5話
「おーい、パッパが無事帰ったぞー」
「あなた!」「父上!」
「おー、よしよし。ラグナ久しぶりだな。ちょっと大きくなったな!」
「ちちうえー!」
父アトスがしゃがみ込み、勢いよく抱き上げてくれる。
「ほーれほれほれ、高いだろー。パッパは高いんだぞー」
「キャッキャッ!」
身体に引っ張られてるのもあるけど純粋に高い所からの景色は楽しい。
何より父に久しぶりに会えたのが心から嬉しい。
「サラも久しぶりだな。家庭教師を受けてくれてありがとう」
「こちらこそ。ラグナは凄まじいですね…私も改めて学びがある毎日です」
「おまえにそこまで言わせんの!?うちの子すげーな」
「いやぁ、天才っていますよねぇ…」
「ほら、俺も天才だし!流石俺達の息子だな、リリーナ」
「久しぶりに会ったからってはしゃいじゃって。お帰りなさい。あなた」
× × × ×
俺の父のアトスは冒険者だ。母のリリーナや仲間ともにパーティを組んで
様々な難題を解決してきたらしい。
母は今は街でできる仕事に専念しているが父は一家の大黒柱だ。
俺達が産まれる前は街を拠点に活動することが多くなったが
現在では主に長期の仕事で家を空けることが多い。
危険な仕事でたんまりの拘束。
そう、何よりお金が良いのだ。
うちには妹もいるし、家事手伝いをしているメリッサもいる。
子育てというのはお金がかかるのだ。
「ふぃー、いやぁ今回の仕事もくたびれたくたびれた。」
「冬の間はいつも通り家でゆっくり過ごす!できる男はメリハリつけなきゃな!メリッサ、お酒頼む」
家事手伝いのメリッサが部屋を離れ、お酒を取りに行く。
「あなた、サラさんもいるのに早速お酒ですか。仕方の無い男ですねぇ」
「ほらほら、無事を祝ってだな」
「はいはい…」
とまぁ、やるときはやる父なのだがオフはほんとうにぐうたらだ。
メリッサがお酒をアトスに渡し、父は早速飲み始める。
「はー、家で飲む酒は格別にうまい」
リビングルームでくつろぐ父に言う
「ちちうえー!ラグナ魔術使えるようになったよ」
「ウォウ、マジか!流石だなラグナ!とこでサラよう。どこまで教えたんだ?」
「基礎魔術は一通り終わりましたよ。この三ヶ月で」
「流石に早すぎるだろー」
「ラグナできるよー。ほらっ」
右手を掲げ。風の魔術を使い心地よい空気を流す。
そして小さな火の魔術を使い、水の魔術でそれを消す。
説明としては、3属性つかえば十分だろう。
「マジか…」
「いやー、ほんと飲み込みが早いですね」
「じゃ、これはできるか!?」
真剣な面持ちで、右手をコップの上に置き、魔力を込める。
カラン、と音がした。
「氷の魔術だ。こうすると…酒が冷えてうまくなる!」
おおお、氷だ!これは便利だ!
そう思って集中して父の事を見ているとサラがつぶやく。
「ほんとどうでもいいところで器用ですねぇ」
「これって難しいの?」
「あなたのお父上のように簡単にこなす人もいますが大抵の人はできませんね」
「なんで?」
「氷は自らできている、これは分かりますね」
「うん!」
「水の魔術を使って水を生成してから氷にするのでこれって複合属性なんですよ」
「片方ずつならともかく一度に両方使いこなすのって普通は難しいんですよ」
そっか、確かに両方使うのは試したことが無かった。
「そうなんだー。ラグナもできるかな?」
「もうちょっと勉強をすればできるかもしれませんね。まだ数年かかるとは思いますが」
「えー、そんなにかかるんだー」
「普通の人は10歳頃からようやく魔術を使い始めるのです。ラグナはまだ5歳。十分早いじゃ無いですか」
「身体もまだ小さいんですし、時間をかけてゆっくり学びましょう」
「サラがそういうならそうするー」
ごもっともだ。魔術が使えるようになってはや三ヶ月。とはいえ身体は幼児。無理は禁物だ。
実際サラの教え方は非常に子供向けに考えてくれている。
魔力は使いすぎないよう注意してくれるし、身体を動かすことを取り入れてくれているので
知識としてだけではなく実際に活用できる形で教えてくれる。
おかげさまで夜は早い時間にぐっすりだ。
そうこうやりとりしているうちに眠くなってきた。ウトウトしてくる
「あら、ラグナ。そろそろ眠る時間ね」
「うん…」
こくり、こくりと意識が持って行かれる。
「じゃあ私が連れて行ってあげるわ。アトス様もお酒はほどほどにしてくださいね」
「おうよ。ラグナ、お休みだなー」
「おやすみなさいー」
そうしてサラに連れられ部屋で眠った。