第二王子ロレンツォと薔薇の花
結局夜更新となってしまい…
よろしくお願いします。
「アルトリアが、倒れただと?!」
王宮の一室の煌びやかな部屋に男の声が響く。
思わず立ち上がったその男の顔色は悪く、声色には焦りが滲んでいた。
「えぇ、何でも毒を盛られたとか…お父様からの筋の情報ですので確かだとおもいますわ。
…あら、これは甘すぎるわね。」
答えた女はつらつらと言葉を並べて行く。
女の方は心配どころか、気にもならないらしい。今は王宮の侍女に買ってこさせた流行のケーキを食べるのに夢中なのだ。
「まさか…ダイス男爵が…。」
自分にとって不利益な結論に達した男はさらに顔を青くする。
こんな…こんなはずではなかった。
ただ俺は…
ーただ俺は、「リア」が欲しかっただけだ。
第二王子グランニ・エル・ロレンツォ。
彼は、五歳の時に同い年の婚約者を得た。彼女の名はペンドルトン・フィス・アルトリア。幼い頃は二人の間に差はなかったが、アルトリアは歳を重ねる毎に無自覚な頭角を表していった。だからむしろ、ロレンツォ自身は完璧な侯爵令嬢として成長していくアルトリアに憎しみの感情を抱いていた。そのばずだった。
それが、憎しみに似た恋情であったと気づいた時。
その時にはもうすでにアルトリアは、皆の「黒薔薇」となってしまっていた。
それも、ただの黒薔薇ではない。
「手折られぬ黒薔薇令嬢」
そう、誰よりも美しく一輪で凛と咲く黒薔薇ー
誰にも手折ることが許されない花。
ロレンツォは彼女の婚約者であり彼女を手折る権利が唯一ある人物であるはずだった。だが、長くアルトリアから目を背けて逃げた彼には出来なかった。
そして時はたち、
黒薔薇は違う人物に手折られることとなる。
ダイス男爵は、そんなロレンツォの心の闇をついた。自分が知恵を貸せば、まだアルトリアの心を取り戻せ薔薇を手中に収められると…実に巧みな話術でロレンツォの心を掴んだ。
今なら「王座」も「アルトリア」も手に入る。王座に興味はない。だが、アルトリアが王の妻になりたいと望むなら王座も奪おう。彼女は王妃になれる器だから。こんな、食べかすを零しながらケーキを貪る女とアルトリアはちがう。
「…おや、王子。
どうされました? 怖い顔をなさって。」
ロレンツォが思い巡らしていると、似合わない髭を蓄えた男が部屋に入ってきた。
王子の部屋に許しもなく入室したのはダイス男爵である。今までのロレンツォであればそれを咎めることはなかったが、今は彼に対して反吐がでた。
「いや…なんでもない。
それより、三日後の準備は大丈夫なんだろうな。」
ロレンツォは怒りを隠した表情を作り男爵にこたえる。
三日後、その日はアルトリアとレオンフェルトが舞踏会で正式に婚約を発表する日であった。
そして、その日…
「えぇ、万事順調に事は進んでおります。
フェルドールと敵対しているザナドゥの兵が明後日にはこちらに着くでしょう。」
「たしか、東の樹海道からくるのだったな。」
「そうでございます、殿下。」
ダイス男爵は大変満足そうな顔をして頷いてみせた。
「では、私も気を引き締めておこう。」
「それは、それは。大変結構でございます。
どこに聞き耳を立てているものがあるかわかりませぬからな。
どんな美しい花にでも、毒はあります。
殿下もお気をつけ下さいませ。」
「…ああ、そうしよう。」
登場人物は出揃い、今、物語の幕が上がるー
ざまあ展開を期待されていた方、申し訳ありません!明日or明後日に完結予定ですので、最後までお付き合いしていただけたら嬉しいです。
今日も、ありがとうございました!




