黒薔薇令嬢はその理由を考える
こ…更新が朝になってしまいました(謝)
ジャンル別日間ランク一位と、ブクマ2000件越えヽ( ̄д ̄;)ノありがとうございます(泣)
ー結婚してくれ。
「えっ……」
その言葉にアルトリアの思考は一時停止のボタンを押されたかのように、固まってしまった。
レオンフェルトは今…
なんと自分に告げたのだろうか…
たしか…アルトリアに自分と結婚してくれと?
ー結婚?
ー誰が?
ー自分が?
ー誰と?
ー王弟殿下と?
アルトリアの頭の中は混乱を極め、少し大袈裟かもしれないが爆発しそうになっていた。先程までのレオンフェルトとのやり取りを思い返し思考を整理しようとするのだが、何故結婚に?となかなか思うように行かない。
ーバコンッ!
と、そんな困惑するアルトリアの目の前で突然鈍い音がした。
「…っ?」
「いきなり、結婚を申し込む男がどこにいますかっ!?
家族揃って馬鹿なんですかっ?
え??
リアが困ってるでしょうが!!」
レオンフェルトへのベルナルドの叱責の叫びもその音に被るのをアルトリアは聞いた。そして、目の前で起き始めたやり取りに全くついていけず、アルトリアは目を点にする。
先程した鈍い音は、レオンフェルトがベルナルドが手にしていた書類で頭を叩かれた音だったようだ。
レオンフェルトはなぜ叩く?と疑問を顔に浮かべながら恨ましげな目を宰相に向けその頭ををさすっている。音が音だっただけに、痛みはそれなりにあったようだ。
そのレオンフェルトの様子を見たアルトリアは父の王族へのこの態度は少しまずいのでは…と顔を青くした。
娘であるアルトリアからして今朝のベルナルドは、い
つもと少し様子が違っていた。
ベルナルドは筆頭侯爵として常に貴族の前では威厳を保ちつつ、且つ礼儀正しい男として通っていた。アルトリアも少しずれたところはあるが、皆の手本として歩む父の背を見て今まで婚約者修行に励んできていた。
それなのに、今の父の行動はどうだろう…
「…おっ、お父様!」
「…殿下。
きちんと説明をされた上リアが承諾をしたらこの話に協力する、と申し上げたはずですか…?」
アルトリアは父にレオンフェルトへの対度を改めるよう促そうとしたが、二人の様子に何か違和感を感じて開きかけた口をつぐむ。
まるで、レオンフェルトがベルナルドに何か弱みを握られており二人の立場が逆転しているようにアルトリアには見えたのだ。
「いや…すまない。
リアを目の前にしたらつい…抑えが…」
「アルトリアッ!」
「…ん!…んんア、アルトリア嬢を目の前したら、我慢ができなかったのだ…
順序を忘れ、宰相閣下との約束を破ってしまったことは申し訳ない。」
アルトリアの読み通り今この現状、やはり二人の立場は逆転しているようだ。
ベルナルドは、レオンフェルトに対し理由はわからないが嫌悪感を抱いているようであるし、怒られているはずのレオンフェルトは逆にどこか嬉しそうだ。
ベルナルドは相変わらずの不機嫌な顔をしていたが、では初めからやり直してください。二度目はありませんから、とレオンフェルトに念を押し話を促す。
ベルナルドの許しが出たレオンフェルトは、わかった、と改めてアルトリアの方へ向き足を進めた。
真面目な色をした瞳と目が合い、アルトリアはドキリとする。
レオンフェルトはアルトリアがいるベッドの横の化粧台に設置されていた椅子を引きだした。
その椅子をアルトリアの方にし向けて腰掛け、体を起こしていたアルトリアと視線の高さを同じにして向かい合った。
先程よりも、近くレオンフェルトのエメラルドの瞳がある。
その距離に昨夜の出来事を思い出して顔を赤らめてしまったアルトリアであったが、同時にこの瞳を見ていると安心する自分もいた。
「アルトリア嬢。」
二人はしばし無言で見つめあっていたが、レオンフェルトが先に口を開く。
「はい、殿下」
「先程のけ、結婚の件なのですが…」
殿下、と柔らかい声でアルトリアと返事をされたレオンフェルトも顔を赤面し「結婚」の頭の文字が詰まる。
「…何か、
複雑な事情がおありなのでしょうか…?」
父ベルナルドの様子を傍観していたアルトリアはこれがただの結婚話でないことを途中から察知していた。
レオンフェルトとは昨日初めて顔を合わせたのである。し、アルトリアは一方的にとはいえ婚約を破棄したばかりの身でありいきなり結婚とは流石にアルトリアも従順にはいとは言えない。
レオンフェルトが自分に一目惚れをしたとも考えられないし、レオンフェルトも数時間で簡単に結婚相手を決めるはずもないだろうから、これは恐らく政略的な理由かもしくは一時的な仮の婚約なのではないかとアルトリアは結論づけた。
憐れなりレオンフェルトー
プロポーズの際レオンフェルトのどこか必死で、だが嬉しそうな表情を見てアルトリアがそう汲み取ってしまったのは、やはりアルトリアが男心に疎かったからだろう。
アルトリアに裏があるのか?と問われたレオンフェルトは少しショックを受けた顔をした。
アルトリアはもうすっかり事情があると思い込み、その美しい顔に問いの表情を浮かべながらレオンフェルトの目を真剣に見つめてくる。
「はあ…
リア…は、 全く、困った子だな…」
ー頭は良いのに、どこか抜けていて…
これ、と決めたら考えを変えず…
美しい見目に、無自覚で…
まあ、 そこが「リアの魅力」なんだけど…
と、レオンフェルトは内心で大変な溜息をついた。
そんなレオンフェルトを見て流石のベルナルドも哀れに思ったのか、私がお話しましょうか、と提案してくる。
そしてまた、無自覚なアルトリアを前に自分が穏やかに話すことが出来ないと判断したレオンフェルトも、その提案に頷くことにしたのだった。
本日もありがとうございました。
当初予定していたレオンフェルトのイケオジ路線完全に潰え…ただのヘタレロリコン疑惑が…
憐れなりレオンフェルト!!!!笑
次話もよろしくお願いします!