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黒薔薇令嬢は今宵手折られる  作者: とらじ。
6/20

黒薔薇令嬢は父と王弟殿下に翻弄される

日間ランク一位、ブクマ四桁ありがとうございます!感謝しかないです。



「…んっ…」



ー寝返りを打つと、頬に柔らかい感触。


そして、ここちよい温かさが目を覚ましかけたアルトリアを眠りに誘う。






ー眠りに?


「…!?」



ガバッ!と勢いよくアルトリアは顔をベッドから上げた。

柔らかく自分を包み込んでいたのは滑らかな肌触りの布団。

なぜ布団の中にと一瞬考えたアルトリアであったがまだ少しぼやけた目で周りを見、そこが昨日レオンフェルトに連れられてきた部屋であると理解した。


昨夜、人前で初めて涙を流したアルトリアはしばしレオンフェルトの胸を借りてしまった。

が、レオンフェルトも背中に手を回してそれに答え優しく温かくアルトリアを包み込んでくれたのだ。




そして…そしてだ。


アルトリアにはそこからの記憶がない。

記憶がない事を考えると、その心地よさと一日の疲労ゆえ淑女としてはあるまじき行為ではあるが、そのままレオンフェルトの胸をかりて眠りについてしまったのであろうとアルトリアは推測した。


もう、レオンフェルトの前で泣いたことも、思わず抱きついてしまったことも、そのまま眠ってしまったことに比べれば軽いことに思える。


アルトリアの顔色は悪くなり、思わず両手を頰に添える。自分で、自分の行動が信じられない。

そして経緯を理解してすっかり冴えてしまった頭で、まず謝罪から…殿下に…と一人考えこんだ。






「…ど、どうしましょう…」





そんなアルトリアの百面相を楽しそうに見つめる男が一人。





「リア、すっかり目は覚めたようだね。」


「おっ…お父様?!


何故、こ…こちらに?!」


アルトリアは突然同じ部屋からした声に驚き、声がした方へ顔を向けた。


そこにいたのは、父でありグランニ王国の宰相でもあるペンドルトン侯爵ベルナルドであった。


先程部屋を見た際は困惑していた故、気が付かなかったようだ。


アルトリアは今日まで夜遊びというものをしたことはない。

ましてや、連絡もせずに外泊などもっての他だ。

アルトリア自身もしたいと望んだこともなかったし、アルトリアの両親も他の貴族よりはほんの少しばかり過保護で愛娘に溺愛する傾倒にあったからだ。

アルトリアが黒い髪が嫌だといえば家族皆が美しい赤毛を黒に染めると言い、アルトリアが熱々のスープで舌を火傷した日には翌日からテーブルに冷製スープが並びだした。真冬にである。


今までの父ベルナルドの自分への接し方を思い出して、アルトリアはこれは何か面倒臭いことになると予感した。

ただでさえレオンフェルトへの対応を考えるのに精一杯であるのに、ベルナルドまで関わられては…と、実の父親ながらアルトリアは少し憂鬱な気分になった。




「お、お父様…!」


「リア、落ち着きなさい。


昨夜の事情は、あの変態王弟…ではなく、

レオンフェルト王弟殿下から全て伺っている。



リアが、あのバカ王子から婚約破棄を一方的に宣言されたことも含めてな。」


ベルナルドの文末に深い怒りを感じ取り、アルトリアはぶるりと肩を震わせた。ここまで怒る父親は今まで見たことがない。


ベルナルドはロレンツォとアルトリアとの結婚を望んでいるようにアルトリアは今まで感じていたのだがそれは誤解であったようだ。



「まあ、レオンフェルト王弟殿下に借りができたことも事実だが、


リアを勝手に自分の控え部屋に連れ込むなど…


全く、何を考えているのだ!


…あのロリコン殿下は!」


レオンフェルトとの出来事も、ベルナルドは把握しているようだ。流石、この国の宰相というべきなのだろうか。



「ロリコンとは聞き捨てなりませんな、

宰相閣下。」


ベルナルドが一人怒っているとそこに、当人であるレオンフェルト王弟が部屋に入ってきた。


「私は…


大人になった少女も大好きですよ。」


と、なぜかアルトリアの方をちらりと見てレオンフェルトは反論する。


「それはもっとたちが悪いっ!」


その答えはベルナルドの機嫌をさらに損ねることになったようだ。が、レオンフェルトは気に留める様子はなく、宰相をスルーして改めてアルトリアの方へ体を向けた。


レオンフェルトは、昨日よりはラフな感じの軍服を纏っていたがその美しさに隙はなく、アルトリアは自分がまだベッドに入ったままであることも忘れてその姿に見入ってしまう。


殿下の顔を拝見したらまず謝罪から、と先程心に決めていたはずなのにそんなレオンフェルトを見たアルトリアの頭の中は真っ白になってしまった。


朝から、この顔は心臓に悪い。



「御機嫌よう、アルトリア嬢。




足も含め、ご加減はいかがですか?」


見入っていたアルトリアは、レオンフェルトに開口を越されてしまった。


「おっ、

…おはようございます殿下。


お気遣いに感謝いたします。


殿下の適切な処置のおかげで、足の方は全く痛みもなく…問題ございません。


昨夜は、

色々と殿下にお見苦しい姿をお見せしてしまい…

なんとお詫び申し上げたら良いのか…」


「アルトリア嬢、本当に、お気になさらず。






むしろ、

私はリアのいろんな表情を見れて役得だった…

ああ…昨日の、あれは夢じゃなかったんだな…

うん。」


「殿下…?」



どうもレオンフェルトは時々感情をそのまま口にだし、自分の世界に入ってしまうようだ。




「レオンフェルト殿下っ!」


それを声を荒げて諌めたのは宰相ベルナルドである。


彼は、少しの間でもアルトリアがレオンフェルトを優先し、自分が蚊帳の外にされていたのがかなりお気にめさなかったようだ。


そのとばっちりとイライラは100%レオンフェルトに向けられている。





「確か、大事なお話しがあるのではありませんでしたかな?」


「お話し…?」


父の促しに、アルトリアは首をかしげる。


ベルナルドとレオンフェルトに深い交友があったことは知らなかったし、昨夜まで正式にあったこともなかった王弟殿下が自分に大事な話とは、一体どんなことなのだろうか。


ロレンツォとの婚約話に関することが、一番可能性としては考えられるが、その話をしようとしているにしてはレオンフェルトの表情は実に晴れやかだ。





結局答えの出なかったアルトリアは、レオンフェルトが口を開くのをベッドに入ったままではあったが背筋をピンと伸ばして待った。




「…首を傾げるリアはやっぱりたまらないなあ…」


「レオン、フェルト、殿下!」


すぐ脇道に逸れてしまうレオンフェルトをベルナルドがまたも叱責する。




「…し、失礼。

ゴホ…ゴホンっ!!んんっ!








アルトリア嬢。」


「はい。」


咳払いをし、レオンフェルトは先程まで浮かべていた柔らかい表情を硬くした。その変わり方と真面目な様子に、アルトリアの間にも緊張がはしる。







そして、

レオンフェルトはアルトリアに「大事」な、いや…






ーとてつもなく「大事で突拍子も無い」なことを告げた。














「私、グランニ・エル・レオンフェルトと結婚してくれないだろうか。」






ーと。









いきなり、リアたんもう朝、寝落ちかいっ!

ですみません!


リアパパ初登場です(*´ω`*)

頑張れ、レオンフェルト!


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