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ロウとマオ 〜最強仙術使いと最弱JDの異世界放浪譚〜  作者: にしだ、やと。
第9話 世界渡りと異界、そして私のこれから
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私はこっちの世界のほうがずっと面白いと思うけど

「どうして、こんな場所が……?」


 洞窟を抜けた私の目に飛び込んできたもの。

 それはかつて私がよく目にしていた光景と瓜二つのものだった。


「こいつは随分と大きいな」

「話は聞いとったけんど、実際見てみるとほんま大層なもんやなぁ」


 一緒にいる二人もそれを見上げて驚きの様子を隠さないほどに、こっちの世界では見かけないサイズの建築物。

 正確すぎるほど真っ直ぐで四角く、多少の大きさの違いはあれど林立するそれらはどれもこれも似たようなものばかりで。

 所々に取り付けられた鮮やかな色彩の絵画が目を引き、違いのない一つ一つの建物に少しずつ個性を与えている。


 そう、この光景は本当によく知っている。

 ここはそう、私がかつて暮らしていた国の、とても有名な街だ。


 林立するビル群。景観を破壊するように取り付けられた看板広告。

 巨大な交差点に、光を失った信号。

 私達が立っているのは大きな駅前広場。

 この場所から人がいなくなった時、ここまで印象が変わるのかと、ここまで空虚で虚しい印象を受けるのかと思ってしまった。


 懐かしさはない。

 どうしてこんなものがここにあるんだろう。

 ただそれだけしか考えることができなかった。




「……マオ?」


 呆然としていた私の意識を戻してくれたのはロウ君だった。

 おっと、いけないいけない。

 この世界の謎を解く鍵はきっと私が握っているんだ。

 しっかりしなくちゃ。


「ごめんごめん、ちょっとこの光景に驚いちゃって」

「そうか。それで、これからどうするんだ?

 また適当に調べて回るか?」

「うーん、ちょっと気になることがあるから私が先導していいかな」

「わかった。魔物がいたら教える」


 現段階で確信を持って言えるのは、この世界は私の知っている日本じゃないし、紛れもなくこちらの世界から繋がっている異界の中だって言うこと。

 そして、私達以外には誰も人がいないこと。

 信号機が光を失っていて、ビルに取り付けられた巨大モニターも真っ黒であることから電気は通っていないこと。

 これくらいかな。


 そして私が気になっていることは、この光景に見覚えがあるということ。

 確かに、この街は日本の中でも特に有名だ。

 例えば適当な風景を写真で切り取って誰かに見せたとして、実際に行ったことがなくてもなんとなく、ああ、ここはあの街だな、っていうことは分かると思う。

 このビルはあんまり見たこと無いけど、こっちのビルは有名だよね、などといった具合に一部だけは見たことがあるっていうのが普通だからだ。


 けど、今私が見ている光景は、そうじゃない。

 私から見れば、全て私が思い出せる通りのものばかりで、つまり見覚えがあるどころか、見覚えが()()()()()のだ。

 別に私はこの街に特別詳しいというわけでもないのに、どうしてこの街の姿がはっきりとこうであるとわかってしまうんだろう?


 それを確かめるためには、遠くから見るだけじゃなく、近くによって、可能ならば中に入ってそこがどうなっているのか知る必要がある。


「まずはこっちからかな」


 とりあえずは今私達が立っている駅前広場を駅前広場足らしめている建物、駅に入ってみることにする。

 駅内の構造は実際良く覚えてるし、どこに行っても似たようなものだからもしも日本のものと違うのならすぐに分かると思ったからだ。


 ◆ ◆ ◆


「うーん、ここまで再現できてるのか……」


 20分ほど歩き回った結果、駅はかなり本物に近いということだけがわかった。

 機械は当然どれも動いていなかったし、分解なんてできないからその中身がどうなってるのかまでは分からないけど、外見は本物にしかみえなかった。

 駅内施設の配置も特におかしなところはなかったし、びっくりしたのはお手洗いまで忠実に再現されていたことだ。

 電気は通ってないけど水道はちゃんと繋がってるみたいで、蛇口をひねれば水が出たし、水を流すことができた。

 あれでウォシュレットが使えれば完璧だったと思う……。


「次はあっちの建物に行ってみるよ」


 駅の次は、実際に行ったことのあるビルを見て回ることにした。

 よく知っているもの、外からしかみたことないもの、一つ一つ条件の違うものを見ていき、共通点や差異を見ていく。


 不思議なことに魔物は決してでてくる様子がなくて、ロウ君にも何度か聞いたし、念の為ライラにも確認したけど、今のところ魔物らしき反応は周囲にはまったくないと言っていた。

 これも何かの手がかりになるかも知れない。


「商品が何も並んでないとこんなに変な感じがするんだなあ」

「ほう、この区画はもとは商店であったというのだな?」


 何気なく、店舗になっていたはずのエリアを見て回っていたときにそう呟いたところ、なにか興味を引くことでもあったのだろうか。

 ライラが反応して話しかけてきた。

 ちなみにロウ君はもう飽きてる。


「あ、うん。

 この辺は若い女の子向けの服を売っていた店だね。

 いつもはこの棚いっぱいに置いてあるし、こっちにも山程ぶら下げてあったからなんだか違和感」

「この狭い区画にか? それも衣類を大量に? 若いと限定するからにはもしやマオの世界では年代別に細かく衣服に指定があるのだろうか?」

「ああ、違う違う。

 若い女の子が好む見た目の服と、大人の女性が好む見た目の服って結構違ったりするから、その要求に合わせてたくさんの種類の服が作られてたんだよ。

 年代だけじゃなく人によって趣味はぜんぜん違うし、店によって見た目の方向性はだいぶ違うかなあ。

 あっちのお店なんて色使いがすごい服いっぱいおいてあったんだよ」

「なるほどのう。

 推察するにマオの世界は資源がずいぶん豊富なのであろうな」

「どうだろう?

 私が思うに、資源の量自体はそんなに差がないんじゃないかな。

 それよりも魔物がいないとか、魔法がないとかのほうが影響度合いは高そう」

「へえ、魔物がいないんだ。

 でも魔法が無いのはちょっと不便そうかな?」

「そうでもないよ。

 魔法はたしかに無いけど、魔法と言ってもおかしくない水準の技術がたくさんあるから」

「あ、この前の携帯型連絡器なんかがそうなんだね。

 納得納得。ますます行きたくなってきたなあ」

「娯楽は多いからライラみたいな人にはピッタリの世界かもね。

 私はこっちの世界のほうがずっと面白いと思うけど」


 こうしてライラと話をしているのは、なんだかとても楽しい。

 なんていうか、変に気を使う必要がないからだ。

 私が日本人として知り得た知識とかを普通に使っても、平然とついてきてくれるから会話がごく自然に成立する。

 そんなの有り得ないなんていうふうに否定は絶対してこないし、異世界の存在を信じてその違いなんかにも興味を示しているから、話もどんどん広がっていく。


 もちろんロウ君と話していても特に気を使う必要はないから気楽ではあるけど、知識の差を感じるのはやっぱりあって、私が普通に何も考えずおしゃべりを楽しむっていうならライラの方が合ってそうかな。

 まあ彼女は気が向いたときしか話に乗ってこないからなかなか難しいんだけどね。





 さて、ビルもめぼしい所は大体回り終わった。

 中には全く内装が作られていなくて、入った瞬間それ以上進めないような建物もいくつかあった。

 それでも私がよく知っているような建物は大体中に入れたし、内装もそれなりに作られていたから時間をかける価値は合ったと思う。

 運良く色々とお宝……というか地球にあったものを再現したと思しきものをいくつか手に入れることもできたし、考察するための情報はひとまずあらかた手に入れることができたかな。


 正直なところ、探索途中である仮説に思い当たったときには我ながら突拍子もないと思ったし、もっと別の答えがあるはずだと思って考え続けていたんだけど、調べれば調べるほどやっぱりそうなのかもって思わざるを得ない事実ばっかり浮かんでくるんだ。


 あとは帰って、これまでのグラードさんの調査結果と照らし合わせたり、いくつかの確認事項を知ってそうな人に聞いてまわれば多分答えは出ると思う。


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