりもずっと元気に快適に暮らせるのだろう?」
「多分。」
脳の治療が必ず成功すると言う保証は無い。ただ90%以上が人が効果を感じているようだ。
「だからといって、湧き上がる感情を否定する必要は無い。お前の経験や感情は常に尊重されるべきだ。お前は自分の気持ちを大切にしていい。」
魔王様は私の口にもう一つ、ピンクのマカロンを入れた。