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「どうしたの、ママ?」
なんかしんどい。朝は魔王様もいないし。夫も出て行った後では、癒される相手もいない。
ピピピ ピピピ
台所からタイマーの音が聞こえてくる。娘の行く時間だ。部屋から出ていくのを渋っていると、娘が階段を降りていく音がした。つられるように階下に降りていくと、私がやってきたことに振り返りもせずに、玄関でリュックを背負い、帽子をかぶっていた。玄関のドアが開いたままだったのは、私への配慮か、単に開けっぱなしだったのか。
「どうしたの、ママ?」
元気のなさそうな私に声をかけた娘の笑顔が明るく、かわいくて、癒された。
「なんかしんどいの。原因はないんだけど。」
「そっか。」
ついこの間まで、着替えも、支度も何もかも手伝ってやらなければならなかったのに。娘を見送りながらどんどんしんどくなってきた。まずい。薬を飲もう。しばらく飲んでいなかったけど。そういえば私から魔王様を呼ぶ手段はない、ないというか聞いたことがない。