王弟殿下は二度目の叱責をうける
レオンフェルトメインの閑話になります。
「……。」
「…フェルト、殿下!」
「……。」
「レオン、フェルト、で、ん、か!!
いい加減仕事をしてください!
愛しのアルトリア嬢に言いつけますよ!」
ーここは王弟レオンフェルトの執務室。
そこでは、普段真剣な眼差しで書類を読み適切な指示を出し仕事をするレオンフェルトとそれに付き従う部下達の姿が見れるはずなのだが…
今朝は、仕事をしない上司、とそれを叱責する部下の姿がその部屋にはあった。
レオンフェルトの腹心の部下であり、長い付き合いのあるヨハンはその理由を知っていた。
「…?!リア?
リアがどうかしたのかっ?!」
自身の執務机に頭を突っ伏しヨハンの話は流し聞いていたレオンフェルトは「アルトリア嬢」という単語には俊敏に反応した。
「…アルトリア嬢の名前にはすぐに反応するんだな、このヘタレ上司は…」
ヨハンはただただ、怒りを通り越して呆れるしかなかった。
「…っ全く、
愛しの初恋の君ときちんと会話を出来ただけでも凄いと思ったのに…
ちゃっかり結婚まで取り付けてしまった殿下の執着のヤバさはわかりましたが…
た!が!!
今はその気力をここにいらっしゃらないアルトリア嬢ではなく、目の前の仕事にぶつけていただけませんか?
殿下!」
「…そうか、
リアは一旦侯爵家に帰ったんだ…
ああ、早くあの瞳がみたい…
私のリア…
あの可愛い声で「殿下」、
ではなく早くレオンフェルト様っ!
いや…レオン…かな…
まてよ…ここは夫になる身としては…
旦那さ…」
ードゴッ!
王弟殿下、本日2回目となる書類での頭叩き…。
だが、上司を思い切り叩ききったヨハンの顔色にはなんの躊躇も浮かんでいない。
「レオンでも旦那様でも、
あなたでもなんでもいいですから!
仕事をしないこんなヘタレ姿を、
アルトリア嬢が見たらどう思うでしょうね!!
私も見たくないです!
中年男の拗らせた
ヘタレほどめんどくさいものはない…」
「あなた…もありだな。」
レオンフェルトは全く話しを聞く気がないのか…。
一瞬、本気でこの職場を辞する事を考えたヨハンであった。
「…殿下」
また、叱責か?と待ち構えていたレオンフェルトであったがヨハンが声のトーンを落としたことに気づき、顔をあげた。
「大切なアルトリア嬢を、
王家の争い事に巻き込んだのですから…」
「ああ…わかっているさ。
… 必ず幸せにする。」
ロレンツォとアルトリアの婚約破棄は本日中に正式に受諾される手筈になっている。
その噂を聞いた貴族がどう動くかは、いざ蓋を開けてみないとわからない。
ここは「彼女を守り抜いて見せる」
だろうとレオンフェルトの答えをきいたヨハンは思ったが、その力強い返答に
ーまだ、この職を離れずにすみそうだ、と
満足した笑みを浮かべた。
レオンフェルトのイメージが違っていた方がいたらすみません!ヘタヘタ…おやじ。
ヨハンくんもよろしくお願いします!
本日もありがとうございました!




