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黒薔薇令嬢は今宵手折られる  作者: とらじ。
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黒薔薇令嬢は婚約破棄を宣言される①

初連載です。






「ペンドルトン・フィス・アルトリア!」



「はい、殿下」






王家主催の舞踏会の最中、

突然名前を呼ばれても(叫ばれが正しいか…)アルトリアは声色も変えずにそれに答えた。






それは、アルトリアがこのグランニ王国の筆頭侯爵であるペンドルトン公爵家の第一令嬢であるから。

また、今殿下と呼ばれたグランニ王国第二王子ロレンツォとの婚約が五歳の誕生日に決まり、それから妃教育が行われていたからだろう。


もちろん、アルトリアがそれらの教育を1つ漏らさず身につけたのも、筆頭侯爵令嬢としての品格があるのも、彼女の本来もっていた才能だと言える。


普通の貴族令嬢には、5歳から経済学を学び、

10歳には高難易度のダンスステップをマスターし、16歳になるころには密かにその美しい黒髪と豊かな才能故「手折られぬ黒薔薇令嬢」と呼ばれることは不可能に近いであろう。






ロレンツォは、アルトリアがその品位を崩さずに返答を返したことが面白くなかったがニヤリと顔に笑みを浮かべこう告げた。



「 私、グランニ王国第二王子であるグランニ・エル・ロレンツォは、今日をこの場をもってペンドルトン・フィス・アルトリアとの婚約を破棄し、ここにいるダイス男爵令嬢マリアンヌを新しく婚約者とすることをここに宣言する!」


と。



これで、あの黒薔薇令嬢も隙を見せるだろとロレンツォはさらに深い笑みを浮かべた。


そして、そんな彼に腰を引き寄せられた新しい婚約というマリアンヌもまた勝ち誇った顔をアルトリアに向けた。




ーたしかに、アルトリアは一瞬動揺し、その紫に輝く瞳が揺れた。


だが、それはロレンツォからの突然の婚約破棄宣言にというよりは、それを聞いた周りの貴族の反応に対してだ。


今日の舞踏会は、三年に渡っての隣国視察を終え帰還した王弟殿下への祝いの席で王国の殆どの貴族が出席をしている。



そんな、大勢の貴族の前で婚約破棄…





アルトリアとロレンツォ、そして新たに現れた婚約者マリアンヌ。

その三人に好奇の目が集まるのは当たり前のことで、



明日には国中の貴族がこの様子を面白おかしく噂するのかと考えると、流石のアルトリアも頭を痛くした。




「…殿下。


無礼を承知で言わせていただきますが、この婚約は王家と侯爵家のもの、今一度お考え直し下さいませ。」





アルトリアは、一呼吸置きそれからしっかりとロレンツォの目をみて進言した。




第一王位継承権をもつ第一王子は三年前に隣国の王女と結婚をし、二人の間には来月一歳になる世継ぎも生まれている。

隣国との繋がりが得られている今、第二王子に求められているのは王家への国内貴族の後ろ盾だ。


その後ろ盾として、ペンドルトン筆頭侯爵家はまさにうってつけであると言えた。


現当主でありアルトリアの父であるベルナルドはこの国の宰相の地位にもあり、多くの貴族から敬われいる。

また、彼が治める領地エルダールには大鉱山が含まれる故、侯爵家の財産は王家の財に匹敵すると噂されていた。




だから、

そう簡単に破棄だの、新しく婚約だの第二王子の権限だけでできるはずはないのだ。




「嫌だわ、アルトリア様。


そこまでして王家に嫁ぎたいのかしら。」




また、ザワリ、と周りの傍観者の空気が揺れた。口を挟んだのは問題の発端とも言える男爵令嬢。


本来であれば、許しなくアルトリアを下の名前で呼ぶことさえできない地位にいる彼女は、ある意味アルトリアより肝が座っているようだ。




「これは、殿下と私、王家とペンドルトン侯爵家の問題です。男爵令嬢には口を挟まないでいただきたいですわ。」




この令嬢には、遠回しな表現は伝わらないだろうとアルトリアは思った。


マリアンヌの容姿は、周りから黒薔薇と歌われるアルトリアからみても美少女だと言えた。

輝くブロンドの髪に青い瞳、童顔の可愛らしい顔とフリルをふんだんに着けたピンクのドレスが似合っている。一方でアルトリアは、艶のある黒髪に紫色の瞳。ドレスも控えめに瞳と合わせて暗い紫色をしていた。



二人は性格も見た目も、全く真逆のタイプであった。



だから、二人の会話が噛み合うはずもなく…



「まあ!


ペンドルトン侯爵家の権力をふりかざそうというのね!


それに、その上からな言い方。

未来の王子妃としてふさわしくないですわね。」




キンキンと高い声が、ホールに響く。




「ロレンツォ様聞きまして? アルトリア様がマリアをいじめますわ〜。」


「マリア、安心して。

アルトリアからは僕が君を守るから」


「ロレンツォ様ぁ!」




その声に眉をひそめなかったのは、アルトリアを除く当事者二人だけだった。



まだ、大きな騒ぎにはなっていないが、祝いの席で陛下や王妃、また主役である王弟陛下まで巻き込んでしまってはペンドルトン侯爵家の名にも関わる。



アルトリアはこの場での説得を一度、

諦めることにした。




お読みくださり、ありがとうございました!

次話も、0時に投稿予定です。



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