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ロウとマオ 〜最強仙術使いと最弱JDの異世界放浪譚〜  作者: にしだ、やと。
第9話 世界渡りと異界、そして私のこれから
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それじゃ、ロウ君よろしくねー

「これが異界の入り口かあ」

「な? 面白いだろ?」


 事前に話を聞いていたとおり、確かにその入口はとても奇妙だった。

 イメージ的には某未来の猫型ロボットがよく使う何処にでもいける扉の、枠だけ設置したような感じだろうか。

 ハリボテで洞窟の入り口だけ作られていて、穴の向こうは何も見えず、裏に回っても何もない。

 昨日見たライラの転移術にもにてるけど、あれはきちんと繋がっている向こう側が見えるから、やってることは全然違っていると思う。

 文字通りこの先は異なる世界で、情報が不連続になっているってことなのかなあ。


「うん、これは一見の価値があったね。

 そんなことより気になることが一つあるんだよね」

「うん?」

「一体なんじゃ?」


 いや、「なんじゃ」じゃないでしょ、「なんじゃ」じゃ……。


「なんでライラもきてるのっ!?!?」

「そういやいるな」

「うちが来たらだめかえ?」

「いやだめじゃないんだけど……、こう、ほらね?

 流れ的にはやっぱりここは私とロウ君が初めて二人で冒険をするところだからね?

 師匠ではあるけど仲間位置じゃないライラが当たり前のようについてくるのはどうかと思うんだ……」

「マオはよう分からんことを言うのう。

 わしは面白そうなことがあるのなら喜んでついていくぞ」


 あ、うん、そうですね。

 ライラに私の物語論を言ったところで無意味だった。

 気にするのはやめてさっさと進んじゃおう。




 そして先の見えない不思議な黒い穴に足を踏み出すと、どこかで経験したことのあるような感覚が全身を駆け巡り、気づけば異なる世界にやってきていた。

 視界に入るのは薄暗い通路。

 光源は無いはずなのに、完全な暗闇ではなく、ぼんやりと周りが見える程度の明るさの空間。

 空気がひんやりと冷たく、不気味な雰囲気はこの世界が私達のことを歓迎していないということをよく表していた。


「ここが異界……? 確かに全然違う場所にやってきた感じはするけど」

「この洞窟はそんなに広くなさそうだな。

 魔物もあまりいないみたいだし、適当に進んでみるか」


 お?

 なんだかロウ君がやけに張り切ってる気がする。

 これはもしや異界を既に何度も探索している冒険者として先輩風を吹かせたい年頃なのかな?

 ここはちょっとおだててみようかな。


「ロウ君洞窟の広さまでわかるの?

 さすが何度も異界に潜ってるだけのことはあるね」

「ま、まあな。

 やっぱりそれなりに経験積んでくると分かることも増えてくるもんだぜ」


 あ、ほんとに調子に乗ってる。

 こういうロウ君はちょっと新鮮で面白いかも。


 そんな感じで緊張感のかけらもないまま、時々雑談したりなんかしつつどんどん進んでいくと、魔物が現れた。

 そいつの姿を一言で表現するならファンタジーによく出てくるコボルドって感じかな。

 犬っぽい顔で二足歩行してて、手に石でできた道具を持ってる。あれはピッケルなのかなあ。

 姿はそんな感じだけど、体長は2Mほどとだいぶ大きい。

 武器も持ってることだし魔物にしては厄介そうな気もしたけど……なんというか今回に関してはあの魔物が可愛そうだなって思った。


 仙術使いで一人で国内二位を打ち破るほどの強さを誇るロウ君。

 そのロウ君が手も足も出ず、さらには組合の総長ですら手出しできない、実力不明の化物、ライラ。

 そしてこの二人に挟まれて少し惨めな思いをしてるけど、精霊術で並大抵の攻撃は防ぐことができる私。


 この三人がいて、苦戦するような場面が想像できない。

 案の定デカいコボルドは秒殺され、解体されることになった。


「あ、それが噂のトレイラーってやつだね!

 ……へえ、そうやって使うんだ」


 魔物を倒した後、ロウ君が慣れた手付きでトレイラーを取り出し、転送する準備をし始めたのでじっと観察してみた。

 小さな筐体からかなりの長さを持つ紐が出てきて、死骸を囲っていく。

 そしてその円が閉じると……震えるような音がした後、そこには何も残っていなった。


 これは確かに便利だ。

 あれだけの大きさのものが、一瞬で送り出せてしまう。

 持ち運ばなきゃいけないものもほんの僅かだし、使うのもとっても簡単。

 その上魔力供給さえすれば何度だって使えるときた。

 ぜひ一家に一台ほしいところだな。


 それにしても、ここを歩いていると私が本当にファンタジー小説の主人公にでもなった気分になってくるなあ。

 ほんのり暗くて静かな通路。

 その中を探索し歩いていれば魔物に出くわし、それらを容赦なく倒していく私(実際に倒してるのはロウ君だけど)。

 進めば進むほどに魔物は強くなっていき、同時に何かが私達を待っているような予感も高まり――なんてワクワクする冒険だろう!!


 これが、これこそが私がこの国に求めてきたものだったんだ!

 実力不足とかで周囲にいじめられるのでなく、才能の無さにいじけて屋敷に引きこもったりするのでもなく、相棒が一人で勝手にダンジョンアタックを繰り返す展開になるのでなく、面倒な修行パートが突然開始したりするのでなく!

 私はただ単純にこうやって異界と言う名のダンジョンらしきものに挑戦し、この世ならざるものを見つけたり……危険なトラップに冷や冷やしたり……、凶暴な魔物と命のやり取りをしたり……、お宝を見つけて一発当ててしまったり……、そういう夢のある生活をしたかったんだ!


 味方が強すぎてちょっと今は緊張感が無い気がしないでもないけど、とにかく私の夢はかなったっ!!

 あとは次の階層を抜けられそうな道を発見するけど強敵がそこを塞いでいて、なーんてお約束展開なんかもあったりしたら本当に面白いんだけどなあ。


 そんな事を考えながら、魔物の処理を全てロウ君一人に押し付け、ライラと二人で遠足気分で歩いていると、突然大きな魔力の流れを感じ取った。


 なんだろ? これ。

 こんな狭い場所で使う魔術にしては妙にでかすぎる反応に思えるけど。

 ライラは気に留めてなさそうだから当てにしないとして、ロウ君はどうかな?

 彼はこういうの結構敏感だからすぐにでも危険かどうか判断してくれるとは思う。


「マオ、一応身を守る準備はしておいてくれよな。

 多分大丈夫だとは思うが、ここは何が起こるかわからないんだろ?」

「う、うん。

 あのおっきな魔力は何なの?」

「ああ、こいつは――階層主だろうな」


 階層主。

 複数の階層からなる異界で時折現れる存在。

 次の階層に移動できる場所のすぐ近くに現れ、冒険者たちの移動を邪魔するとかなんとか。

 他の魔物に比べて強大で強靭なので、階層主が現れる事がわかっている異界はそれ以外に比べて難易度が高く設定されている。

 普通は適正等級の冒険者が十人単位で集まり協力して倒すほどの強さなので、たった一人で挑むなんてのは論外だ。


 私達の接近に気がついたのか、あるいは自分がたった今生まれ落ちたことに狂喜しているのか、階層主は咆哮し洞窟を震わせた。

 なんということでしょう。

 あまりにもお約束展開すぎて笑いが出てきそうだった。


 ロウ君が前に躍り出て、階層主と対峙する。

 現れたボスキャラの姿は……、一言で表現するならコボルトキングってところかな?

 さっきまでチラチラでて来てたコボルトをでっかくして、武装もやや豪華でつくりがしっかりしたものに差し替えたような感じ。

 粗悪なピッケルなんかじゃなく、きちんと金属でできた剣を持っていて、急所を守るようにしっかりとした鎧を身に着けている。

 目つきもとっても凶暴そうで、まさにボスって風格だね。


「それじゃ、ロウ君よろしくねー」

「ああ、任された」


 とはいえ、それでも私がこうして落ち着いていられるのは彼の強さをすっかり信じ切っているおかげだろう。

 確かにあのコボルトキングはすごい強そうだし、あんな分厚い剣で斬りかかられたら掠っただけでも全身がぼろぼろになりそうだなとは思う。

 巨体の割に動きも素早そうだし、普通に考えたら苦戦を強いられるだろう。


 けどやっぱり、相手が悪すぎると思うんだ。


 ()()()には重すぎるロウ君の一撃でそいつは何の見せ場もないまま命を散らし、トレイラーによって手早くドナドナされていってしまった。




 そうして何事もなく洞窟を抜け、次の階層に移動した私達を待っていたのは、忘れようと思っても忘れられない、()()()()()()()()()光景だった。

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